まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

『男のおばあさん』

2017-01-10 08:56:20 | 

文庫本の帯に「おばあさんのように生きると楽です」と書いてあるのが気に入らないけれど。
なんだ!それ!と突っ込んでいます。おばあさんだって楽じゃないぞ。



晩年に永さんが患ったパーキンソン病及びそれにまつわるもろもろのお話で。
「ラジオを聴いているつもりで読んでいただきたい」と前書きにあるけれど、
ほんと永さんの語り口調が読んでいる頭の中に蘇ってくるようなそんな本です。
でも、ごめんなさい、一度もラジオは聞いたことがありません。

終始一貫して楽しく年を取る方法といおうか年を取るってどうなることか、パーキンソン病を通して
語ってくれてます。

自分の年に右往左往していることに「当たり前だよ」と言ってくれているような気がして少し気が楽になります。

年を取るのは初めてです。
年を取った自覚っていうか、それが、僕、よく分からないんです。年相応の生き方が。
初めて年を取っているから、初めて経験することが多いから。

病気になってみると、周りがどう対応するかに気を遣い始めると、それに気疲れしてしまう。
気を遣いかえすことにくたびれちゃうっていう・・・
これは家族の中でもあると思うんです。

葉書がたくさん机の上にある、そうです。
病気のせいで呂律が回らなくなってきて、聞き苦しいとのお小言がだんだん増えてきたそうです。

「やめなさい」っていうお便りも多いです。
「酷かもしれませんけれども、聴いていてつらい。やめたらどうですか」
ズキーンと来るんです、これが。
「永さんに『番組をおやめなさい』とは、誰も言えません。自分で決めなさい」

いくら永さんでもそりゃあズキーンとくるでしょうね、切ない、病気のせいなのですから、調子がいい時もあるのですから。
それでもラジオのお仕事は休まず続けられた。

リクエストが多かった笑える話。
「もしも一人だけ満員のお座敷列車に乗り合わせたら」
私も読みながらおかしくてくすくす笑いました。あの永さんの声が文章から聞こえてくるのですから。


「生きていてよかった」「年をとって、重ねてきて、よかった」っていうことは、
一応、「生きていてよかった」ということにつながります。
毎朝ね、目が覚めたときに、「ああ生きてる。今日が始まる」っていう、それだけでいい。
とてつもないことを期待しなくても、
「生きてる、生まれてきてよかった」っていうことのつみかさねですね。

永さん、それが歳だけは馬に喰わせるほどとっているけれど未熟な私にとってはとっても難しいことなのです。

後書きは2013年5月となっています。
2016年7月7日自宅で死去 83歳でした。大往生だったと思いたいです。

コメント
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