徒然なか話

誰も聞いてくれないおやじのしょうもない話

秋の詩歌

2023-10-18 21:41:18 | 日本文化
 散歩コースの周辺も日に日に秋色が濃くなっていくようです。歩きながら俳句の一つも詠みたいのですが一向に出てくる気配がないので、帰宅してから熊本ゆかりの二人の詩歌をあらためて読み直してみました。
 まずは平安時代の閨秀歌人・檜垣嫗が詠んだと伝えられる秋の歌を二首。

 「秋風の こころやつらき 花薄 吹きくる方を まづそむくらむ」
 (秋風の心は冷たいのか、ススキの穂が、秋風の吹いてくる方に、最初に背をむけるだろう)


 「鹿の音は いくらばかりの 紅ぞ ふりいづるごとに やまの染むらむ」
 (鹿の鳴く声は、いくらばかりかの紅色をふりだして、野山が赤く染まっていくのだろう)


 檜垣媼の最晩年は岩戸観音に近い山下庵で暮らしたと伝えられており、岩戸山麓の里山は秋になるとそれはそれは美しく彩られたことでしょう。時には鹿の音も聞こえて来たと思われます。


 次は夏目漱石の俳句二句。

「傘(からかさ)を菊にさしたり新屋敷」

 明治30年暮れ、正岡子規に送った俳句の中の一句。この時、漱石が住んでいた熊本三番目の新屋敷(大江村)の家は、明午橋の少し下流、現在の白川小学校の裏手辺り。どこに植えられていた菊かわからないが、隣接する「傘丁」と掛けているのかもしれない。



 「鼓うつや能楽堂の秋の水」

 漱石は水前寺成趣園を度々訪れ句を詠んでいる。ここには出水神社能楽堂があり、薪能などが行われる日には観能を楽しんでいたのかもしれない。