徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

少女哀史と唄

2013-03-18 19:46:35 | 音楽芸能
 父が書き遺した備忘録の中に、天草のからゆきさんに関するものがあることは、以前このブログに書いた。
 からゆき(唐行)さんとは、江戸時代後期から昭和の前期頃まで、東アジアや東南アジアに渡って、娼婦として働いた日本人女性のことで、熊本の天草や長崎の島原出身の女性が多く、貧困にあえぐ農村や漁村の娘たちだった。
 父がその実態を目の当たりにしたのは昭和11年、天草の上村尋常高等小学校に勤務している頃である。義憤に駆られて校長や父兄たちに「人身売買」を非難したり、父が仮住まいする宿へやってくる女衒(ぜげん、人買い)たちとの攻防が綴られている。
 今では全国的に知られている「島原の子守唄」は島原地方で歌い継がれていた子守唄をもとに、「まぼろしの邪馬台国」で知られる宮崎康平が戦後作ったものだが、この唄も実は「からゆきさん」がモチーフとなっている。

▼島原の子守唄
♪おどみゃ 島原の おどみゃ 島原の
 梨の木 育ちよ
 何の なしやら 何の なしやら
 色気なしばよ しょうかいな
 はよ寝ろ 泣かんで おろろんばい
 鬼の池ん久助どんの 連れんこらるばい
  ※鬼の池の久助というのは実在した女衒

 また、「ザ・わらべ」の演目の一つにもなっている「愛の南十字星」は、「からゆきさん」を題材としたラジオドラマをモチーフとして長唄三味線の今藤珠美さんが創作したもので、三味線や筝に加え二胡の響きが、遠い異国で南十字星に明日への希望を託す少女たちの哀しい心情を表現している。

▼愛の南十字星

 原作:木村祐章「ラジオドラマ『ぬれわらじ』より」 作曲:今藤珠美 作調:藤舎千穂