臨床心理士で精神科医の山中康裕氏が推薦文を書いたものということで、
早速読んでみました。
著者は山中氏と若い頃に患者と医師として出会い、その後に結婚した奥様が現在なら複雑性PTSDとされる、
様々なトラウマを抱えた方だったので、その話の聞き手、随伴者として長年を過ごされ、
奥様が伝えたいことを文字にしたものを、一冊の本にしたので、推薦文を書いてくれないかと、
約50年ぶりに手紙で連絡をとったとのことです。
内容ですが、山中氏からみて「精神医学的に誤りは無い」とのことです。
【あらすじ】
書かれている内容は、奥様の良子さん(仮名)が昭和32年(1957年)生まれなので、昭和30年代から40年代の
今より物質的に貧しく不便な時代ですが、親などが働いていれば、
それほど食事に困るような時代ではなかったと思いますが、
良子さんはずっと両親からはまともな食事や衣服も与えられず、常に空腹で、
さらに北海道に転校後には同級生数人からは激しい暴力の対象とされます。
そのことを教師に伝えても、教師は何もしません。
しかしながら、本人とは関係のない赤の他人の大人が様々なところでちょっとした援助をするので、
なんとか生き延びてゆくという内容です。
【感想】
特に関係のない大人が、時々何か食べ物をくれたり、ちょっとしたさまざまな援助をすることで、
なんとか良子さんは生き延びてゆきますので、赤の他人でもできる範囲で親切にすることの
大切さが分かる内容です。
最近はコロナ禍で、心の臨床以前にソーシャルワーク的支援が必要との意見が大きいですが、
この本の中では、公的機関は特に何もせず、不登校児に対応するところも、
学校に行かないあなたが悪い、と良子さんを責めるのみで、背景に何があるかを知ろうともしません。
当時はトラウマやPTSDに関して知っている医師も心理士も居なかったでしょうから、
治療的に関われた専門家は居なかったのでしょう。
ソーシャルワーク的支援の大切さが解る一冊です。