徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

黒澤明 ジョン・フォード シェークスピア

2014-05-09 22:54:17 | 映画
 黒澤明監督がジョン・フォード監督を敬愛してやまなかったというのは有名な話だが、そのフォード作品の中でも「荒野の決闘」が一番好きだったというのもよく知られている。名作「七人の侍」を作った時、「ビフテキの上に鰻の蒲焼を乗せ、その上にカレーをぶっかけたような映画を作りたかった」と話していた黒澤監督が、なぜフォード西部劇の中でも最も枯れた味わいの「荒野の決闘」が好きなんだろうか。なぜ、「駅馬車」や「捜索者」じゃないのだろうかと不思議でしかたなかった。
 しかし、最近その理由がわかったような気がする。「荒野の決闘」は一種の復讐劇で、劇中、シェークスピアの「ハムレット」のセリフも出てくるように、フォード監督はこの作品を作るにあたってシェークスピアを意識していたことは間違いない。一方、黒澤監督は「マクベス」を下敷きに「蜘蛛巣城」を、さらに「リア王」を下敷きに「乱」を作ったようにシェークスピアを好んで題材に選んでいる。おそらくフォード監督の「荒野の決闘」の中に、シェークスピアを共通項とする映像表現者としての同じ匂いを感じたのではないだろうか。そんな気がするのである。

「荒野の決闘」の中の「ハムレット」のセリフの場面