Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼女の潜在意識

2014-05-10 01:00:00 | 雪3年3部(防御壁~グルワ発表前日)


空には夕焼けが広がり、A大キャンパスは橙の陽射しに照らされていた。

雪はもう一コマ授業が残っていたので、空講時間に図書館のアルバイトをする。



返却された本を元あった棚に並べ、また取りに行って並べ‥の繰り返しだが、雪は真面目に取り組んだ。

そして一コマ分の労働が終わると、今日最後の授業へと向かう。



窓の外は既に暗くなり始めていた。雪はノートを取りながら思わず船を漕ぐ。

今日一日の疲れがどっと押し寄せ、何度も眠りに落ちては覚めての繰り返しだった。



思い返せば今日一日もまた、長い一日であった。

週末の疲れが残ったまま学校が始まり、朝の授業前にいきなり清水香織が突っかかってきた。

グループワークでは健太先輩と揉め、その後太一に対する横山の態度と変なメールにムカついて‥。

 

 

雪は疲れていたのだ。

その疲れは、帰宅途中の地下鉄でもとれることはなかった。



片道二時間弱の帰路。

地下鉄の単調な揺れに身を委ねながら、雪は深い眠りに落ちて行った。










気が付くと、雪は真っ暗な空間に一人立ち尽くしていた。

そこは暑くもなければ寒くもなく、見たことも来たこともない場所だった。



何故今自分はここに居るのか、一体誰に連れて来られたのか‥?

雪は何も分からないまま、ただその場に立ち尽くす。


すると近くでぼんやりと明かりが灯り、そこに人影が見えた。

見たことのあるようなないような、そんな女性が誰かに声を掛けている。

あ、香織ちゃん!今回首席だって?



奨学金も受けたんでしょう? いいなぁ!



女性が声を掛けている先には、笑顔で手を振る清水香織の姿があった。

周りの人達は皆、彼女を羨望の眼差しで見つめていく。

そしてその隣には、青田先輩の姿があった。

お疲れ様。夕飯でも食べに行こうか

はい~



彼が清水香織に向かって笑いかけている。

雪は首を傾げながら、「先輩‥?」と彼の行動を訝しがった。



どこかおかしい。

雪のその思いは、続いて目の前に広がった光景を見て尚の事顕著になった。

ダメージヘアー! 雪さ~ん 雪~! 姉ちゃん!交通費ちょーだい! 雪ねぇ~



皆が雪の名を呼んでいる。

いつか見た甘い夢の中で、自分に向かって微笑む大好きな人達が。

 

  

しかし今彼等が囲んでいるのは、自分ではなかった。

赤山雪が居るはずの場所には、清水香織が居るのだった。

「な‥何なの‥?」



雪は信じられない思いで、目の前の光景を眺めていた。

彼等はここに居る自分には気づかずに、楽しそうに笑いながら行ってしまう。

「?!」



すると雪の足元に、突然誰かが足を引っ掛けて来た。

雪はそれに引っかかり、その場で派手に転んでしまう。



雪は暫く痛さで動けず、その場にうずくまっていた。

這いつくばったような格好で。



するとヒタヒタと、何かが近付いて来る気配がした。

雪が顔を上げると、そこには見知った顔が雪を囲むようにして立っている。



その人物とは柳瀬健太と横山翔、そして清水香織であった。

目を丸くする雪を見て、彼等はクックックと可笑しそうに嗤う。



雪はその場から動けなかった。しゃがみ込んだ体勢のまま、顔面蒼白する。

エコーがかかったような三人の不気味な笑い声が、暗い空間に響き渡った。



そして次の瞬間、ギョッとするようなことが起こった。手のひらが透けて、向こう側が見えているのだ。

暗い空間に、ゆっくりと溶けるようにして自分が消えて行く。



すると向こうの方から、もう一つこちらに近付いて来る影が見えた。

ヒタヒタと静かに、その長い足はゆっくりとこちらに向かって来る。



既に半身が消えかかっていた。

顔を上げた雪は、近付いて来たその足の主を見て目を見開く。



彼は消えて行く雪を眺めながら、平然とした表情で彼女と同じ目線に合わせ、背を屈めた。

雪は消え入りそうな声で、彼を呼ぶ。

「先輩‥」



徐々に暗転していく視界の中で、最後に見たものは彼の笑みだった。

まるで裂けたように上がる口角。あの奇妙な笑みー‥。



全ては彼の思惑の中、奪われていく自分、消え行く存在、去って行く大好きな人達。

雪の潜在意識の中に、昼間目にした彼が居る‥。










バッ、と雪は顔を上げた。

目の前に広がる光景は、見慣れた地下鉄のそれだった。



いきなり大きな仕草と共に起きた雪に、周りの人達は訝しげな視線を送る。

雪は決まり悪さを感じながら、一人頭を掻いた。



背中に、嫌な汗をかいていた。

血の気が引くような、あの身体が消えて行く時の感覚が、未だ残っているような気がする。

何これ‥?超変な夢‥。



ドクドクと、鼓動が早鐘を打っている。血液が指先まで流れているのを感じる。

しかし先ほど味わった自分の身体が消えて行くあの恐ろしさは、あの嫌な感覚は、

到底拭い去ることは出来なさそうだった‥。


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<彼女の潜在意識>でした。

昼間目にした先輩のあの姿‥。



あの時の不信感が、潜在意識として夢の中に出てきちゃったんでしょうね‥。

キス以降、表面的には彼に対して恋心と信頼感を感じていた雪ちゃんですが、根本にある不信感が拭い去れてないんです。

だからこその、最後のこのラスボス感‥。



彼氏なのに‥orz 



次回は<落ち着ける場所>です。

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