きんちゃんの観劇記(ネタバレだよ)

思いつくまま、適当に。

「オネーギン」斎藤&木村/東京バレエ団

2010年05月15日 | バレエ・ダンス
ユカリューシャは渾身の踊り。
昨日の吉岡さんも素晴らしかったのですが
かつて踊ろうとしても踊れなかったユカリューシャの役への入り込みは
とても気迫がありました。

一幕では地味な女の子。
子、というほどは若くないかな。
内気過ぎなため婚期を逃しかけているようにも見える。
それが、「都会」から来た男に
恐れつつも惹かれていって・・・

すべての場面において演技がクリアでしたが
やはり3幕がいちばん良かった。
かつての愛(というよりも恋だよね)を思いだし
気持ちが傾きかけるが
決然と別れを告げる。
でも、、、という余韻も残る。
私はもともと彼女の「嘆き」(の表現)が好きなのですが
その「嘆き」ぶりが遺憾なく発揮されていました。
堪能しました。

それゆえに、1・2幕の素朴な、
多少妄想癖はあっても、狂気に繋がるほどではない
「普通の少女」と、3幕の「嘆き」のバランスが
ちょっと心配だったのですが、
もうーーー!そんなことを考えた私がバカだったよ!
と思うくらい、気持ちの流れ、時間の流れが自然でした。
公爵夫人となった彼女は
控えめな部分を残しつつも、
しっとりとした情緒があり、
公爵の丹精もあったかもしれないけれど
素地はたぶんもともとあって
賢明な公爵はそれを見抜いていたんだろうなあ、と。

でー。
見抜けなかったオネーギン。
木村さんは1幕と、2幕の途中までは
彼の魅力の一つでもある「人の良さ」が
やっぱり残っていて、
非情でもなんでもない、ただの大人でした。
まあ、なんといいますか、
髭のビジュアルは維新の元勲みたいと前に書きましたが
キャラとしては吉田松陰ですよねー、と。
もっともっとエグさが欲しい。
(ちょっと物足りないかなー)
と思っていたら、
タチヤーナを拒絶して、
意識的にオリガにちょっかいをかけだしてからは
なんだかパワーアップしてきて、
3幕では、ものすごい粘着力!
タチヤーナの首に顔を埋めるときは
とても情熱的でした。
ここまでしてくれるとは思わなかったわー。
ありがとう、ご馳走様。
髭もお似合いでした。
踊りはやっぱり綺麗。
特に脚のラインが美しいです。
脚を伸ばす振りが多いので
そのへんも充分堪能しました。

アクロバティックなリフトが多い作品ですが
特に3幕の二人は、
踊りを踊る、のではなく、
気持ちをぶつけあっていたので
「難しいことしているなー」と思う暇もありませんでした。


高村さんのオリガは可愛い。
オネーギンにちょっかい出されて
嬉しく思っちゃうのは子供だからなのかも。
レンスキーへの愛はゆるぎないのにね。

井上くんのレンスキーはとっても良かった。
なによりも髪の毛が普通で良かった。
彼のプライドはものすごく高いわけはないのに、
それでも決闘を申し込むほど傷つけられたんだよね。
「これくらい」って、傷つける方はそう思っても
傷つけられる方は、そうは思わないことがある。
踊りも良かったよ。

平野さんの公爵は、暖かい愛情に満ちていました。

3幕冒頭、柄本兄弟が並んでいました。
身長があるっていいね。
今回の群舞は、ある程度、体格を揃えたのかなあ。
見栄えはいい。


カーテンコールはスタオベ。
いい舞台でした。



【配役等】
ジョン・クランコによる全3幕のバレエ
アレクサンドル・プーシキンの韻文小説に基づく

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ
振付指導:リード・アンダーソン、ジェーン・ボーン
コピーライト:ディータ・グラーフェ
世界初演:1965年4月13日、シュツットガルト
改訂版初演:1967年10月27日、シュツットガルト

◆主な配役◆
オネーギン:木村和夫
レンスキー:井上良太
ラーリナ夫人:矢島まい
タチヤーナ:斎藤友佳理
オリガ:高村順子
乳母:坂井直子
グレーミン公爵:平野玲

親類、田舎の人々、サンクトペテルブルクの貴族たち:
チャイコフスキー記念東京バレエ団

指揮: ジェームズ・タグル
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
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「イングロリアス・バスターズ」

2010年05月15日 | 映画
独裁で、ナチの成立過程を追体験した後は
vsナチの映画。

シリアスだかなんだかおバカなんだか
よくわからない作品でした。
リアルさを欠きつつも、もんのすごい銃撃戦や
ナイフでいろいろの場面は
ちょっとグロ注意です。

純粋な2枚目以外だと、
「こんな役やっちゃてるオレ」臭がでまくって
げんなりしちゃうブラピも
作品自体がつかみ所がないと
その臭みが薄れて、けっこういいカンジ。かも。

ブラピの、ナチ狩りの軍人、
少女時代に家族を失ったユダヤ人少女の復讐の物語り、
主にこの2方向から話が進みます。
意外と混みあった複雑な構成でした。

笑う場面もあったし
少女の物語の結末も良かったけど、
最終的には、物語の要、
ハンス・ランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツの
演技の上手さが印象に残りました。
ただ者じゃないよ、この人!
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「ウェイブ」

2010年05月15日 | 映画
バレエの開演は18時。
夕方に家を出て東京に行くのは面倒。
でも、昼間になにかしたくても、お金がないし。
見たい映画は「9」だけど新宿まで行くのは面倒。
渋谷のプリマヴェーラは・・・・・・
う~ん、しばらくは好みじゃないな。
池袋の新文芸座はトラック野郎だ。
どうしよう。
そういうときこそ、新橋文化。
2本立てで女性800円です。

「ウェイブ」
アメリカであった実話を元に
ドイツの高校に置き換え映画化。
民主主義の良さを学ぶために、
対極にある「独裁」を学ぶ授業で。
教師は生徒に自分をあがめるようにいい、
制服(白シャツにGパン。各自自由ではある)を提案し
ロゴをデザインし、仲間意識を発達させ、他者を拒否する。
最初は「授業」だと、教師も生徒もわかっていたのに
だんだん境目が曖昧になっていく。

独裁が悪い、というのは簡単だけど、
独裁下の仲間の結束力はハンパない。
いつも以上の力が発揮できる。

しかし、たやすく暴走し、
コントロールする者も止める者もいないと
団体の力は強烈になる。

それが、特異なことではなく、
戦時下などでなくても、
いつでも誰でもどこででも、
独裁と同じ状況が成立しうると
提示されるのは、恐ろしいことだ。

この場合の独裁は、
集団心理と同義、かな。

独裁も恐いけど、
独裁に立ち向かうために
普段ならしない行動をしちゃう女の子達も恐かった。
「正しいことをする」「間違ったことをただす」
そんな大義名分があれば
多少の無理は目を瞑る。
これも、独裁に繋がることじゃないかなあ。
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