Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

奪われたくない

2014-05-15 01:00:00 | 雪3年3部(グルワ発表~ずっと一緒に)
変核的リーダーシップ”



画面に映し出された文章に、そんな誤字が目についた。

変革的を変核的と誤って書いたことを、雪は思い出していた。

それは確かに、去年雪が提出したレポートで彼女が犯したミスだったのだ。



血相を変えた聡美が、雪の方を振り返って口を開く。

「ゆ、雪!あれ‥!あれこの前のー‥!」



聡美が言い出さなくても、雪には分かっていた。

自分が書いたレポート内容が、今ここに丸々映し出されているということが。


「カリスマ的リーダーシップについて、良く調べてありますね。

以前は彼女に関する発表も沢山ありましたが、CEOを退いた以降はあまりされていませんでしたから」




教授の評価は上々だった。その反応に班長の佐藤は胸を撫で下ろし、香織は頭を掻いて照れ笑いする。

そしてグループEは発表を終え、質疑応答へと移った。

「それでは質問の方を‥あ、はい‥伊吹さん



佐藤が質疑応答の開始を口にするやいなや、聡美は手を上げ立ち上がった。

聡美は香織を真っ直ぐに見据えると、彼女の方を指差して話し出す。

「質問があります。たった今最後の発表をした方が、そのCのカリスマ的リーダーシップに関して論じ、

そして最終的にそれに対する自身の考えを仰いました。そうですね?」




香織はたじろぎながら、たどたどしく肯定を口にする。

そして聡美は彼女に対して疑いの眼を向け、ゆっくりとこう口にした。

「それ本当にご自身で考えられました?」



え? と香織は声に出してから絶句した。

言葉を紡げずにいる香織に向かって、尚も聡美は追及を続ける。

「あたしは一昨年、”組織管理”の夜間授業を受けたことがありました。

そして当時あたし達のグループが発表した内容と、今あなたが発表した内容がまっったく一緒なんですけど!」




これは一体どういうことですか? と聡美が続けると、香織は身を強張らせて視線を泳がせた。

すると班長の佐藤は溜息を一つ吐き、話にならないとばかりに首を横に振りながら口を開く。

「あのねぇ、リーダーシップ分析ったってどうせ似たり寄ったりでしょ?

Cがカリスマ的リーダーシップを持ったって結論は、結局皆同じだろうし‥」




佐藤がそう口にすると、香織はすぐさまそれに乗っかる。

「そ、そうよ!何でいきなりこんなこと言うのか知らないけど、

ま、まさか私的な感情で言ってるんじゃないでしょうね?!

根拠もなしにそんなこと言われても、ふ‥不愉快なだけですから!」




香織の意見を受けて、聡美が「何ですって?!」と声を荒げる。

騒然としていく教室の中で、雪は一人黙り込んだまま俯いていた。



心の中に、大波が押し寄せている。雪は高く築いた塀の前に立ち、冷静に確認していた。

今の状況、自分の気持ち、これからどうなりたいか。

雪はゆっくりと顔を上げた。


聡美も一緒にやった課題だから、当然腹が立ったろう。けれどこれ以上話を進めると、問題が大きくなる。

わざわざ教授室へ出向いて釈明の為の資料を出すのも面倒だし、同期達からの視線も更に厳しいものになるかもしれない。




今までの雪ならば、ここで思いを飲み込んでいたはずだ。

怒っても怒らなくても後悔するならば、事を荒立てない為に我慢しようと。




だけど‥



雪はグッと、拳を握り締めた。

静かに、そしてゆっくりと、彼女は覚悟を決めていく。



頭の中に、浮かんでくる光景があった。

それは疲れがピークに達したあの日、夢で見た光景だった。



愛すべき人々に囲まれ笑う、自分では無いあの子。

そんな光景を遠くから見ながら、だんだんと消えて行く自分。



自分の潜在意識が見せたその光景は、とても重要なものを無くすことの危惧を表していた。

それは今まで築いてきたもの全てを、取り上げられてしまうことへの恐怖。



ゆっくりと、雪の決意は固まった。

高い塀を更に高く築くより、そこを自ら開門する覚悟を決める。

譲れないものがあった。何よりも大事なものがあった。雪は心の中で叫ぶ。


これ以上、自分自身を奪われたくない




彼女には癖があった。

それは差し伸べられた手が去る時、必死に追い縋るという哀しい癖が。

雪にとってそれらを奪われるということは、彼女の潜在意識に於いて最も恐ろしいことだった。

彼女は無意識なりに、そんなシグナルを感じ取って覚悟を決めたのだ。




「内容から誤字まで、全部同じです」



そして雪は立ち上がり、遂にハッキリと真実を告げた。たじろぐ香織を見据えながら、淡々と言葉を続ける。

「そのパワーポイントの背景画面は、一昨年私がフォトショップで作成したものです。

そしてそれを、レポート販売サイトに載せました」




雪の口から語られた真実に、香織の顔は青くなった。

ビクッと身を強張らせながら、目を見開く。雪の言う通り、香織はそれをレポート販売サイトで買ったのだった。



雪の告白を受けて、聡美が援護射撃する。

「そうです!それはあたし達の課題であり、赤山さんがそこに売ってアップした資料です!」



ざわっ、と教室中が揺れた。

直美と佐藤が、香織の方を見て驚愕の表情を浮かべる。



しかし一番驚いていたのは、清水香織その人だった。

まるで狐につままれたかのような展開に、香織は呆然としていた。

「‥え?」



周りを見回すと、教室中の学生達がどよめいている。

真実は一体何なのか、皆もよく分からないのだ。



雪はその空気を読み、言い逃れの出来ない決定的な証拠を口にする。

「”変革的”リーダーシップを”変核的”リーダーシップと誤って書いてしまったことを、

去年の発表時に気が付きました。修正して販売することをすっかり忘れていて‥」


 

今日見るとそのままになっていますね、と雪が口にして、そこに居た全員がその誤字を確認した。

固まる香織に対し、雪は更に追及を続ける。

「もちろん購入してもらう為にアップした資料です。

けれどあくまでも参考にしてもらう為の物であって、そのまま丸写しする目的でアップした資料ではないと考えます」




正論を口にする雪の横で、聡美が香織のやっていることの卑怯さを口に出す。

「誤字も修正せずにフォントと名前だけ変えて、

そのまま掻き集めてコピペしたってわけね」




フン、と聡美が息を吐き捨てる。

香織は整理出来ない頭を抱えながら、手元の資料に視線を落とし込んだ。

ダラダラと、冷や汗が尋常でない程流れて行く。



あれは全て赤山が作った物だと、清水香織の物ではないのだと、真実が香織の耳にこだまする。

目の前がグラグラと揺れる。息が出来ない。まるで海の中に居るみたいだった。




香織は知らなかった。そのレポートの作成者が雪だということを。

そして購入したレポートを、そのまま載せてはいけないということを‥。



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<奪われたくない>でした。

必死で固めた砂の像が、ボロボロと崩れ落ちて行く‥。

そんな光景が浮かぶようです。香織、ピンチですね。

しかし何故コピペしちゃったのか‥。そんなところに彼女の常識の無さが垣間見えます。


そして雪ちゃんの潜在意識が色濃く表れた、彼女の決意でした。

自身を奪われていく恐怖というものを、雪ちゃんは他の誰よりも恐ろしく感じると思います。

差し伸べられた手が去る時、それに追いすがってしまう癖もそこから来ているんではないでしょうか。


次回は<誰のせいで>です。


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