OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

スルーされない技術 (石田 章洋)

2014-08-25 21:51:57 | 本と雑誌

The_isleworth_mona_lisa  レビュープラスというブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。

 著者の石田章洋氏は放送作家。石田氏の著作は、先の「企画は、ひと言。」に続いて2作目になります。

 「スルーされない技術」というタイトルですが、これは、「自分の言いたいことを伝える技術」という意味でもあります。その点では、本書で紹介されているアドバイスは、会話や会議などに止まらずプレゼンテーションを行う場合にも大いに参考になります。

 たとえば、代表的なものとしてはこんなヒントがあります。

(p65より引用) プレゼンやスピーチの最高の“つかみ”は、課題になっていることの要点を最初にズバリといってしまうことです。

 これは誰もが指摘するアドバイスですが、実際のプレゼンの場に立つと、かなり強烈に意識しておかないとなかなか実行できなものです。
 つい、より分かってもらおうという気持ちが前に出て、背景や理由めいたものを付け加えたくなってしまいます。結果、メッセージの「力」が鈍ってしまうのです。

 その他にも、聞き手により関心を抱かせる方法として“フック”をかけ続けるという話し方も参考になります。
 これは、疑問を提示してはそれに答えるといったあたかも「一人で会話を進めていく」ようなやり方です。

(p132より引用) 受け手が「なんで?」「どういうこと?」と引っかかった次の瞬間に、その疑問に答える。この絶妙なやりとりを繰り返して対話を進めていくうちに、「本当に伝えたいこと」がネジクギのようにしっかり相手に食い込んでいき、読者や視聴者と心が通い合った深いコミュニケーションになっていくのです。

 聞き手の頭のなかに「?」を浮かばせる、その「?」によって聞き手は自ら次の話を聞きたいのと思いを抱くのです。言われたことより知りたいことの方が圧倒的に記憶に残りますね。

 本書では、こういった“伝える技術”を、著者自らの経験にもとづく豊富な実例を交えて次々と紹介していきます。
 それらの数多くのTipsの中には、私もそこそこできているなと思うものもありましたが、私自身「圧倒的に欠けている要素」もありました。それは、私の表現力の貧弱さです。

(p115より引用) 映像や音声、さらには香りや味、肌触りなどをありありとイメージできるような描写を織り交ぜながら伝えると、いっそう相手の心に深く届き、スルーされません。・・・
 ふだんから、単純な言葉で表現するのではなく、自分なりの感性で映像が浮かぶような言葉を使って“描写”するようにしてみましょう。

 私の場合、話をするにしても文章を著すにしても修飾語の語彙に乏しく、ワンパターンな言い方しかできていません。情けないほどに表現はプアーです。
 直喩・隠喩を駆使し“五感”で感じさせるような豊かな表現は、私にとっては、かなり訓練しないと難しそうですね。もっと意識的にリッチなコミュニケーションシーンに立ち会う努力をしなければ・・・。小説とか、映画とか・・・。
 

スルーされない技術 スルーされない技術
価格:¥ 1,404(税込)
発売日:2014-07-09


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正しいブスのほめ方 (トキオ・ナレッジ)

2014-08-19 23:52:48 | 本と雑誌

Tatekawa_simbol  会社の同僚の方にお借りした本の2冊目です。

 1冊目は「正しい太鼓のもち方 上司を転がす35の社交辞令」というタイトルだったのですが、こちらの方が先に出版されていたようです。

 基本形は、「正しい○○のほめ方」。
 ○○は標題のものを含めて「毒舌家」「元ヤン」「超体育会系」「イケメン」等々、35種類。
 この本でも「○○を知る」の項で、○○の特徴を分析把握し、それをもとに具体的な“ほめ方”をアドバイスしています。
 正直なところ、個々のケースについての対処法の納得感は、「正しい太鼓のもち方」の方が優っているように思いましたが、所々ではなかなか興味深い指摘もありました。

 たとえば、「オシャレ番長」をテーマした章。
 並の「オシャレ」な人は、流行を追いかけるのに一生懸命ですから、「世の中のトレンド」と同じでありたいというメンタリティが根底にあります。しかし、「オシャレ番長」ともなると、その姿勢の原点が根本的に異なります。

 「WARNING! 1」にはこう書かれています。

(p121より引用) 一般的な感覚で見ない
 オシャレバカと思われるほどの上級者たちが求めるのは、実は「オシャレ」以上に「個性」だったりします。・・・

 こういった「本質」をピンポイントで突いた指摘は気持ちいいですね。
 そして続いて、その本質を活かす方法として、「ONE MORE CHOICE」の項では、こうアドバイスしています。

(p121より引用) 彼らのモットーのひとつ、「逆に」「あえて」は、独自のアイデアを生みたい時に欠かせない考え方です。・・・企画の相談なんかすると思わぬヒントが出るかもしれません。

 さて、本書、タイトルはあまり気持ちのいい響きではありませんが、サブタイトルは「「また会いたい」と思わせる35の社交辞令」です。

 先入観や偏見を持たず、その人の本質を理解して「個性を褒める」。
 “褒める”ということは、相手に対し「あなたのことを気にしているよ」「あなたを理解しているよ」という自分を示し、それを「言葉」に出すことによって、相手にいい気持ちになってもらう行動です。
 そういう姿勢を極く自然に持ち続けることができれば、「また会いたい」と思われるはずですね。
 

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価格:¥ 1,008(税込)
発売日:2013-01-18


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正しい太鼓のもち方 上司を転がす35の社交辞令 (トキオ・ナレッジ)

2014-08-14 08:26:42 | 本と雑誌

Taiko  会社の同僚の方に2冊をお借りしたのですが、そのうち1冊目です。

 “太鼓持ち”=「幇間」は、立派な芸人です。
 落語のなかでも「愛宕山」や「たいこ腹」にも登場し、三代目桂米朝師匠は噺のマクラで、「幇間ほど難しい芸はない」と語っています。刻々変化する主人の“気分”や場の“空気”を読み、それに瞬時に対応する、それもちょっと気の利いた台詞や仕草で・・・、これは並大抵の器量の人間でできることではありません。

 本書は、会社の上司を「主人」と捉え、様々なタイプの主人ごとに35種類の「太鼓の持ち方」を指南した内容です。それも持つべきシチュエーションを指定し、そこでの叩き方を具体的な「台詞」という形で示しているので、極めて実践的?です。

 いろいろな点で興味深い内容の本ですが、特に私がなかなか面白いなと感じた点を2・3、ご紹介します。

 まずは、「基本フレーズ(正しい太鼓の持ち方)」に続いて紹介している「WARNING!」の解説です。
 基本形をちょっと変化させたものでも、結果としての効果が大きく異なるということを、その微妙なニュアンスの違いを指摘することで説明しています。このあたりの繊細な?感性はなかなかです。

(p27より引用) WARNING1 「落差がすごいですよね?」
ギャップを日本語で言うと「落差」なのですが、この言葉だとどうしても「落ちている」感が出てしまいます。同じ意味でも使う言葉で印象が変わってしまうので、ここは「ギャップ」をデフォルトにしておきましょう。

 もうひとつは、太鼓を叩く対象である「上司の類型化」です。
 マニュアル上司、無計画上司、ワンマン上司、七光り上司・・・、それぞれごとに、どのタイプかを見分けるポイント、そのタイプごとの対処法を説明しています。
 たとえば「空気を読めない上司」の対処法。

(p126より引用) 対処法
・絶対に伝えなければならないポイントがある場合は、口で説明するだけでなく紙にまとめたものを渡す。
・自分から発言させるのではなく、ほどよい感覚であなたから質問するなど、会話の主導権を握らせない。
「直らないもの」ときっぱり割り切って対応する。

 最後のアドバイスは秀逸ですね。
 こういった対処法の適否についてはいろいろ異論があるかもしれませんが、対象を特定し、その対象ごとに適した対応をとるというプロセスは、とてもロジカルで体系的です。内容はともかく、課題解決の方法論としてはしっかりした骨格をもった本だと言えるでしょう。(ちょっと、ヨイショしてみました・・・)

 そして、最後は、タイトルにもある「上司を転がす」という気概です。
 上司を自らを取り巻く「職場環境」として位置づけつつも、それに受け身になるのではなく、自らの能動的なアクションの「対象」として捉えています。そして、「太鼓を持つ」という具体的行動を肯定・推奨しているのです。その方法の稚拙さや叩き方の好悪はともかく、自分の行動で現状を改善しよう、課題を解決しようとするこの合目的的姿勢は大事ですね。

 とはいえ、このマニュアルどおりのことを私が実践するかといえば、ちょっとできませんねぇ。まずは、この歳になると、現実的に「太鼓を持つ対象」の方がほとんど見当たらないというのが最大の要因です。
 私に必要なのは・・・、「正しい太鼓のもち方 同僚に阿る35の社交辞令」でしょうか・・・。
 

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ムーミン谷の名言集 (トーベ・ヤンソン)

2014-08-09 09:12:37 | 本と雑誌

Tove_jansson_1956  ムーミンのアニメは観たことはないのですが、あの柔らかな独特の雰囲気は気になっていました。そんな関心から手に取ってみた本です。

 内容は、ムーミンの小説・コミック・絵本などから拾い上げた「フレーズ集」です。

 ムーミンやその仲間たちのキャラクターをよく知っている人であれば、もっといろいろな味わい方があるのでしょうが、私の場合はそういった予備知識がほとんどないので、読んでみて ”ちょっと気になったフレーズ” を以下に書き留めてみます。

 まずは、ムーミンの言葉から2つ。

(p15より引用) 霧の夜明けでした。みんなは、庭へ駆けだしていきました。八月の、ステキな一日を約束するように、東の空に、バラ色の光がさしはじめていました。
 朝日がのぼるのです。新しい門が、開かれます。すばらしい可能性への、扉です。なんだって、やってのけられる新しい一日が、待ってくれています。そう、きみたち、ひとりひとりが、気づきさえしたら!

 素直な明るさがいいですね。スパイスの効いた最後のフレーズも印象的です。
 そして、もうひとつは、ほんわりと気持ちが和む風景です。

(p36より引用) ひとりぼっちがさびしくて、ムーミントロールは、家中の時計のネジを巻いておいたのです。時間は、わからないので、いろんなふうに合わせておきました。
(うん、これできっと、ひとつぐらいは、合ってるさ)

 「ひとつぐらいは、合ってるさ」、ちょっと考えただけで全く役に立たないことに気づくのですが、こういった「ゆるいノリ」にはつい微笑んでしまいます。

 つづいて登場するのはムーミンパパ

(p17より引用) 「この世にも、絶対にたしかなことが、いくつかあるんだよ。たとえば、海を流れている潮流。四季のうつりかわり。朝になれば太陽がのぼること。それと、灯台には、あかりがともっていることだ。

 そして、

(p38より引用) (きっと嵐って、朝日が、そのあとにのぼってくるためだけに、あるんじゃないかなあ)

 ムーミンたちに「希望」を与える優しさに溢れた台詞ですね。

 さて、ムーミン一家の仲間の代表といえば、やはりスナフキン。ちょっとニヒルで大人びたキャラクタが人気です。

(p140より引用) 「物は、自分の物にしたくなったとたんに、あらゆる面倒が、ふりかかってくるものさ。運んだり番をしたり・・・。ぼくは、なんであろうと、見るだけにしている。立ち去る時には、全部、この頭にしまっていくんだ。そのほうが、かばんを、うんうんいいながら運ぶより、ずっと快適だからねぇ・・・」

 束縛されない自然体を愛する、いかにもスナフキンらしい台詞ですね。

 そして、最後に紹介するのは、スナフキンの父親 ヨクサルの言葉です。

(p136より引用) 「どこへ行こうが、ぼくは、かまわないよ。ぼくには、どこもみんな、いいところなんだ

 このあたり、親子のDNAを感じます。

 さて、本書、私のように、ほとんどムーミンを知らない人でも、何となくムーミンとその仲間たちの和やかな姿が浮かんでくるような、ほのぼのとした内容ですね。

 ただ、タイトルの「名言集」というイメージで手に取ると、ちょっとギャップを感じるかもしれません。決して教訓めいた箴言が詰まった本ではありませんから。
 

ムーミン谷の名言集 (講談社文庫) ムーミン谷の名言集 (講談社文庫)
価格:¥ 637(税込)
発売日:2014-04-15


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企画は、ひと言。 (石田 章洋)

2014-08-03 08:36:38 | 本と雑誌

Asahiyama_zoo  レビュープラスというブックレビューサイトから献本されたので読んでみました。

 著者の石田章洋氏は放送作家、主な担当番組としては「世界ふしぎ発見!」「TVチャンピオン」があるとのこと。
 その石田氏が「企画」を通す要諦を明かにします。Key wordは「ひと言」です。

 私も含め多くの人は「ひと言」というと「キャッチコピー」を思い浮かべます。
 たとえば、糸井重里さんの代表作「おいしい生活」。これは1980年代、「西武百貨店」の広告コピーでした。

(p46より引用) 「おいしい生活」は・・・「モノを売る」だけではなく「生活の提案をする」デパートがあっても良いのではないか、という発想のもと「文化の発信者」であることをアピールする企業コンセプトをあらわすものとして生み出されました。

 ただ、こういった「キャッチコピー」は、多くの人々に届けられる最終的な言葉です。この言葉にブラッシュアップされる一歩手前に位置するのが、石田氏の言う「一言」です。

(p47より引用) 「モノを売るデパートから生活を提案するデパートへ」

 これなら、何を意図した企画なのか一目瞭然ですね。
 この「ひと言」には、“5つのS”で表される特徴(強み)があります。

(p51より引用) 5つの「S」とは、
 ① 「Short」
 ② 「Simple」
 ③ 「Sharp」
 ④ 「See」
 ⑤ 「Share」

 これらの中で、石田氏のオリジナリティが感じられるのは「See」ですね。「ひと言」は「見えるもの」でなくてはならないというのです。

(p65より引用) ひと言で、相手の頭のスクリーンに映像を浮かべる。これが「見える」という意味です。

 この例として示されたのは「旭山動物園」のひと言、「形態展示から、行動展示へ」。確かに、新しい動物園のイメージが浮かびますよね。これなら、やってみよう、という気持ちが高まります。

 その他に改めて参考になったのは「ヒットの形」を説明したくだりです。

(p102より引用) 「これまでにあったもの」に時代に合わせた「新しさ」や「付加価値」を加えたもの。
・・・
 つまり「上からみた円」が“ヒットの本質・キモ”、「横から見た高さ」が“新しさ”あるいは“付加価値”ということになります。

 この考え方は、シンクタンク・ソフィアバンクの代表を務める田坂広志氏が弁証法的思考法を説明するうえで「事物の螺旋的発展の法則」としてよく話されているものです。

 その点で、本書をみると、まさに、この「ヒットの形」に準拠したものといえるようです。
 

企画は、ひと言。 企画は、ひと言。
価格:¥ 1,512(税込)
発売日:2014-05-30


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