宇野淳風 書
西郷南州詩
全紙2枚ツギ10曲
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2018年の第58回現日書展での、最高賞「南不乗賞」受賞作品。
宇野淳風氏は、栄光学園40期卒業生(1992年卒)です。
直接の教え子ではありませんが、遠い後輩でもあり
また現日会では、大先輩です。
心より、受賞をお祝いしたいと思います。
全紙2枚ツギ10曲というのは
70×136cmの全紙を縦に2枚継いだ紙を、横に10枚並べたということで
だいたい、縦2.7メートル、横7メートルということで、巨大です。
これだけのものを書くには、想像を絶する苦労があるのです。
筆の大きさ、墨の量(しかも、擦った墨です)、それにこれを書く部屋。
それらを想像してみれば、どれだけ大変か分かるはず。
こちらが、展示の様子です。
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【本文】
一貫唯々諾従来鉄石肝貧
居生傑士勲業顕多難
耐雪梅花麗経霜楓葉丹
如能識天意豈敢自謀安
【訓読】
一貫す、唯唯(いい)の諾(だく)
従来鉄石(てっせき)の肝
貧居(ひんきょ)傑士(けっし)を生じ
勲業(くんぎょう)多難に顕(あらは)る
雪に耐へて梅花(ばいか)麗しく
霜を経て楓葉(ふうよう)丹(あか)し
如(も)し能(よ)く天意を識(士)らば
豈(あ)に敢(あ)へて自(みずか)ら安きを謀(はか)らんや
【口語訳】
ひとたび「はい」と答えて承諾したからには、最後までやり通すべきであり
それができるには、もともと鉄石のような堅い意志がなければならない。
貧乏暮らしは、すぐれた人物を生み出し
素晴らしい業績は、あらゆる艱難を乗り越えてこそうち立てられるのだ。
梅の花は、冷たい雪に耐えてこそはじめて美しく咲き匂い、
楓の葉は、厳しい霜をしのいでこそはじめて赤く色づくではないか。
君が、もしこの天の心に気づくことができたら
どうして自ら安易な生き方をできようか。(できないはずだ。)