ドドン!
登場したのはおもちゃの銃だ。雪はそれを握りながら、目を閉じてこう語る。
「ストレスとは‥私はストレス過多なんでよく分かるんですが、
その都度解消しなければならないのです‥!」
雪が言うと、何だか凄い説得力である。
二人が前にしているのは、シューティングゲームだった。
”地獄からやって来たアウトローウサギ”‥。それがこのゲームのタイトルだ。
雪は戦闘を前にニヤリと笑ってウサギを見据える。
「まぁ‥普段それを実践するのは大変ですがね‥。
思い立ったが吉日、今日は一緒にストレス解消しましょ!二十分間燃え上がりますよ~~!」
限られた時間内で、彼と自分が抱えたストレスを手っ取り早く解消出来る方法‥。
その条件で雪が思いついたのが、このシューティングゲームだった。
雪と淳は彼の車を走らせて、このゲームセンターまでやって来たのだ。
「これやるの、本当に久しぶりです!」
明るくそう口にする雪を前に、淳は少し意味深な表情だ。
以前自分と一緒にやったじゃないか、という感想か、彼としては静かに彼女と過ごしたかったのに、といった気持ちなのか、
ストレス発散というその発想がそもそも珍しいのか‥。
兎にも角にも、ゲームはスタートした。
二人はウサギに照準を合わせ、バッタバッタと敵を倒していく。
流れるような動作で射撃する彼と、アタフタしつつもそれをサポートする彼女。
以前一度やった時は淳の独壇場だったが、今回は雪も健闘した。
いつの間にか二人の周りにギャラリーが集まって来た。
最高スコアでどんどんステージをクリアして行く二人を、皆が応援する。
敵をガンガンやつけて行くのは爽快だった。
二人は顔を見合わせ笑い合う。
以前このゲームをしたのはほんの数カ月前だが、遠い昔のような気がした。
彼だけが叩き出したハイスコア、ぎこちなく交わしたハイタッチ。その記憶は、もう随分遠くなった‥。
「うわっ!」
ゲームの得点画面には、Congratulation!と新記録を祝う文字が踊っていた。
雪はピョンピョンと飛び跳ねながら、二位と圧倒的な差をつけてのハイスコアを喜んだ。
淳も笑顔で彼女と喜びを分かち合う。
そしてその記録を持って、雪はカウンターに向かった。そして何かを交渉し始める。
彼女が何をしているのか分からない淳は、その背中を眺めながら不思議そうな表情だ。
やがて交渉が終わった雪は、嬉しそうな顔をして淳の元に戻って来た。
「先輩!」
そして彼女は、淳の前に手を差し出した。二つの小さな物体が揺れる。
「これ!」
差し出されたそれは、何と形容して良いか迷うような、(おそらく)犬のマスコット人形だった。
どこか自分に似たその人形を前に、淳は目を丸くする。
それは図らずもライオン人形を初めて目にした雪と同じ表情だった。
目を丸くして、キョトンとして。
ようやくお返し、とばかりに雪はニヤリと笑う。
「駄々こねて貰って来ちゃいました!おひとつどーぞ!」
カワイイでしょ?と言って雪は人形を差し出した。微妙な表情で彼がそれを受け取る。
雪はちょっと照れながら、そして少し申し訳無さそうに首元に手を当てた。
「先輩がくれた人形、失くしちゃったから‥。せめてこれを‥」
雪がライオン人形を失くした時、淳は「もっと良いものを買ってあげる」と言った。
けれどそんな淳に、彼女は言ったのだった。
「そういうのって、金額が問題じゃないでしょう?」
少しはにかんだように微笑む彼女を前にして、淳はようやく雪があの人形にこだわっていた理由が分かった気がした。
今まで手にしてきたどんな高級品よりも、大事だと思えるその何か。
同じ物を共有するという、その温かさー‥。
そして二人は肩を並べて歩いた。冗談を口にし、肘をつつき合いながら。
「スコアは俺が全部出したけどね?」
「一緒に出したじゃないですか!ったく‥」
彼女が隣に居ることが、いつの間にか当たり前になっていた。
嬉しい気持ちが溢れ出して、淳は自然と笑顔になる。
二人は歩調を合わせながら、肩を並べて共に歩いた。
ずっと一緒に、同じ場所で、二人きりで‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<遠くなった記憶>でした。
ウサギのシューティングゲーム、淳に似た人形のプレゼント‥。
まるで昔の二人をなぞるかのようなエピソードが並びます。
「あのぎこちなかった二人が、今はこんなに距離が縮まったんだよ」ということを意味する描写ですかね。
(根本的なところの距離、という話は置いておいて)
笑い合う二人が微笑ましいです^^
次回は<ずっと一緒に>です。
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登場したのはおもちゃの銃だ。雪はそれを握りながら、目を閉じてこう語る。
「ストレスとは‥私はストレス過多なんでよく分かるんですが、
その都度解消しなければならないのです‥!」
雪が言うと、何だか凄い説得力である。
二人が前にしているのは、シューティングゲームだった。
”地獄からやって来たアウトローウサギ”‥。それがこのゲームのタイトルだ。
雪は戦闘を前にニヤリと笑ってウサギを見据える。
「まぁ‥普段それを実践するのは大変ですがね‥。
思い立ったが吉日、今日は一緒にストレス解消しましょ!二十分間燃え上がりますよ~~!」
限られた時間内で、彼と自分が抱えたストレスを手っ取り早く解消出来る方法‥。
その条件で雪が思いついたのが、このシューティングゲームだった。
雪と淳は彼の車を走らせて、このゲームセンターまでやって来たのだ。
「これやるの、本当に久しぶりです!」
明るくそう口にする雪を前に、淳は少し意味深な表情だ。
以前自分と一緒にやったじゃないか、という感想か、彼としては静かに彼女と過ごしたかったのに、といった気持ちなのか、
ストレス発散というその発想がそもそも珍しいのか‥。
兎にも角にも、ゲームはスタートした。
二人はウサギに照準を合わせ、バッタバッタと敵を倒していく。
流れるような動作で射撃する彼と、アタフタしつつもそれをサポートする彼女。
以前一度やった時は淳の独壇場だったが、今回は雪も健闘した。
いつの間にか二人の周りにギャラリーが集まって来た。
最高スコアでどんどんステージをクリアして行く二人を、皆が応援する。
敵をガンガンやつけて行くのは爽快だった。
二人は顔を見合わせ笑い合う。
以前このゲームをしたのはほんの数カ月前だが、遠い昔のような気がした。
彼だけが叩き出したハイスコア、ぎこちなく交わしたハイタッチ。その記憶は、もう随分遠くなった‥。
「うわっ!」
ゲームの得点画面には、Congratulation!と新記録を祝う文字が踊っていた。
雪はピョンピョンと飛び跳ねながら、二位と圧倒的な差をつけてのハイスコアを喜んだ。
淳も笑顔で彼女と喜びを分かち合う。
そしてその記録を持って、雪はカウンターに向かった。そして何かを交渉し始める。
彼女が何をしているのか分からない淳は、その背中を眺めながら不思議そうな表情だ。
やがて交渉が終わった雪は、嬉しそうな顔をして淳の元に戻って来た。
「先輩!」
そして彼女は、淳の前に手を差し出した。二つの小さな物体が揺れる。
「これ!」
差し出されたそれは、何と形容して良いか迷うような、(おそらく)犬のマスコット人形だった。
どこか自分に似たその人形を前に、淳は目を丸くする。
それは図らずもライオン人形を初めて目にした雪と同じ表情だった。
目を丸くして、キョトンとして。
ようやくお返し、とばかりに雪はニヤリと笑う。
「駄々こねて貰って来ちゃいました!おひとつどーぞ!」
カワイイでしょ?と言って雪は人形を差し出した。微妙な表情で彼がそれを受け取る。
雪はちょっと照れながら、そして少し申し訳無さそうに首元に手を当てた。
「先輩がくれた人形、失くしちゃったから‥。せめてこれを‥」
雪がライオン人形を失くした時、淳は「もっと良いものを買ってあげる」と言った。
けれどそんな淳に、彼女は言ったのだった。
「そういうのって、金額が問題じゃないでしょう?」
少しはにかんだように微笑む彼女を前にして、淳はようやく雪があの人形にこだわっていた理由が分かった気がした。
今まで手にしてきたどんな高級品よりも、大事だと思えるその何か。
同じ物を共有するという、その温かさー‥。
そして二人は肩を並べて歩いた。冗談を口にし、肘をつつき合いながら。
「スコアは俺が全部出したけどね?」
「一緒に出したじゃないですか!ったく‥」
彼女が隣に居ることが、いつの間にか当たり前になっていた。
嬉しい気持ちが溢れ出して、淳は自然と笑顔になる。
二人は歩調を合わせながら、肩を並べて共に歩いた。
ずっと一緒に、同じ場所で、二人きりで‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<遠くなった記憶>でした。
ウサギのシューティングゲーム、淳に似た人形のプレゼント‥。
まるで昔の二人をなぞるかのようなエピソードが並びます。
「あのぎこちなかった二人が、今はこんなに距離が縮まったんだよ」ということを意味する描写ですかね。
(根本的なところの距離、という話は置いておいて)
笑い合う二人が微笑ましいです^^
次回は<ずっと一緒に>です。
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