本書は著者の「美と深層心理学」の続編としても位置付けられる一冊です。
「美と深層心理学」では、クライアントとともに表面に留まり続けて、
表面と内側、外側を生成していくことについて書かれていましたが、
本書では著者が就職した先のデイケアで、不用意に相手の内面に関わって状態を
悪化させてしまうという事がまず最初に描かれています。
大学の相談室や街の診療所でカウンセリングなどをしている場合、
結構起きることなのでしょう。
様々な相談室やカウンセリングセンターなどに勤務する心理士などとは、
全く違う困難な成育歴を持った人はかなりいるでしょうが、大学院を出て
心理士などになった人には、そのような人のことは想像もできないのでしょう。
入院施設の有る病院に勤務している医師や心理士ならば、不用意に関わられたことにより
不安定になり、入院した人もかなり見ているのでしょう。
ほとんどの医師や心理士にとって想像できる相談内容というと、学校のことや
仕事のことなどでしょうが、そもそも学校どころではない家庭に育った人のことは
想像できないでしょう。
その事を考えると、最初に著者が不用意に関わった事で相手が不安定になるというケースを
持ってきたことは、構成上うまくやっていると思いました。
本書はコミック版も出ているので、気軽に読みたい方はそちらもいいと思います。