今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

啓蟄(けいちつ)」パートⅡ

2009-03-05 | 行事
今日・3月5日は「啓蟄(けいちつ)」
啓蟄は、古来、中国で行なわれていた季節区分二十四節気(にじゅうしせっき)の1つで、3月6日ころにあたる。
二十四節気は、古代中国の太陰暦(月の運行による暦法)ではの日付けと実際の季節との間にズレが生じ、農耕を営む上で非常に不便であったことから、そのズレを是正するために考え出されたのが気候の推移を示す24の基準点「二十四節気」である。太陽の周りを地球が一周する時間は1年。その1年の太陽の黄道上の動きを、節分を基準にして、視黄経の15度ごとに24等分して決められている。1ヶ月の前半を「節」、後半を「中」と言う。明治5年(1872年)まで使用された太陰太陽暦の1つである。1年を黄道上で360度に区切った15度ずつを「一気」と言い、これが24あり(24節気)、さらに、それを約5日ずつの3等分したものを「一候」といい、全部で72あることから、これを「七十二候」と言っている。七十二候は、古代中国で考案された季節を表す方式の1つあり、現在、使われている「気候」という言葉もここからきている。
「啓蟄」は、立春から数えて3番目で、2番目の雨水後15日目の日で、2009年の場合は3月5日。及びこの日から春分(2009年3月20日)までの期間をいう。
「啓蟄」について、『暦便覧』(太玄斎の書いた暦の解説書。天明7年=1787年に出版)には、
「陽気地中にうごき、ちぢまる虫、穴をひらき出れば也」と記されている。
又、明治7年(1874年)の、略本暦に掲載された七十二候では、啓蟄の初候、次候、末候の3候について、以下のように記されている。(※【】内は参考:中国の宣明暦によるもの)
蟄虫:初候(3月5日~9日):蟄虫啓戸(ちっちゅう こを ひら)【桃始華・・ 桃の花が咲き始める】
啓蟄・次候(3月10日~14日):桃始笑(もも はじめてわらう)【倉庚鳴・・ 山里で鶯が鳴き始める】
啓蟄・末候(3月15日~19日):菜虫化蝶(はむし ちょうとかす)【鷹化為鳩・・ 鷹が郭公に姿を変える】
初候の「蟄虫啓戸」は、中国の周から漢にかけて儒学者がまとめた礼に関する書物を、戴聖が編纂した『礼記』(らいき)49編の中の6・月令(がつりょう・げつれい。1年12月の年中行事と天文や暦について論じたもの)に記されている七十二候の啓蟄に関する部分「蟄虫(ちっちゅう)咸(みな)動きて、戸を啓(ひら)きて、始めて出づ」の引用であろう。
ただ、漢字の「虫」字は「虺」の本字として毒蛇を意味し、マムシあるいはヘビの形を象ったもの(象形文字)。
「虫」の字音はキ(クヰ)であり、くねくねまがる意と関係があるそうだ。
日本の常用漢字及び中国の簡化字の「虫」は「」(音はチウ)字の略字で、「蟲」はもともと獣・鳥・魚介類以外の小動物を指す漢字であったが、かなり早い時期(紀元前と言われる)から「蟲」の略字として「虫」が使われ、「虫」の本来の意味は失われてしまった。しかし、漢字の虫偏(例字ここ参照)の「虫」は「蟲」の意味であり、小動物一般の意味である。
日本でも、江戸時代には、ヘビも「長虫」と呼ばれていたそうだ。泉 鏡花『 蛇くい』(以下参考に記載の青空文庫作家別作品リスト:No.50泉 鏡花参照)にも「最も饗膳《きやうぜん》なりとて珍重するは、長虫の茹初《ゆでたて》なり」と蛇のことを「長虫」と言っている。又、江戸時代を代表する俳諧師の1人小林一茶の句「大蛇や恐れながらと穴を出る」に見られるように、江戸時代の頃には、穴から出てくるのはどうも蛇が多かったようだ。(以下参考に記載の「一茶発句全集」の春の部/動物を詠んだ句の蛇穴を出づ参照)
「啓蟄」は、俳句で春の季語となっているが、実際に「啓蟄」の語が、俳句の季語としてさかんに取り上げられるのは、近代になってからで、高浜虚子(明治7年【1874年】~昭和34年【1959年】)以降だそうである(以下参考に記載の「季節の言葉「啓蟄」-日本国語大辞典第二版オフィシャルサイト:日国.NET」参照)。
「啓蟄の蟻が早引く地虫かな 」(高浜虚子)
国語辞書にもあるとおり、「啓蟄」は、まさに、文字通り地中で冬ごもりしていた虫(蟻、蚯蚓(ミミズ)などの地虫や蛇、蜥蜴(トカゲ)、蛙の類)が春の到来を感じ、草木が芽吹く と同時に地上へ這い出てくる春の胎動を表わしており、漢字の「(うごめく)」という字が、まさしくこの様をよく伝えているとは、言うものの、新暦での3月の今頃は、陽気とは裏腹にまだまだ肌寒い。
日本では、太政官布告第337号(明治5年11月9日)によりそれまでの太陰太陽暦の暦法である和暦天保暦)に変わり、現在世界各国で用いられている新暦つまり「太陽暦」(グレゴリオ暦)が採用されることとなった。単に太陰暦・陰暦といった場合、太陰太陽暦である中国暦和暦などを意味することが多い。これらが廃止された中国や日本では、旧暦とほぼ同義である。
2009年の今日3月5日は、旧暦に直すと2月9日である。旧暦の3月5日は、新暦・2009年3月31日になる(。以下参考に記載の「2009年・新暦・旧暦・九星カレンダー」参照)。
実際に虫が活動を始めるのは、1日の平均気温が10度以上になってからだとも言われており、この頃なら、もう、桜も咲きだす頃だから、大地も暖まって、地中にいるどんな虫だって這い出してくるだろう。
現在でも、新暦3月の別名として弥生(やよい)が用いられているが、本来は、『広辞苑』にあるように、陰暦3月(旧暦3月)の異称であり、「弥(いや)生(おい)の月」の「イヤオヒ」の転である。
これは古今和歌集』巻十三(恋歌三)にある、
「弥生の朔日(ついたち)より、忍びに人に物ら(を)言ひて、のちに雨のそぼ降りけるによみて遣(つか)はしける。」・・・の「弥生」から来ている。(歌は以下参考に記載の「古今集秀歌選」参照。)
余談だが、この後、在原業平朝臣が以下の歌を呼んでいる。
「起きもせず寝もせで夜を明かしては春の物とて眺め暮らしつ」・・・と(歌の解釈等は、以下参考に記載の「伊勢物語1…第一段~第六段」を参照)。
それでは、「弥生」にはどのような意味があるのか?というと、国語辞書には、“草木がますます生い茂ること。”として、 「あづさ弓末野の草のいやおい(弥生)に春さへ深くなりぞしにける」〈新撰六帖・一 衣笠家良。以下参考に記載の「衣笠家良 千人万首―衣笠家良」参照 〉の歌が引用されている。
又、何故、3月を「弥生」の月と言うことになったのか・・・?・・・の疑問については、東京都文京区にある地名「弥生」に由来しているという。この地名は、明治時代に弥生土器が発掘された地であり、土器と弥生時代という名称もこの地に由来すものだそうである。何でも、江戸時代に水戸藩の中屋敷と播磨小笠原藩の下屋敷があったのを、明治新政府が没収し、町名を向ヶ丘弥生町としたそうで、名前の由来は上野の忍ヶ岡(上野恩賜公園 - Wikipedia参照)に対する向ヶ丘の一部であることと、水戸藩中屋敷に建てられていた歌碑にある徳川斉昭の和歌“名にしおふ春に向ふが岡なれば世にたぐひなきはなの影かな”の前段詞書に「「ことし文政十余りーとせいふ年のやよいの十日さきみだるさくらがもとにかくはかきつくこそ」と弥生(3 1月)に詠んだとあることにちなんでいるそうだ。
※もう何年もこんなブログを書いていると、前に書いたことを忘れてしまうことがある。このブログを書いた後、前にも書いたことに気付き、今日のものは、中止しようかと思ったが、弥生のことなど前とは変わった視点でも書いているので、パートⅡとして、残しておくことにした。前のものは、興味があれば少し重複しているが以下を見てください。
2005-03-05「啓蟄」http://blog.goo.ne.jp/yousan02/e/9288544038bffdb57d8aa494300fee4a
(画像は、蛇=虫。フリー百科事典Wikipediaより)
参考:
二十四節気 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%9B%9B%E7%AF%80%E6%B0%97
二十四節気:啓蟄
http://www.jon.gr.jp/qq/climate/24seki/05ketitu.html
※こよみのページ・二十四節気とは
http://koyomi.vis.ne.jp/directjp.cgi?http://koyomi.vis.ne.jp/24sekki.htm
礼記– Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A4%BC%E8%A8%98
跡見群芳譜(文藝譜 「月令」)
http://www2.mmc.atomi.ac.jp/web01/Flower%20Information%20by%20Vps/Flower%20Albumn/literary%20works/China_classic/raiki_gatsuryo.htm
小林一茶 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E4%B8%80%E8%8C%B6
一 茶 発 句 全 集
http://www.janis.or.jp/users/kyodoshi/issaku.htm
高浜虚子 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%B5%9C%E8%99%9A%E5%AD%90
俳句歳時記季語
http://www.geocities.jp/tokihikok/masaji/haiku/kigo/
季節の言葉「啓蟄」-日本国語大辞典第二版オフィシャルサイト:日国.NET
http://www.nikkoku.net/ezine/kotoba/ktb044.html
虫-Wiktionary
http://ja.wiktionary.org/wiki/%E8%99%AB
虫-- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%99%AB
※青空文庫作家別作品リスト:No.50泉 鏡花
http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person50.html
2009年・新暦・旧暦・九星カレンダー
http://9seicalendar.seesaa.net/category/6030115-1.html
古今和歌集 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E4%BB%8A%E5%92%8C%E6%AD%8C%E9%9B%86
古今集秀歌選
http://www.asahi-net.or.jp/~SG2H-ymst/yamatouta/hatidai/kokin_s.html
伊勢物語1…第一段~第六段
http://hw001.gate01.com/m-i/isemonogatari1.html
衣笠家良 千人万首―衣笠家良
http://www.asahi-net.or.jp/~SG2H-YMST/yamatouta/sennin/ieyosi.html
弥生 (文京区)-Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A5%E7%94%9F_(%E6%96%87%E4%BA%AC%E5%8C%BA)
弥生式土器発掘ゆかりの地
http://minoru32.web.fc2.com/ikoi/itimai/0707yayoi/yayoi.html