起床
毎朝、私は携帯電話のアラーム音によって目が覚めるが、ときには、それより前に目が覚めるときがある。そんなときは、急ぐことはない。ラジオをオンにして音楽や女性DJの声を聴いている。あるいは読みかけの時代小説をひろげる。うつ伏せが永年の読書スタイルなのだ。
大抵は誰に起こされることもなく、自然に目が覚める。最近は悲しむべきことに六時間以上熟睡ができない。考えてみれば、一人暮らしが長かったために、誰かに朝起こしてもらうことはなかった。
一人暮らしをする前は、私を起こすのは母であった。中学生のころは、いくら眠っても眠り足りないくらいに起きられなかった。母は障子越しに、時間だよというと台所に戻る。次には、とっくんがきたわよと声をかける。とっくんは朝が早い。それでも寝床でごろごろしている。時間ぎりぎりまで寝ている。結局は朝食をぬいて力なく家を出て行くのだが、そんな日がつづくと、いつの間にかとっくんは誘ってくれなくなってしまった。
それが、いまでは、掌にのる携帯電話からのアラーム音である。これが21世紀の目覚めだ。夢見る少年の未来というわけだ。
ラジオから気象情報がながれる。
やっと起き出す。
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