最近、歴史や各国の情勢について書かれた本を読むべしと思っていて、中国を知りたいと思いこの本を読んでみました。
中国に行ったことがなく、中国に関する知識はテレビやニュースで聞く程度ですので、書かれていることがあまりにもひど過ぎて実感がわかなかったというのが正直な感想です。
隣の国なのに何も知らない。
歴史や世界情勢をもっともっと知りたい、知らなければいけないとあらためて感じました。
中国については、かつて「ワイルド・スワン」や「毛沢東の私生活」を読み、偉大と言われた一人の指導者の誤った政策により、大国が取り返しのつかない状況になってしまったこと、そしてその人物が言われるほど清廉な人物ではないこと(その内容がどれくらい真実かはわかりませんが)に衝撃を受けました。
ですからこの本を読んだ時に、ワイルド・スワンを初めて読んだ時ほどの驚きはなかったのですが、この本で描かれているのが2004年辺りで、ほぼ現在の中国(しかし、5年で大きく変わっているかもしれませんね)だとすれば、日本で一般に考えている中国の姿とあまりにも異なっており、隣の国なのに日本に情報が伝わっていない、あるいは隣の国をきちんと知ろうとしていないと思います。
一党独裁の共産主義国家ですから、道を間違えれば、北朝鮮と同程度あるいはそれ以上の脅威の国になる可能性だってあります。
しかし、本に書かれていることのすべてが納得できることばかりではありませんでした。
上海総領事であった著者は中国の現実を日本人の中で正確に把握している人の一人だったかもしれませんが、この本では中国の「陽」の部分が語られておらず、中国すべてを描いていないのではないかとも感じました。
また末期がんの闘病生活の中で書かれており、感傷的あるいは義憤に駆られて書かれた可能性もあり、では生きてこれから中国と付き合うものがどうすべきかについて必ずしも現実的な答えが用意されてはいませんでした。
アフリカのことを書いた「ルポ資源大国アフリカ」を最近読んだばかりでしたので、中国が特異ではなく逆に日本の方が異常に恵まれた特異な国ではないかと感じました。
しかし、やはり最初に書いたとおり、もっと過去や現在の世界情勢を知らないといけないと思います。
激しい差別の中で、貧困の中で働くこともできず、働いても報われない人々は何を考えているのでしょうか。
同じ人間でありながら生まれた場所や身分が違うだけでまったく異なる人生を歩む矛盾をはっきりと意識した人が増えてきた時に、そこで感じる怒りがどこに向かうのか、とても怖いとも思います。