Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

舞い散る葉の中で

2014-05-08 01:00:00 | 雪3年3部(防御壁~グルワ発表前日)
グループワークが終わり、清水香織と直美は構内で課題の段取りを話していた。

傍らには横山翔が、そのやり取りが終るのを待っている。



話が終わると、直美は香織に手を振って別れを告げた。

課題頑張ろうねと激励を口にする直美の横で、横山翔がグッと拳を握って笑顔を浮かべる。



ファイティン、と口にする横山に、香織は笑顔で手を振った。

すっかり仲直りした横山と直美は、そのまま肩を組んで楽しげに歩いて行く。

 

香織はそんな二人の姿を眺めながら、心の中に風が吹き抜けるような気持ちがした。

色づいていく木々が示すように、季節はもうすっかり秋だ‥。




ザワザワと、秋風が葉擦れの音を奏でる。

香織は一人、落ち葉を踏みしめながら秋のキャンパスを歩いていた。



すると不意に旋風が巻き起こり、足元の落ち葉が一斉に螺旋を描いて舞い上がった。

香織は手で顔を覆いながら、舞い散る葉の中で目を閉じる。



舞い上がった木の葉は、風が抜けるとハラハラと再び地面に舞い落ち、

香織はその中で目を開けた。



そしてそこで香織は、信じられないものを目にした。

なんと目の前に、あの男の子が居たのだった。

彼は舞い落ちる木の葉の中で、どこか切なそうな表情で天を仰ぐ。



以前声を掛けられた、あの男の子だった。

あの日目にしたこの男の子の姿が、今も香織の脳裏にはありありと焼き付いている‥。




再び彼が目の前に現れたことが、香織には信じられなかった。

しかし彼は秋の風景の中に、今確かに存在している。



ドクン、と香織の心臓は大きく跳ねた。

美しい風景の中に佇む彼から、目を逸らすことが出来ない。



俯き溜息を吐く彼の表情は切なくて、それはなんとも儚げだった。

ドキドキと高鳴る鼓動もそのままに、香織は彼を見つめたままその場に立ち尽くす。



一つ一つの動作が、切り取った絵のように美しく見えた。

携帯電話を掲げて佇む彼に、どこからか美しい言葉が降ってくる。

俺は時折涙を流す‥。頭ではなく心で泣く俺‥



ピピーッと携帯電話から機会音が響いた。画面には、文字がそっけなく表示される。

”バッテリー残量があと僅かです 5%”



蓮は心で泣いた‥。

やるせない気持ちをぶつけるように、落ち葉の絨毯に携帯を投げつける‥。



そして顔を上げた蓮と香織は、目が合ったのだった。

赤面した香織の心臓が、飛ぶように跳ねる。



すると蓮は手を上げて、香織の方に近付いて来た。

「あっちょっと!ちょっと待って下さ~い!」



ドギマギする香織の方に向かって、彼はニコニコしながら近寄ってくる。

「ここの学生さんっすか?ちょっと聞きたいことあるんすけど!」



香織のすぐ傍で、彼が立ち止まる。

香織はどうしたら良いのか分からず、ただ赤面して俯いていた。

「ちょっと美大の場所教えてもらえますかね?」



彼の顔が、ほんの数十センチ先にある。

香織は顔も上げられぬまま、高鳴る鼓動で何も口に出来なかった。



そんな香織を見て、蓮は自分が変な人だと思われているから黙っているんだと思い、今の状況を説明した。

「携帯のバッテリーが無くなっちゃって!ったくこのオンボロ携帯!

前に一度来たことあるんすけど、やたら構内は広いし道が複雑だしで度々こんがらがるんすよ!

あ、だから別に俺が方向音痴ってワケじゃねーすよ?」




蓮はペラペラと香織に向かって弁明を交えて説明した。

その勢いに香織はついていけず、頷いて相打ちを打つだけで精一杯だ。

「美大の場所のついでに、この大学の近くにある美味くて有名な◯◯って店の場所も教えてくれます?」



次々と要求を出す彼に、香織は必死についていこうとして携帯を取り出した。

「今検索します」と言ってネットブラウザのボタンを押す。

一生懸命携帯を睨む香織を見て、蓮は軽い調子で声を掛けた。

「あれ?ところで俺等どっかで会いました?違うかな?」



ハハハ、と笑う彼に向かって、香織は震える手で携帯を操作し、無音でシャッターが切れるカメラアプリを立ち上げた。

小さく震えながらも、しっかりと無音モードになっていることを確認する。

 

そして香織はネットで検索する振りをして、彼に向かってシャッターボタンを押した。

写真を撮られているなど露ほども知らない蓮は、一人鼻歌を歌いながら香織が調べ終わるのを待っている。



ほどなくして香織は、蓮が頼んでいた店の地図を表示し、差し出した。

「こ、ここです‥」 「おぉ~!」



香織は地図を見ながら店の行き方を説明し、蓮はひとしきり頷いた後、香織に礼を言って去って行った。

「ありがとうございました~!」



彼の背中が段々と小さくなっていく。香織は暫し放心した。

そして震える手で、携帯を取り出し画像フォルダを開く。



そこには彼が居た。

秋に色づく背景の中で、写真の中の彼は色素の薄い髪と目が透けるように輝いている。



香織はその写真を眺めながら、先ほど彼が口にした言葉を思い出していた。

俺等‥どこかで会ったかな‥?



ドキドキして顔は上げられなかった。

けれど彼の口元は優しく微笑んで、穏やかに自分を見つめていた‥。

私のこと、覚えてた‥?

あんなに格好いいんだから、写真一枚くらい‥いいよね?




キャアア、と香織はその場で叫んでうずくまった。

まるで小説のような運命の再会。彼の全てが、瞼の裏に焼き付いて離れない‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<舞い散る葉の中で>でした。

香織が雪のカーディガンを真似したことで、奇跡の蓮と香織ペアルック的展開に‥

ちなみにこの蓮の服は、アメリカで買ったものだそうです。

そう考えると雪と被ったのは姉弟の為せるシンクロ技‥?^^


次回は<カップル誕生(仮)>です。

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