Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

さざ波

2014-05-05 01:00:00 | 雪3年3部(防御壁~グルワ発表前日)
長い時間海水浴をした後、陸に上がるといつまでも揺れているように感じることがある。

雪はそれと同じような感覚を、教室に居ながら味わっていた。



パチ、と目を開けると、天井がゆらゆらと揺れて見えた。

頭の上から足の先へ、血液がすうっと下がっていくような感覚だ。

あ‥目眩する‥



雪は深く椅子に凭れながら、ぼんやりと教室の中を眺めていた。

見慣れた風景が目眩のせいで、どこか色褪せた古いフィルムのように見える。

‥しかしながら、本来大学とは勉学に勤しむ場所のはずなのに、

一日も休むことなくゴタついたことが、ひっきり無しに起こっている。




教室という名の箱の中の、小さな社会。

社会の縮図のようなその空間の中で、雪は疲れた身体を投げ出し考える。

考えるのも面倒な程、頭の中が鳴っている。

さざ波のように、終ることなく。




不快に揺れる海の中で、徐々に神経が逆立ち始めている。

小さな波も積もり積もれば、やがて堤防を決壊させる。

ゆらゆらと揺れる不安定な空間。

雪はぼんやり目を閉じた‥。





そしてそんな空間から雪を引き戻したのは、機械的なゲーム音だった。

ピュゥンピュゥンという高い音が、海中から雪を引き戻す。



それは、隣に座る太一が手にしている携帯ゲーム機から聞こえて来る音だった。

太一は雪の方を振り向くことなく、ゲームに没頭している。

「ねぇ、面白い?」 「まぁ‥」 



今までならば、ゲームをする太一を聡美は罵倒したものだが、今や聡美は太一を気遣ってゲームについて話しかけていた。

あたしも一緒にやろうか、と聡美は提案するも、太一はそっけなくそれを断る。

‥太一もこの頃は頭痛いよね‥。何だか肌も荒れてるし‥



横山との一悶着は思いの外余波が大きく、太一は最近すっかり無口になって、本来の奔放さは影を潜めてしまっていた。

ふと聡美の方を見ると、彼女は反応の薄い太一を見つめて溜息を吐く。



いつも笑いながらバカを言い合っている聡美と太一が、今こんなにもぎこちない‥。

雪は聡美に明るく声を掛けた。

「ねぇ、後でウナギでも食べに行かない?」 



突然の雪の提案に、聡美は「わっ!マジで?!」と言って嬉しそうに笑った。

雪が更に「自分の奢りだ」と続けると、間に挟まれた太一も微かに笑顔になった。

「おぉ‥いいですネ~」



ようやく反応した、と言って聡美が親指を立てると、つられて雪もサムズアップだ。

和やかな雰囲気になりかけたと思った矢先、ぞろぞろと雪達と同期の男子学生達が三人の元にやって来た。

「よぉ太一。横山と和解したのかよ?」



仲良くしようぜ、と言って男達は太一の方を窺うが、当の太一はなんと彼等を無視した。

聞こえないフリをして、再びゲームにかぶりつく。



当然彼等は立腹し、太一に向かって声を上げようとする。

するとその前に聡美が声を上げ、シッシッと追い払うようなジェスチャーを彼等に向けた。

「あー!もうマジで止めてくれる?!詳しく知ってるわけでもないくせに、ほっといてよ!」



彼等は聡美にたじろぎながらも、俺等に矛先向けんなと言って言葉を続ける。

「平和に終わらせようとしたのに、アイツ一言も返事しねーんだもんよ。

しかも二回も俺等の科で暴力事件‥しかも横山にだけ‥」




男子学生は、なぜ太一が横山に手を上げたのかを知りたがった。それは科の男子全員が抱えている疑問なのだ。

彼等にとって、いつも雪と聡美とつるんでいる太一はどこか煙たい存在だ‥。



聡美が尚も彼等を追い払うと、男子学生は最後にもう一度太一に声を掛けた。

「とにかく横山と和解しろよな。このままじゃ科の雰囲気も良くねーしよ」



尚も返事をしない太一の横で、雪は呆れたような表情で彼等を睨んでいた。

すると後方の席から、癖のある声が聞こえて来る。

「大丈夫‥俺は気にしてないさ‥。皆もうそれ以上は止めてくれたまえ‥」



横山はまるで100%自分が被害者であるかのように、上から目線で発言した。

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、尚も言葉を続けてくる。

「まぁ後輩クンの機嫌が直ったら、一度酒の席でも設けようじゃないの」



一体どの口が言うんだか‥。雪が青筋を立てて横山を振り返った時だった。

太一が勢い良く立ち上がった。



太一はそのまま真っ直ぐに、横山の方へ向かって歩いて行く。

ビビった横山は咄嗟に腕を上げて顔を庇うが、太一は横山の隣を通り過ぎるだけだった。



拍子抜けした横山が太一の後ろ姿を目で追うと、そのまま彼は出口へと向かう。

そして結局、まだ授業は始まっていないのに、太一は退室してしまったのだった。



一触即発の張り詰めた空気がほぐれ、教室に居た面々はヒソヒソと噂話を繰り広げる。

苛立つ聡美に、居心地悪そうに咳払いをする横山‥。ザワザワと、小さな社会が揺れている。



横山は気を取り直すと、予め用意してあったメールを一通送信した。

前の席に座る雪が、震える携帯を取り出す。



携帯を見ると、メールが一通届いていた。

青田先輩関連の話があるから時間をくれ、と書いてある。聞かなければ後悔する、とも。



辟易した表情を浮かべた雪は、無言で後方の席に座る横山を振り返った。

横山はニヤつきながら、携帯をかざしてメールを送ったのは自分だと誇示をする。



雪は何も口にすることなく、苛立ちながら再び前を向いた。

予想通りの雪の反応を見て、横山は笑いを堪え切れずに一人吹き出す。



横山は雪の背中を見つめながら、自身の持つ切り札を思って笑みを浮かべた。

せいぜい無視し続ければいいさ。

どんな反応しようが、どうせ後で自滅すんのはお前だ、赤山雪‥。




すると今度は横山の携帯が震えた。

予想より早く赤山が反応を示したと、横山は早速メールを開く。



するとそこには一文字表示されているだけだった。

否、文字というより絵文字の部類のそれは‥。

F◯CK!



思わずカッと来た横山は、「こンの‥!」と言いながら顔を上げる。

こめかみに青筋を浮かべながら。



しかしそれきり雪は横山を無視し続けた。

こんな変な奴、相手にするだけ時間の無駄だと。



悔しそうな表情で、横山は雪の背中を睨めつける。

セットした時限爆弾を手に横山は、爆発する機をじっと窺っている‥。





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<小さな波>でした。

今回雪が提案したウナギ‥。

作者さんもウナギを食べに行ったそうですね^^

スンキさんのブログの、2013.7.29の記事にその写真がありました~

http://blog.naver.com/soonkki


そして疲弊に沈み込む雪ちゃんが、この回では印象的でしたね。

この時の表情を先輩が見たなら、きっとその気持ちに共感したのではないでしょうか。


さて

次回は特別編となります。

モノクロで綴られる、雪の内面の話、先輩との関係‥。

楽しんで頂ければ幸いです。


次回、<特別編 あなたと私>です。


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