いよいよ月曜から中間考査。
雪は、キャンパス内を歩く時ですらプリントと睨めっこだ。

ブツブツとその内容を口に出しながら暗記していると、不意に携帯が鳴った。
画面に表示された着信主を見て、雪は疑問符を浮かべる。
ん?別に仲良くもない子だけど‥

なぜこの子が電話を掛けて来るのかは分からなかったが、とりあえず出てみる。
「もしも‥」
「おい赤山!着拒すんなよ!とりあえずちょっと話を聞け!な?!」

ブチッ‥。雪はその声を聞くなり電話を切った。
横山翔である。彼は、自分の番号は着信拒否されているので、別の子の電話を借りて掛けてきたのだ。
「あーもう横山!ムカつくんじゃコイツ!
」

雪はプルプルと怒りに震えながら、携帯の電池を取って空に叫んだ。
横山の執念深さに苛立ちが募る。

明日から中間考査なのに、横山に神経を使わされるのが堪らなく嫌だった。
雪は怒りにまかせてドスドスとキャンパス内を歩き、自販機で一本缶ジュースを買った。

やけ酒ならぬやけジュース。
雪はグビグビとそれを一気に飲み干し、そこでようやく一息吐いた。

横山になんて神経を使っていられない、とにかく重要なことだけに集中しようと雪は自らを律する。
試験が終わったらレポートの準備をすぐに始めて‥。そういえば暫く店の手伝いが出来な‥

そこまで考えた時だった。
突然、雪の横から癖のある声が響く。
「何で無視すんだー‥」 ギャアアア!!

雪は、いきなり現れた横山に心の底から驚いた。
全身が総毛立ち、思わずよろめいて尻餅をつく。

雪は地面に座ったままで、横山に向かって声を荒げた。
「な‥何なのよ?!どういうつもり?!頭おかしいんじゃないの?!」

動揺する雪に対して横山は落ち着いていた。過剰反応なお前の方がおかしいんじゃねぇの、と冷静に反論する。
そして横山はゆっくりとこちらに近寄ると、物々しい雰囲気で雪を俯瞰した。
「何度も連絡したんだけど?話があるって言ったじゃねーか」

今にも何かしでかしそうな横山を見上げて、雪は顔面蒼白だった。
すると横山は自身のポケットから携帯電話を取り出し、雪に向かって堂々と翳した。

切り札だった。
青田淳の裏の顔を暴くことの出来る、最後の切り札。
横山は携帯電話を翳しながら、無言のままその場に佇んだ。

雪は、なぜ横山がそうしているのかが分からなかった。地面に尻餅をついた姿勢のまま、疑問符を浮かべる。
「‥何なの?」 「これを見ろよ、これを」

それは何なの、と雪は続けて聞いてみたが、
横山は「これを見なければ絶対後悔する」とだけ言って、その場から動こうとしない。

胸ぐらを掴まれるでも、すごまれるでも無い‥。雪は少し拍子抜けしながら、ゆっくりとその場から立ち上がった。
こんなことの為に前々から話し掛けていたのか、と思いながら。
「知りたくもないわ。てかアンタの話なんて信じないし」

立ち上がった雪は、そっぽを向きながら冷たくそう言い放った。横山の顔色が変わる。
「おい!マジでお前の為を思ってのことなんだって!
わっかんねーかなぁ?!まだお前に情があるから、こうして助けてやろうとしてんじゃねーか!」

横山は必死になって雪の周りをウロチョロした。雪は白目になりながら、何を言っているのかと呆れ顔だ。
「青田先輩に関することなんだって!」

何度も聞いたその言葉‥。
メールでもそんな内容のことが書かれていたと思い出し、雪は眉を寄せて横山を睨んだ。

こう何度も付きまとわれると、いい加減イライラする。雪は横山に向かって再び声を荒げた。
「もう!本当に止めてよね!先輩のことはアンタより私の方が遥かに分かってますから!
変なデタラメで人を引っ掻き回さないでよ!そうじゃなくても中間考査で、
あんたに構ってる暇なんて無いのよ!」

そのまま背を向けようとする雪に、横山も慌てて声を上げる。横山は雪に向かってズイッと携帯を翳した。
「俺のことが信じられないってか?一度見たら分かるさ、俺の話が正しいかそうじゃないかってことがな!」

横山は雪の目の前に携帯を翳し、「これ以上は追及しないから一度だけ見てみろ」と尚も言った。
本当にしつこい‥。雪はもうげんなりだ。

そのしつこさに呆れてしまい、雪は怒りのボルテージが少し下がる。
「‥それなら最初からキャプチャーして送ってくればいいじゃない!こんな風に直接見せなきゃいけないことなの?!」
「いや~キャプチャーは情が無いじゃんか~」 「何なの?バカバカしい‥」

そうしてブツクサと会話した後、横山はニヤニヤと笑みを湛えた。
「そんなにビビんなって。俺はここでじ~っとしといてやるし」

そう言って横山は、再び携帯を持ったまま雪の方に差し出した。
「いや、むしろ離れてやんよ。こっち来て見てみろって」

横山の言葉と仕草に、思わず雪は身を強張らせた。
こっちにおいでと手をこまねく横山が、ニヤニヤと笑ってこちらを見ている。

気に食わなかった。
何度もしつこいのも、度々神経を削られるのも。

雪は横山に訝しげな視線を送った。
そして最大限に警戒しながら、彼の方に歩みを進める‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<翳した切り札>でした。
横山、ついにお化け淳の特性もコピーしましたかね?^^;
そして最初していた雪のストール、どこへ行った‥
そしてビックリした拍子に飛んでいったジュース、どこへ行った‥(おまけに途中で色が変わる)
細かいクラブでした。
次回は<父の訓戒>です。
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雪は、キャンパス内を歩く時ですらプリントと睨めっこだ。

ブツブツとその内容を口に出しながら暗記していると、不意に携帯が鳴った。
画面に表示された着信主を見て、雪は疑問符を浮かべる。
ん?別に仲良くもない子だけど‥

なぜこの子が電話を掛けて来るのかは分からなかったが、とりあえず出てみる。
「もしも‥」
「おい赤山!着拒すんなよ!とりあえずちょっと話を聞け!な?!」

ブチッ‥。雪はその声を聞くなり電話を切った。
横山翔である。彼は、自分の番号は着信拒否されているので、別の子の電話を借りて掛けてきたのだ。
「あーもう横山!ムカつくんじゃコイツ!


雪はプルプルと怒りに震えながら、携帯の電池を取って空に叫んだ。
横山の執念深さに苛立ちが募る。

明日から中間考査なのに、横山に神経を使わされるのが堪らなく嫌だった。
雪は怒りにまかせてドスドスとキャンパス内を歩き、自販機で一本缶ジュースを買った。

やけ酒ならぬやけジュース。
雪はグビグビとそれを一気に飲み干し、そこでようやく一息吐いた。

横山になんて神経を使っていられない、とにかく重要なことだけに集中しようと雪は自らを律する。
試験が終わったらレポートの準備をすぐに始めて‥。そういえば暫く店の手伝いが出来な‥

そこまで考えた時だった。
突然、雪の横から癖のある声が響く。
「何で無視すんだー‥」 ギャアアア!!

雪は、いきなり現れた横山に心の底から驚いた。
全身が総毛立ち、思わずよろめいて尻餅をつく。

雪は地面に座ったままで、横山に向かって声を荒げた。
「な‥何なのよ?!どういうつもり?!頭おかしいんじゃないの?!」

動揺する雪に対して横山は落ち着いていた。過剰反応なお前の方がおかしいんじゃねぇの、と冷静に反論する。
そして横山はゆっくりとこちらに近寄ると、物々しい雰囲気で雪を俯瞰した。
「何度も連絡したんだけど?話があるって言ったじゃねーか」

今にも何かしでかしそうな横山を見上げて、雪は顔面蒼白だった。
すると横山は自身のポケットから携帯電話を取り出し、雪に向かって堂々と翳した。

切り札だった。
青田淳の裏の顔を暴くことの出来る、最後の切り札。
横山は携帯電話を翳しながら、無言のままその場に佇んだ。

雪は、なぜ横山がそうしているのかが分からなかった。地面に尻餅をついた姿勢のまま、疑問符を浮かべる。
「‥何なの?」 「これを見ろよ、これを」

それは何なの、と雪は続けて聞いてみたが、
横山は「これを見なければ絶対後悔する」とだけ言って、その場から動こうとしない。

胸ぐらを掴まれるでも、すごまれるでも無い‥。雪は少し拍子抜けしながら、ゆっくりとその場から立ち上がった。
こんなことの為に前々から話し掛けていたのか、と思いながら。
「知りたくもないわ。てかアンタの話なんて信じないし」

立ち上がった雪は、そっぽを向きながら冷たくそう言い放った。横山の顔色が変わる。
「おい!マジでお前の為を思ってのことなんだって!
わっかんねーかなぁ?!まだお前に情があるから、こうして助けてやろうとしてんじゃねーか!」

横山は必死になって雪の周りをウロチョロした。雪は白目になりながら、何を言っているのかと呆れ顔だ。
「青田先輩に関することなんだって!」

何度も聞いたその言葉‥。
メールでもそんな内容のことが書かれていたと思い出し、雪は眉を寄せて横山を睨んだ。

こう何度も付きまとわれると、いい加減イライラする。雪は横山に向かって再び声を荒げた。
「もう!本当に止めてよね!先輩のことはアンタより私の方が遥かに分かってますから!
変なデタラメで人を引っ掻き回さないでよ!そうじゃなくても中間考査で、
あんたに構ってる暇なんて無いのよ!」

そのまま背を向けようとする雪に、横山も慌てて声を上げる。横山は雪に向かってズイッと携帯を翳した。
「俺のことが信じられないってか?一度見たら分かるさ、俺の話が正しいかそうじゃないかってことがな!」

横山は雪の目の前に携帯を翳し、「これ以上は追及しないから一度だけ見てみろ」と尚も言った。
本当にしつこい‥。雪はもうげんなりだ。

そのしつこさに呆れてしまい、雪は怒りのボルテージが少し下がる。
「‥それなら最初からキャプチャーして送ってくればいいじゃない!こんな風に直接見せなきゃいけないことなの?!」
「いや~キャプチャーは情が無いじゃんか~」 「何なの?バカバカしい‥」

そうしてブツクサと会話した後、横山はニヤニヤと笑みを湛えた。
「そんなにビビんなって。俺はここでじ~っとしといてやるし」

そう言って横山は、再び携帯を持ったまま雪の方に差し出した。
「いや、むしろ離れてやんよ。こっち来て見てみろって」

横山の言葉と仕草に、思わず雪は身を強張らせた。
こっちにおいでと手をこまねく横山が、ニヤニヤと笑ってこちらを見ている。

気に食わなかった。
何度もしつこいのも、度々神経を削られるのも。

雪は横山に訝しげな視線を送った。
そして最大限に警戒しながら、彼の方に歩みを進める‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<翳した切り札>でした。
横山、ついにお化け淳の特性もコピーしましたかね?^^;
そして最初していた雪のストール、どこへ行った‥

そしてビックリした拍子に飛んでいったジュース、どこへ行った‥(おまけに途中で色が変わる)

細かいクラブでした。
次回は<父の訓戒>です。
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