Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼女の覚悟

2014-05-12 01:00:00 | 雪3年3部(グルワ発表~ずっと一緒に)
お客様の電話をお繋ぎすることが‥



何度掛けても、健太先輩は電話に出なかった。

時刻はもう真夜中近く。グループワーク発表の前日の夜だった。



雪は自宅にて、発表の最終確認をしているところだった。

健太先輩からの連絡は無い。勿論レポートも送られて来ていなかった。



雪はゆっくりと、覚悟を決めていった。

打ち寄せるさざ波を堰き止める防波堤を、敢えて自分から外していく。


そして雪はプレゼン資料の冒頭部分に、グループメンバーの名前を書き込んだ‥。





翌朝雪は、授業開始の前にプレゼン資料を人数分コピーした。

大あくびをする雪の元に、携帯メールが一通届く。

今日はちょっと遅れそうだから先に行ってて!後でね!



先輩からのメールだった。雪はその文面を見ながら、しょんぼりとした気分になる。

授業の前に、一緒にコーヒーでも一杯と思っていたのだ‥。



これではすぐに教室に向かわなければならない‥。

足が、おもりがぶら下がっているかのように重い。雪は項垂れながら歩いた。

うう‥行きたくない‥。間違いなく今日荒れるもん‥



この先に待ち受けている波乱を思って、雪は憂鬱だった。


そして教室に入るやいなや、健太は予想通りの態度で雪に接した。

「いや~赤山ァ~!どした?スネちゃった?」



むっつりと黙り込んだ雪に対して、健太は軽い調子で冗談を口にする。

そして大げさな身振り手振りを交えての言い訳が始まった。

「連絡つかなくてマジごめんな~!昨日はさぁ~家で問題があってさぁ~。

おっ!これがアレか?俺等の課題か?」




調子良く口が回る健太に対して、雪は低い声で話を切り出そうとする。

しかし健太はバンバンと雪の背中を叩きながら、見え透いたおべっかで雪をおだてた。

「さすが赤山!このスッキリしたスプリング!当然パワポの方もよく出来てんだろうな~?」

 

ワハハと大きな声で笑う健太に、聡美も思わず白目である。

そして雪は静かに物々しく、遂に健太に向かって口を開いた。

「‥健太先輩。今回の課題、先輩は殆ど取り組んでないってこと、ご存知ですか?」



雪から事実を告げられた健太は身をすくめ、しおらしく俯くと素直に頷いた。

「ああそうさ‥その通りだ‥。すまない赤山‥。

だけど本当に仕方が無かったんだ‥」




そして健太は、ねちっこい視線を佐藤の方へと向ける。

「俺は家の方の問題でごたついてるから、佐藤にお願いしておいたんだが‥。

あの野郎、何も寄越さねぇで‥」




健太の背後には怒りのオーラが立ち上るが、佐藤はそれを見て見ぬフリをした。

そして雪は健太が何を言っているのか訳が分からず、正直に自分の意見を口にした。

「はい?佐藤先輩は他の班じゃないですか。

何で佐藤先輩が健太先輩の課題をするんです?」




思わず強い口調になる雪に、健太は小狡い表情で弁解する。

「それはほら‥赤山も知っての通り、俺と佐藤って仲良いからさ‥。

全部任せたってわけじゃないし‥」




そして次の瞬間、健太は高い位置から厳しい視線で雪を睨んだ。

「それに‥この頃俺は失恋の痛みにやられて‥」



何度か首を横に振りながら、健太は雪に向かって刺々しく自分の気持ちを口にする。

「恵ちゃんに彼氏が出来たんなら、もっと早く言ってくれ。俺知らなかったじゃんよ。

赤山がもっと俺のことを考えてくれてたらこんなことには‥」




突然語られた恵の話だが、雪には訳が分からなかった。

そして健太が口にしたその内容よりも、彼が未だに恵にこだわっていることに対して雪は憤った。

「まだ恵につきまとってるんですか?!」



そして思わず大きな声で口にした雪の言葉に、健太はカチンと来た。

さっきの媚びへつらう態度から一転、凄むようにして雪を睨み、低い声で反論する。

「あ?んだと? 赤山、お前口に気をつけろよ。どんなに腹立ったとしても、

”つきまとう”だと? 俺がストーカーするような男に見えるか?そんなゴミと一緒にすんじゃねぇ!」




雪はその迫力に身が震えそうであったが、ズレていく論点をとりあえず修正する。

「だから‥佐藤先輩と私のせいだって言うんですか?」



そんな雪の冷静な問いに、聡美が援護射撃をしてくれた。

「そうですよ!ただ健太先輩が課題をして来てないってだけの話じゃないですか!」



二人の後輩から論点を是正された健太はブツクサ言ったが、再びアメとムチのアメの態度に逆戻りだ。

「ま‥まぁまぁ!もう過ぎたことだしよ、皆もちゃんと課題やって来てるみてーだし!

俺がどうにか良い様に収拾すっからよ!」




結局媚びるような態度で治めようとする健太に、柳もドン引きで彼を眺める。

健太は再び白々しい程雪を褒め称えながら、机の上に置いてあった課題に手を伸ばした。

「うわ~!さっすが赤山!この出来の良さ!毎度スッキリまとめてフォントも凝って‥」



しかしそこまで褒め文句を口にしていた健太も、それ以上言葉を続けることが出来なくなった。

何故ならば、信じられないものが目に入って来たからである。



プレゼン資料冒頭。そこに、柳瀬健太の名前は無かった。

柳楓、伊吹聡美、赤山雪、三名の名前がそこに書かれているだけであった。


「‥先輩の名前は抜かせて頂きました」



顔を青くした健太を見て、雪は彼が除名されたことに気づいたと察知し、そう冷静に言葉を紡いだ。

健太の後ろでは柳が冷や汗を流しながら、マジで除名キタコレ‥と小さく口にする。雪が健太を除名したことは、柳も知らなかったのだ。

顔面蒼白する健太に向かって、雪は彼の方を窺うことなく言葉を続けた。

「この前申し上げたじゃないですか。参加しない人については除名しますと」

 

そう淡々と語る雪を前に、健太の顔がみるみる怒りに歪んで行く。

まさか本当に除名されるとは、夢にも思っていなかったのだ。



バンっと大きな音を立てて、健太は両手で机を叩いた。

「おい赤山!ふざけてんのかっ?!」



健太の怒号が教室内に響くが、雪にとっては想定内の反応だ。尚も健太の方を見ること無く、冷静に言葉を続ける。

「グルワ課題に一つも参加しなかったじゃないですか。無賃乗車者は容認しないと教授が仰っていました」

「俺がわざとしなかったと思うのか?!」



健太は言い返すも、気がつけば教室中の学生が自分達を見ていることに気がついた。

健太は一旦気を落ち着けた後、怒りを抑えて冷静に弁明する。

「‥話したじゃねーか、家の方で問題があるんだって。

大学に家の問題に人間関係に‥もう考える余裕も無かったんだよ。四年になって、父親は退職して、俺は長男で‥。

そんなことまで恥を忍んで言わなきゃいけねーのか?」




赤山はこんなに思いやりの無い人間だったのか、と最後に健太は口にして雪を睨んだ。

すると今まで俯いていた雪は遂に健太に向き直り、口を開いた。

「それは先輩の事情です」



は? と健太が眉を寄せて聞き返す。

雪は健太を真っ直ぐに見据えながら、もう一度キッパリとした口調でその言葉を口にした。

「それは、先輩の事情ですよ」



防波堤を取り除いたその場所に、波を寄せ付けない高い塀を築いた。

雪はじっと健太を見据えながら、決意の塀の前で開戦を受け入れる‥。



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<彼女の覚悟>でした。

雪ちゃんやってやった!彼女の強さが見ていて気持ち良いですね~。

しかしやはり直球すぎて、読者は心配になりますね。早く先輩、助けてあげて~!


次回は<相対>です。


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