OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

〔映画〕陽だまりの彼女

2022-01-31 20:30:00 | 映画

 

 人気小説の映画化版です。

 ストーリーはSF?というのか、この場合は “メルヘンチック” という言い方の方が相応しいのかもしれません。ちょっと意外な展開の物語ですが、面白かったですよ、結構楽しめました。

 途中から主人公の秘密に関するいくつもの伏線に気づいて、そのたびに微笑んでしまいます。ラストも妙に捻ることなく期待どおりのシーンで、これもまた私好みでした。

 キャスティングも秀逸でしたね。
 夏木マリさん、木内みどりさん、塩見三省さんをはじめとした脇役陣のみなさんも流石の存在感でしたが、やはりこの作品の場合は、何と言っても上野樹里さんと葵わかなさんが光っていましたね。主人公の不思議なキャラクタを見事に“ライトタッチ”で演じていました。素晴らしかったです。

 

 

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三国志入門 (宮城谷 昌光)

2022-01-31 09:30:00 | 本と雑誌

 いつも行っている図書館の新着書の棚を眺めていて「三国志」というタイトルが目に留まりました。

 本書の著者は宮城谷昌光さん。彼の小説は、かなり昔少し読んだことがありますが、やはり古代中国を舞台にした物語だったように記憶しています。
 本書は、その小説家の宮城さんによる「三国志」の入門書です。

 「三国志」の時代は、多くの歴史小説のモチーフにもなったエピソードや人物が目白押しですから予想どおり興味を惹いたところは数多ありました。曹操周瑜も気になりましたが、やはり、「三国志」といえば諸葛亮(孔明)は外せません。
 本書でもその人物像についてはいろいろと言及されていて、以下の記述は、その中でも代表的なものです。

 諸葛亮の最期、五丈原の戦いの軍中にて病死した折に語られた彼の“人となり”を表すくだりです。

(p258より引用) 諸葛亮の謀臣である楊儀が、その死を秘匿し、軍を引き揚げさせました。
 訃報に接した劉禅は大いに嘆き、詔をくだして、諸葛亮の功績をたたえました。
 「思うに君は文武の才能を体現し、明達であり、忠誠心が篤かった。先帝から託された孤児を受け、わが躬を匡し、補佐してくれた。絶えた家を継ぎ、衰えた国を興してくれた。君の志は、乱を鎮めることにあった(後略)」
 諸葛亮は国の全権をにぎっていながら、いささかも驕らず、まったく邪心をみせませんでした。こういう宰相は中国史上で稀有といってよいでしょう。三国志の世界は権謀術数の世界であるといいかえてよく、そのなかにあって諸葛亮の存在は、特に清らかですがすがしいものです。それを後世につたえてくれる歴史とは、ありがたいものではありませんか。

 さて、本書を読んでの感想です。
 私の場合、「三国志」は、一連のストーリーとして楽しむ方がよさそうですね。人物やエピソードが細切れにされて解説されても、“流れの中の位置づけ”をそのたびごとに頭の中で再整理しなくてはなりませんし、記述の方も必要以上の重複が生じてしまいます。本書でも、そのための冗長さがちょっと気になりました。

 「三国志」関連では、かなり以前に、安野光雅さんと半藤一利さんとの談話で構成された「三国志談義」という本を読んだことはありましたが、「三国志」や「三国志演義」はまだ手付かずです。
 いずれも大著なのでかなり躊躇するところがありますが、いつか機会を作って、まずは「三国志演義」あたりから挑戦してみましょう。

 

 

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〔映画〕トゥームレイダー ファースト・ミッション

2022-01-30 09:30:00 | 映画

 
 おそらくアンジェリーナ・ジョリーを初めて観たのは2001年制作の「トゥームレイダー」だったと思います。
 
 本作はそのリメイク版ではなくオリジナルストーリーで、アンジェリーナ版に先立つ物語という位置づけになります。なので、ラストはアンジェリーナ版へのオマージュ= “橋渡し” 的なシーンで終わっています。
 
 さて、この作品ですが、基本的な展開は、インディ・ジョーンズ、ナショナル・トレジャー、ハムナプトラといった “宝探し系” なので、正直新奇性はまったくありません。
 もちろん比較すべきではありませんが、ヒロインのインパクトも(先代があの圧倒的な存在感を発揮していただけに)かなり見劣りします。B級エンターテインメント作品といったところでしょうか。
 
 正直なところ、出来そのものの前に、そもそもの “制作意図” に疑問符がつく作品ですね。(チャレンジ精神は認めますが・・・

 

 

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〔映画〕SAFE/セイフ

2022-01-29 09:30:00 | 映画

 
 ジェイソン・ステイサム主演の映画です。
 空き時間の関係で都合のいい1時間30分程度の作品だったので観てみました。
 
 10年ほど前の制作ですが、ちょっと前に観た「MEG ザ・モンスター」とは異なり、本来?の彼らしいテイストの作品ですね。
 
 なので、ストーリーやプロットについてあれこれと語ることもないでしょう。すっきりしない物語の展開ではありましたが、ラストは Happy end と思っていいでしょうから、まあ良かったと思います。

 

 

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〔映画〕花より男子ファイナル

2022-01-28 09:30:00 | 映画
 人気コミックが原作で、ドラマ化もアニメ化も映画化もされたようですね。
 
 で、この実写作品につながったわけですが、コミックもドラマもアニメも一度たりとも観たことのない “オジサン” にとっては、「まあこういったノリの作品になるんでしょうねぇ」という感想だけが残った映画です。
 
 作りとしては、ドラマシリーズのキャスティングをベースにした “オリジナルストーリーでの映画化” ということで、しっかりとターゲットを設定した徹底したミーハー演出。その点ではブレはなかったようです。

 

 

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〔映画〕ジョン・ウィック:パラベラム

2022-01-27 09:58:31 | 映画

 

 「ジョン・ウィック」シリーズの第3作目です。

 さすがにこのワンパターンアクションシーンにも飽きてきました。
 時折、相手の攻撃よりも先に受けのポーズが出てくるのは、なんだか延々と「プロレスのお決まりのルーティン」を観せられているようで興覚めしてしまいます。
 私の場合はタブレット画面なのでまだマシですが、2時間ずっと劇場の大画面で観続けるのはちょっと無理でしょう。

 ストーリー展開がマンネリな分、キャスティング面でハル・ベリーの出演でテコ入れしたつもりなのかもしれませんが、その役柄自体がそれまでの流れの中に埋没しているようなキャラクタなので、まったく新鮮味が感じられません。とても残念ですね。

 完全に次作との連続モノを意識した作りですから、この作品だけであれこれ評価するのはどうかとは思いますが、正直「これではマズいでしょ」という出来栄えでした。

 

 

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〔映画〕アルキメデスの大戦

2022-01-26 20:29:13 | 映画

 

 「数学」をモチーフにしその天才を主人公にした作品は、洋画では「ビューティフルマインド」「イミテーション・ゲーム」、邦画では「天地明察」等々いくつもあってそれほど珍しいものではありません。

 本作は「数学」そのものを持ってしての見せ場に加え、それぞれ主義・主張を鮮明にした登場人物が屹立する “絡みの場” も見どころでした。

 その点ではキャスティングが大きなウェイトを占めるのですが、この作品の場合は、今ひとつだったように感じました。
 その中でも、与えられたキャラクタに相応しい演技だったのは柄本佑さん。
 その他で出色だったのは田中泯さん。國村隼さん、橋爪功さん、小日向文世さんといった芸達者の方々を抑え、登場するシーンすべてで格別の存在感を示したのは見事でした。

 あと、映像について。
 冒頭の「大和の轟沈」のシーンは迫力もリアリティも十分でよく出来ていました。やはり最近の作品の映像レベルは素直に素晴らしいと思います。

 

 

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新ジャポニズム産業史 1945-2020 (マット・アルト)

2022-01-26 09:38:29 | 本と雑誌

 

 いつも聴いているピーター・バラカンさんのPodcastの番組のゲストで著者のMatt Altさんが出演していて、この本の内容のさわりを話していました。その話がとても面白かったので手に取ってみた次第です。

 Mattさんは1973年米ワシントンDC生まれ、ウィスコンシン州立大学で日本語を専攻したあと慶應義塾大学に留学。その後来日し翻訳や通訳の仕事をしながら日本のポップカルチャー研究家としても活動しています。

 そのMattさんの眼に映った日本の戦後以降の文化はいかなるものだったのでしょうか。

 彼は、まず彼は「序章」でこう語っています。

(p26より引用) こうして日本はまさに経済的に破綻した一九九〇年代に、文化的には世界への発信力を爆発的に高め、希望と夢を地球上に撒き散らしたのだった。言うなれば日本は、遊びとファンタジーをエネルギーとする超新星として立ち現れた。

 さて、本書では、日本で誕生した様々なポップカルチャーに関するエピソードがいくつも紹介されているのですが、その多くは、Mattさんが「ファンタジー・デリバリー・デバイス」と名付けたものたちに関わる物語でした。

 それらの中から、特に私の関心を惹いたものをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、日本発の「カラオケ」について。
 「カラオケ」が一気に人気沸騰した大きな理由は、カラオケの生みの親とも言うべき根岸重一さんも井上大佑さんも特許の申請をしなかったことでした。

(p129より引用) こうして大手メーカーがシェア争いをするようになると、カラオケマシンは一気に普及し始める。神戸から大阪へ、そして七〇年代のうちに日本全国へ広がった。急速な普及が可能だったのは、カラオケマシンのコンセプトが パブリックドメインであったことが大きい。誰のものでもなかったカラオケは、みんなのものになったのである。

 井上さんたちは、「カラオケ」という装置(ハードウェア)も部品の寄せ集めに過ぎないと思っていましたし、“ビジネスモデル”で特許が取れるとも考えもしなかったのです。

 もうひとつ、SONYの「ウォークマン」のヒットの背景について。
 1970年代後半以降、日本は高度成長と低インフレという好景気の波に乗っていました。

(p206より引用) 人々は、人口が密集し慌ただしく時の流れる都会のストレスから逃れ手っ取り早く楽しめるものを渇望した。つまり、ウォークマンのようなファンタジー・デリバリー・デバイスの魅力に非常に敏感になっていたのである。カラオケが大人たちを虜にし、プロの歌手のようにパフォーマンスできるというファンタジーに酔わせたように、ウォークマンは自分で選んだ音楽をどこにでも持ち運び自分一人で聴けるという夢のような約束をしてくれた。それに、ウォークマンはふつうの生活にBGMをもたらしてくれる。ごくありきたりで単調な生活も、背景に音楽が流れた瞬間にスリリングなドラマの世界に変貌する。平凡な現実を瞬時に魅力的なファンタジーに変えてくれる画期的な現実逃避デバイス、それがウォークマンだった。

 こういった“現実逃避”“オタク”的風潮が、それに続く「ゲーム」「アニメ」「SNS」などの流行に通底していくのでした。

 さて、この本を読むと、近年世の中で流行したものは、確かに“モノ”ではなく、その時世にアクティベートされた“コト”であり、新しい“様式”であり、新しい“スタイル”であることがよく分かります。

 キティちゃんグッズを身に付けている姿、カラオケで自分自身に陶酔している姿、街中でウォークマンで音楽を楽しんでいる姿・・・。何か新しい“モノ”が話題になっても、ただその“モノ”が物理的に存在するだけでは文化にはなり得ません。
 その“モノ”が何がしかの“人の営み”の中に位置づけられて、新たな感性やスタイルを産み出し具現化し起動していく、そういう動的な“コト”(ムーブメント)が新しい“カルチャー”を孵化させていくのでしょう。

 

 

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〔映画〕ストロベリーナイト

2022-01-25 10:50:23 | 映画

 

 邦画の場合は、こういうトーンの作品が結構ありますね。

 警察内部での不祥事の隠蔽が事件の発端となり、それが元で悲劇が拡大し、最後には顛末が暴かれて・・・といった展開は “お決まりの時代劇パターン” のようです。(例の “我慢に我慢を重ねて、再度に留飲を下げる” というヤツです)
 さらにこの作品の場合、不自然な人間関係も絡ませているので、どうにもぐちゃぐちゃな物語になってしまいました。

 もちろん「エンターテインメント作品」ですから、必ずしもそこにリアリティがある必要はありません。私には合いませんでしたが、こういったプロットやストーリーもひとつの作り方ですね。

 

 

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〔映画〕ファーストラヴ

2022-01-24 08:57:38 | 映画

 
 直木賞受賞作品の映画化版です。直前にNHKでもテレビドラマ化されたようですね。
 
 物語のモチーフがセンセーショナルなものなので、ある程度割り引くべきかとは思いますが、それを踏まえてもなお、北川景子さん 芳根京子さん 木村佳乃さんの迫真の演技は見事だったと思います。
 特に北川さんにとっては “代表作” のひとつになったといってもいいのではないでしょうか。脇を支えた窪塚洋介さんの押さえた存在感も良かったですよ。
 
 シナリオや演出面では、少々不自然かなと感じるところもありましたが、それを補って余りある出演者のみなさんの熱演が印象に残った作品でした。

 

 

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〔映画〕図書館戦争 -THE LAST MISSION-

2022-01-23 13:03:23 | 映画

 
 2013年に封切られた「図書館戦争」の続編です。
 前作同様、書籍の検閲・焚書に対し「表現の自由」を守るというとても大切なテーマを頂いた作品です。
 
 そのテーマは、映像という表現形態の作品が扱うには相応しいものですが、「映画」としてみると、“戦闘シーン” に必要以上の時間が割かれていて冗長でメリハリのない作品になってしまったように思います。
 
 さらには、その戦いの解決手段もあまり説得力のあるものではなく、重要な議論を提起した物語にしては、幕引きに物足りなさが残ります。
 ただ、クライマックスの、「銃撃に対して “報道陣のカメラのフラッシュライト” が主人公をサポートするシーン」は象徴的であり秀逸でしたね。

 

 

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〔映画〕居眠り磐音

2022-01-22 11:49:06 | 映画

 

 人気時代小説の映画化版です。

 完全な “エンターテインメント作品” ですね。ストーリー云々は関係なしです。

 善人はあくまで善人、悪人はこれでもかと悪人というプロットで、それに沿った豪華なキャスティングはなかなかのものでした。

 “善人”の谷原章介さん、中村梅雀さんは無難な線でともかくとして、“悪人”の柄本明さん、奥田瑛二さんは絶品でしょう。大仰でアクの強い演技は見事です。脇にまわった陣内孝則さんや橋本じゅんさんも自分たちの得意なタイプのキャラクタでしたし、時代劇には無理がある?木村文乃さんもそのままの爽やかさで良かったですよ。

 しかし、主役の松坂桃李さんのカツラ姿はイマイチですね。正直、かなりの違和感です・・・。

 

 

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〔映画〕コンテイジョン

2022-01-21 18:39:48 | 映画

 

 2011年の作品ですが、今日の「新型コロナウィルス禍」とダブるようなシーンが数多く描かれています。

 感染症パンデミックをモチーフにするにあたり、CDC(疾病予防管理センター)の感染症対策医療関係者や世論の騒擾要因としてのブロガー(インフルエンサー)といった外せないキャラクタもしっかり登場させています。

 ストーリー展開は、テーマの割には必要以上にセンセーショナルではなく比較的穏やかです。ラストも “尻切れトンボ” 感がありますが、こういった物語の場合は止むを得ないでしょうね。

 ちなみに、キャスティング面では、マット・デイモン、ジュード・ロウ、 ケイト・ウィンスレット、グウィネス・パルトロー、マリオン・コティヤール、ローレンス・フィッシュバーンとビッグネームが目白押し、絢爛豪華でした。このラインナップはなかなか凄いです。

 

 

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九十八歳。戦いやまず日は暮れず (佐藤 愛子)

2022-01-21 11:08:27 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着書リストの中で見つけていたのですが、予約待ち列が長く、手元に届くのが遅くなってしまいました。

 佐藤愛子さんの著作は、妻の蔵書から引っ張り出して、今までも「九十歳。何がめでたい」「日当りの椅子」とかを読んでいますが、本書は(同時進行のものとしては)佐藤さん最後のエッセイ集ということで、大きな寂しさを感じつつも楽しみに手に取ってみました。

 佐藤さんが綴った数々のエピソードの中から、印象に残ったくだりをいくつか書き留めておきます。

 まずは、「青春時代の思い出話」を友人たちと語り合うときの心持ちについて。佐藤さんの青春時代はまさに戦時下でした。

(p146より引用) この国は平和がつづき、飽食の国になったのだ。悲痛な思い出は笑い話になった。それを語る私も笑っている。笑い終えて憮然としている。

 “笑い終えて憮然としている”というフレーズはずっしりと心に響きますね。

 もうひとつ、同じく作家だった佐藤さんの父君(佐藤紅緑氏)が筆を置くに至ったときの様子。雑誌の編集長から作品の質の衰えを指摘する手紙が送られてきました。

(p152より引用) 母は手紙を読み、それから送り返されて来た原稿を讀んだ。 それから姉に讀ませ、私にも讀ませた。そして訊いた。
「どう思う?」と。
 一讀して私は「こりゃアカンわ」といった。父の熱血が空廻りしててわざとらしい、と私は生意気をいった。姉も同感だった。母は黙って考え込んでいた。そしてその翌日、母は父にいった。
「あなたはもう十分過ぎるほど書いて来られたじゃないですか。もうこのへんで身を退いて、後は好きな俳句でも作って穏やかに暮せばいい。経済的なことは心配いらないようにちゃんと用意してありますから」
「うむ」
とだけ、父はいったそうだ。激情家の父が素直に母の言葉を聞き入れたことに私は胸を突かれた。いきなり太陽が翳り、この家が暗く縮んだような気がした。

 このシーンも印象的です。その瞬間の家族の絵が浮かびます。

 しかし、齢90歳をはるかに越えても、佐藤さんは間違いなく“エッセイの名手”だと思います。
 テンポも良くウィットに富んでいて、どんなテーマでも読んでいて気持ちが軽やかになります。佐藤さんの人柄そのままの素直な語り口が魅力なんですね。

 そう、“人柄そのまま”といえば、佐藤さんが北海道に夏の間過ごすための別荘を持っていることは、これまでの作品でもしばしば登場しているので有名ですが、本書の中で、その別荘を持つに至った経緯やその折のエピソードが紹介されています。これが何とも佐藤さんらしく、とてもユーモラスで楽しかったです。

 

 

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〔映画〕MEG ザ・モンスター

2022-01-20 11:29:56 | 映画

 
 ジェイソン・ステイサム主演の映画ですが、彼の定番のキャラクターとはかなり違っています。ただ “泳ぎ” という点では、まさに“水を得た魚” ですね。
 
 しかし、「サメ」をメインにしたサスペンス作品は、必ずスティーヴン・スピルバーグ監督の「ジョーズ(原題:Jaws)」(1975年)と比較されるので辛いところです。あの作品を越えるのはそれこそ至難の業でしょう。
 
 本作品の場合、比較的リアリティが高い方だと思います。その分、ストーリーは陳腐で迫力という点ではイマイチ、ただ、登場人物のキャラクタ設定に無理がないので “そこそこの出来ばえ” に落ち着きました。

 中庸レベルのエンターテインメントとしては許容範囲ですね。

 

 

 

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