1981年に出版された本ですが、閉そく感を感じているいまの社会を描写しているようで、まったく古さを感じません。
ご自身あとがきにかかれているように「オムニバス」形式で、ローマ、ヴェネツィア、アメリカを題材、三国の文明の衰亡が書かれています。
同じくあとがきで「衰亡の現象を過去の歴史に当たって解明しようという大それた気もないし、現在の工業文明に衰亡の兆が見られることについて警鐘を発しようという強い目的意識もない。」と言われており、また、「漫然とした知的好奇心であり・・」とも言われております。
純粋な知的好奇心で書かれたものだから、予見もなく思い入れもなく、当然著者の考えを押し付けるところもありません。
それゆえ読む人が自由に発想を拡げられます。
専門性はもちろんですが、著者の教養の深さを感じます。
衰亡をテーマにしながら、気品を感じる著作だと思います。
ということで、著者の他の作品もお取り寄せ中です。