猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

いつか来る道、帰る道。【5月5日後編】名もなき者こそ。<旧小机領三十三所観音霊場>三十~三十二番

2008年05月25日 19時00分01秒 | 旧小机領三十三所観音霊場巡り

さて。

三十三所観音霊場めぐりも、いよいよ終盤を迎え。

最後の山場ともいえる、長距離移動をこの日もしたわけですが.....

 

あれ?そこでシャコタンになって逃げる猫は....!?
珍しくふられたねぇ、ゴンザ(笑)
さては雨でも降るかな?

 

巡礼路はここで再び、我が家へと近づいてゆき、
その旅は、見慣れた道からヒョイと路地に入って目的のお寺を探すスタイルへと
変わってまいりました。

 

三十番【長泉寺】<開創年代不明>
町の中央に山があったことから、この地は中山と名付けられたということで、
その山腹にかつて堂宇を建立したのがこのお寺の始まりとか。
開基者は信心深い武将だった斉藤平兵衛右近という人。
戦乱の世を厭い、弓矢を捨て、この地で農耕を始めた右近さんですが、
今もこのお寺は農耕崇拝の仏様として信仰されているそうです。

 

自分達の暮らす地域にお寺が多いのは知っていても、
それがなぜなのか。
この子年観音の三十三所めぐりをするまで知らなかった我々ですが、
人間というのは、往々にして、
近くにあるものほど、注意して見ない傾向にあるのかもしれません。

 

そんな、戦乱の世を厭うた右近さんのお寺にあるのは、
近在から出征した兵士達を慰霊するための砲身。
弓を捨てた右近さんと、出征し帰らなかった兵士たちは、
今、どんな思いでこの砲身を見ているのでしょうか。

 

けれど、遠くへ旅行へ行って、大きなお寺を見るまでもなく、
私たちの暮らしの中には、小さな小さな名もなきお寺が密着していて.....

それは、特に信心深いわけでもない人間が大多数を占めながらも、
それでも寺社がそこにあり続ける私たちの国の、
不思議と美しさをあらわしているのかもしれません。

 

御朱印をいただいたあとは、こんなオリジナルのお煎餅もいただき、
再び出発!

 

.....それは、魂の帰る場所。

静かな水を見つめ、深い緑に心安らぎ、陽だまりと日陰に美しさを見る。

 

やってきたのは

三十一番【寶塔院】<開創年代不明>(約500年前)
新興住宅地の中にあるこのお寺。
弘法大師ゆかりの縁起を持ち、
伝説では承和年間(840年頃)に寶塔が建立されたとも言われているとか。

 

先ほど私は『名もなきお寺』と言いましたが、
それはメジャーな観光地図上のことで、
全国にはまだまだそんな、立派な名前を持った、
小さなお寺が無数に存在するのでしょう。

 

観音堂の中で御朱印を押して下さるおじさんに勧められ食べた(笑)
この懐かしい味は、黄粉飴と薄荷糖、生姜糖。
観音堂を出て、正式にお茶を勧めていただいた際に(笑)うかがうと、
これらは檀家さんの奥さんが手作りされたものだそうで、
「写真を撮らせて下さい」とお願いすると、
「ちょっと待って!新しいのを入れるから」と、中身を足してくださいました♪

 

二十三番のお寺でお話をうかがったとき、その方は言いました。

「300年も前にスポンサー制度があって、そうしてお経を作ったのもすごいけれど、
 今では再現できない技術もすごいけれど......
 300年それを守り続けた信者、檀家の方々もすごい。
 だからなおさらこのお経はありがたいのだ」と。

 

「あっ、雨降ってきた~!」
「じゃあ三十二番さんの前に、ケンタッキーでちゃあこのお土産を買って急ごう!」

 

お経の巻末にあるのは、スポンサーの名前だけでも、
そんな名もなき人々が、力を合わせて築き上げたのが『今』ならば.....

『名もなき者こそ』

 

自転車のハンドルにケンタッキーの袋をくくりつけたまま(笑)やってきたのは
三十二番【東観寺】<天平年中>(729~748年)
幾たびかの戦乱で荒廃、再興を繰り返したこちらは、室町時代に中興されたとか。
焼失した部分も多いものの、観音堂に祀られている観音様は鎌倉時代の作。
そういえばいくつかのお寺でも、長い歴史の中での焼失のお話をうかがいましたが、
どちらでもそのときのご住職がご本尊様を抱いて逃げたので、仏様は無事だった、
ということが多いようです。

 

お経を守る人がいて、
それを信じる人がいて。

信じるか信じないかはわからなくとも、感じる者がいて。

だからこそ成り立つお遍路の旅。

 

すごいなぁ。

 

中には、名もなき花とか、名もなき川とかいう言い方を好まない人もいるけれど、
私は好きです。

あなたも私も今は名前を持っているけれど、生まれたときには何も持たず、
いつかは、『名もなき人々』に数えられるのだから。

 

前にも書きましたが、我々は翌日。
三十三番まで行ったあと、またこのお寺に戻ってくることになります。
ここは結願の印を下さった、思い出深いお寺。

 

あるがままであることは、ときに素敵だから。

それでも私は私、だから.....

......いよいよ、最後のお寺に続きます。

 

王禅寺さんのワニさんが(←だからワニじゃなくって龍だって!)
「ま"~」だったとすると、この【東観寺】さんの鯉(?)さんは「ポェ~」(笑)
ホント、罰当たりですみません。

 

三十番 【長泉寺】 横浜市緑区中山町732
三十一番 【寶塔院】 横浜市緑区白山2-35-12
三十二番 【東観寺】 横浜市緑区東本郷1-21-1