やまちゃん奮闘記

1970年代から海外に出かけ、滞在した国が合計26か国、21年の海外生活が終わりました。振り返りつつ、日々の話題も、

メンツかけ全面対決 泥沼化の米中貿易戦争

2019-05-15 | 政治・経済

今回も前回に続き、米中貿易戦争の話題です。

米中貿易戦争は、両国で合意がまとまり、まもなく決着するとみられていた。ところがアメリカが中国製品への関税引き上げを決定したことで、状況は一変した。

トランプ大統領は5日、中国との通商協議の進捗が遅いことをに不満を示し、2000億ドル相当の中国製品に対する関税を10日から現在の10%から25%に引き上げると表明。さらに、追加関税の対象になっていない3250億ドル相当の中国製品に「近く」25%の関税を発動する考えを示した。 スマートフォンやパソコン、おもちゃ、衣類など生活用品も含まれ、中国からの輸入品ほぼ全てが対象となる。アメリカ政府は今後、産業界などからの意見も聞いた上で、発動するかどうかを判断する。

関税率引き上げの理由については、中国が貿易協議での「約束を破った」からだとしている。

この報復として「必要な対抗措置」を講じる方針だとしていた中国は13日、6月1日から600億ドル(約6兆6000億円)相当のアメリカからの輸入品への関税率を最大25%に引き上げると発表した。

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米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相による貿易協議自体は、米ワシントンで9日から2日間の日程で予定通り行なわれたものの、米中間の溝を埋めることができずに終了した。 

中国の交渉トップ劉鶴副首相は協議終了後、「重大な原則の問題において中国側は決して譲歩しない」と明言した。
また、交渉の「核心」として
第1に、追加関税を全て撤廃することだ。関税は双方間の貿易紛争の出発点であり、合意に達しようとするのなら、追加関税を全て撤廃しなければならない。

第2に、貿易購入数量は実際に合致する必要がある。双方はすでにアルゼンチンで貿易購入数量について共通認識を形成した。恣意的に変えるべきではない。

第3に文書の均衡性を改善する。どの国にも尊厳がある。合意文書は均衡あるものでなければならず、依然として議論の必要な鍵となる問題がいくつかある
ここは絶対譲れないという中国のデッドラインを示したといえる。→RECORD CHINE

中国が態度を硬化させた背景には、特に、国有企業への補助金の見直しなど、中国の国家制度の根幹に触れる部分で、「習近平政権はアメリカに譲歩しすぎだ」という不満が噴出し、ここで譲れば、中国共産党の一党支配体制そのものが揺さぶられかねない。その危機感が習主席にまでおよび、中国側が態度を硬化したと考えられる。

アメリカ的「資本主義経済」と中国の「特色ある社会主義経済」が、交渉最終盤で真っ向からぶつかり合い激しい摩擦が生じている状態と言えよう。

特に対立が激しいのが、「1:国営企業の補助金など制度的な問題、2:外国企業に対する技術移転の強要、3:合意事項の法的裏付け措置」の3つだという。中国側からすれば、内政干渉になりかねない問題も含まれる。
国営企業改革は中国にとっても避けて通れない問題だが、政治的なリスクが伴う。

また、アメリカが求める法改正についても、中国とアメリカでは手順が異なる。
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代) は年に一度しか開催されず、休会中は全人代常務委員会が、通知、決定、意見などの形で法律を補充する。アメリカの法制度とはかけ離れている点も交渉を複雑化させる要因となっている。

米中両首脳は共に6月に大阪で開催されるAPECに参加する。そこで米中首脳会談が開催され、何らかの合意に持ち込めるのか。或いは決裂による世界経済の混乱という最悪のシナリオが待ち受けているのか。
大国のメンツをかけた全面戦争の行方に、世界の目が注がれている。


米国の昨年の対中関税では、中国の輸出業者が価格をほとんど割り引かなかったため、米国の企業と家計が全面的に負担を負う結果になった。今回も同様と危惧されている。 激化懸念から、ここ1週間に株式市場は大きく売り込まれた。MSCI全世界株指数はこの日、1.9%安と、5カ月超ぶりの大幅な下落率を記録。中国人民元は12月以来の安値を付け、原油先物も値を下げた。→日経平均株価

株式や債券などで運用している年金には打撃が大きい。→年金資産7年ぶり減日本経済新聞


米中双方は交渉の「継続」を表明しているが、米中貿易戦争は打開の糸口が見えないまま過熱し、長期化の様相を呈していると言えよう。


 参考→米中決裂の舞台裏…アメリカの無茶ぶりを受けた中国の本音が分かった現代ビジネス)

  →経済論理では説明できない「米中新冷戦」 BLOGOS)

  →トランプ氏、中国主席と6月会談へ 貿易摩擦激化で世界株安 (REUITERS)

     →日本企業にも影響 生産の切り替え対応相次ぐNHK)


 
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