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【 2017年12月6日 】
もともと小説はあまり読まない。よっぽど世間が騒ぎ、あるいは自分の興味をそそる作品があった時か、現実世界の問題を追いかけることに疲れを感じ、それまで手にしていた本が進まない時くらいにしか、文学小説の本は手に取らない。ましてや、新聞の連載小説を毎日律義に眼を通すなどと言う器用な芸当は出来ない。だから、妻が毎朝決まって新聞の連載小説のページを広げて読んでいる姿を見てはただ感心するだけだった。
自分が読んでいる小説のことなどはめったに話をしない妻が、ある日思いついたように「これいい」というではないか。『おもかげ』の連載が終了に近づいていた頃だった。
「挿絵がすごくいいの。」そう言いながら、途中から切り抜きをしている部分を見せる。最初の数十回が抜けていて、以後の200回分くらいをとってある。
連載が終了して、「もう一度読みたい」というが最初の方がない。数百枚にもなる分厚く重ねた切り抜きをくくりながら「最後の方なんか涙が出で泣きながら読んだ」という。後日の『読者の投書欄』で「良かった」という記事を2、3見かけた。しかし、「ストーリが良い」「文章が上手だ」「感動した、涙が出た」という話の内容についての賛辞はあったが、「挿し絵が良かった」という投書は目にしなかったから、今回すっかり【井筒啓之】ファンになってしまった妻は「【絵もすごく良かった】と投書しようか!」と言っていたほどだった。
「いつ単行本出るんだろう」「早く出ればいいのに」と夏ごろからずっといい続けていた。
1ヶ月ほど前、ネットで予約注文していた本が発売日である12月1日にようやく届く。《そんなにまで言うんなら》と、本を取り上げ、私が読む。
○ ○ ○
文章もうまく滞りがなく話に吸い込まれていく。それと何といっても、主人公の生きてきた年代が(著者自身もそうだ)自分と多く重なる分、原体験に共通するところがあって、一つひとつが心に響くし、懐かしい。銀座線をはじめ東京の地下鉄にもよく乗った。
(その辺のことは、また改めて書くとしよう。そういっていつも、続きを書かないのだが)
読み終えた5日の晩は心地よい感動に浸り、充分しあわせな気分だった。(『サンドイッチの年』それとも『泥の河』あるいは『ヤコブへの手紙』を見たあとの気持ち・・・・)
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届いた本の中身をあらためて見てみたら、残念ながらあの挿絵がない。絵のかすかな《おもかげ》がブルーを基調としたカラー画像で、本のカバーにわずかにあるだけだった。
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連載小説『おもかげ』を紹介した毎日新聞記事
【その1】
【その2】