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日本文化の核心 「ジャパン・スタイル」を読み解く (松岡 正剛)

2020-09-30 20:39:24 | 本と雑誌

 松岡正剛さんの本を読むのは本当に久しぶりです。
 「日本という方法」「多読術」「日本力」等々、何冊か読んでいますが、ともかく松岡氏の知識の質量や概念の構成力には圧倒されます。

 今回のテーマは大胆にも「日本文化」です。いろいろな切り口で論考が進むので、順不同になりますが、気になる指摘を書き留めておきます。

 まず、「第五講 和する/荒ぶる」から。
 “アマテラスとスサノオに始まる「和」の起源”とサブタイトルがあります。アマテラスの系譜は「和する」、スサノオの系譜が「荒ぶる」です。

(p116より引用) 日本の精神文化の根底はこの「和する系譜」に「荒ぶる系譜」が並立することで成立できたともいうべきなのです。

 「あはれ」と「あっぱれ」がそのひとつの例です。

(p119より引用) 「あはれ」は武家社会では「あっぱれ」に変じました。「あっぱれ」は「あはれ」という言葉を破裂音をともなって武張って発音した言葉なのです。このことも見落とせないことで、王朝感覚の「あはれ」を武家が感じると「あっぱれ」になるのです。
 武門の幼い子が戦場に出ざるをえなくなり、緋械の鎧を着て小さな黄金の太刀をもっている姿は、貴族的には「あはれ」なことなのですが、武門の美学にすると「あっばれ」 のです。よくぞ覚悟した、あっぱれなやつじゃというふうに喝采の対象になる。けれども、その「あっぱれ」には「あはれ」も漂うのです。
 この「あはれ」と「あっぱれ」の関係もデュアルであって、和事と荒事が二つながら関与し、また遠くには和御魂と荒御魂が行き来するのです。

 また、「第九講 まねび/まなび」から。
 明治維新期の外国人学者たちの功績について。

(p191より引用) フルベッキやジェーンズは英語学全般を教え、ヘボンはローマ字の導入を提案して明治学院を創立し、クラークが創設した札幌農学校は内村鑑三や新渡戸稲造を輩出し、ボアソナードは法律を教えて法政大学の基礎をつくり、大森貝塚を発見したモースは動物学を、フォッサマグナを発見したナウマンは地質学を教えた。私はとの時期のこうしたお雇い外国人たちの努力と勇気に感心します。よくぞ教えてくれた、よくぞ本気で若い日本人たちに勉学の基礎を叩きこんでくれたと思います。

 さらに、

(p192より引用) ハーンやフェノロサやコンドルが見いだした日本の美は生活の中に生きていたり、徒弟的に師から弟子に伝えられたりしてきた技法やセンスにもとづくもので、教育的に継承されてきたものではありません。「生」と「技」と「美」がつながっていたのです。かれらはそこに感動したのです。

 明治維新は官製の西洋化を推し進めましたが、その流れの中で、外国人学者たちが日本伝統の芸術や技芸の価値を認め、破壊から守ってくれたのです。

 さて、最後に本書を読み通しての感想ですが、やはり松岡氏の立論には8割方ついていけませんでしたね。
 思想を構成する様々な材料を提供してもらっても、私にそれを「編集」する(料理する)腕がないのですから、どうしようもありません。肝心要のそこのところの修行は、果てさて一体どうすればいいでしょう。

 

 

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〔映画〕たたら侍

2020-09-29 20:00:29 | 映画

 
 今一つの映画です。
 
 メッセージ性を追求しているようでいて、それが伝わってきません。 つくりとしても、エンターテインメントでもなければ、リアリスティックでもありません。とても中途半端です。
 ストーリーも、結局、主人公の「大いなる “ひとり相撲”」で終始しているように感じます。
 
 奈良岡朋子さん、宮崎美子さんといった芸達者の方々が出演しているのですが、まったく活きていないのがとても残念ですね。

 

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〔映画〕スノー・エンジェル

2020-09-28 17:58:01 | 映画

 
 ケイト・ベッキンセイルが主役の作品ということなので観てみました。
 
 映画としてのまとまりはあるのですが、 どうにも救いのないストーリーですね。私の苦手なタイプです。
 
 とはいえ、出演している役者さんたちはとても自然で見事な演技をしていると思います。その点では、しっかりと芯が通った優れた作品だと思います。

 

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〔映画〕L.A.ギャングストーリー

2020-09-27 19:03:19 | 映画

 

 ストーリーで魅せる作品ではありませんが、ちょっと「七人の侍」的なテイストもあり、この手の映画にしては映像自体も綺麗でした。  まあまあの出来だと思います。


 正直なところを言えば、かなりの部分はキャスティングに助けられていますね。
 ショーン・ペンは流石の渋い存在感を発揮していて見ごたえがありましたし、エマ・ストーンはまさに鮮やかな大輪の華を添えています。

 

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中世芸能講義 「勧進」「天皇」「連歌」「禅」 (松岡 心平)

2020-09-26 19:01:29 | 本と雑誌

 久しぶりに歴史関連の書物を手に取ってみました。

 日本中世芸能の世界を、「勧進」「天皇」「連歌」「禅」という四つの切り口から論じたものですが、講義形式で語りかけるような文章の説明が続くので、素人でも入り込み易いですね。(内容が理解できているかは別物ですが・・・)

 まずは、最初の「勧進」の章で書き留めておくべきくだり。

(p56より引用) とにかく、勧進聖たちが切り開いていった、日本における聖と俗の中間にあたるような、勧進の領域ーそこに大量のお金が集められ、それがまた一般に還流していくようなシステムが中世にあって、それが芸能を含み込むことによって、日本の中世の芸能全体が、勧進聖たちの活躍のなかでも活性化していく。そして、最終的には夢幻能のような日本の能の原型が、そのような磁場から生み出されてくる。勧進聖たちはそういう影響を与えております。中世という時代は、勧進の時代といってもいいくらいですけれども、そういうなかで中世芸能自体が大きく変容して発展し、その一つの成果として、世阿弥の複式夢幻能の美しい達成を迎えることができた、といえると思います。

 勧進聖によるダイナミクスの創造です。

 もうひとつ、初めて知った「早歌」について。
 「早歌」というのは、武士の時代、鎌倉から全国に向けて発信された「歌謡」です。松岡氏は、この「早歌」を“日本の歌謡史上革命的”な歌謡だと指摘しています。

(p217より引用) 早歌で初めて日本の歌謡が一字一音になるということは、長編歌謡が可能になることでもありました。多くの情報量を、七五調のリズムのなかでコンパクトに観客に伝えることができるような長編歌謡がここで可能になりました。それを演劇に仕組んでいったのが観阿弥であり世阿弥でありまして、そこで能が成立するわけです。早歌というベースがなければ能の謡も可能にならなかったというくらいの大きな革命です。

 京都ではなく「鎌倉」発の文化が、京都にも大きな影響を及ぼしたという点が極めて画期的でした。

 さて、本書は「中世」が舞台なので、松岡氏の論考のところどころに網野善彦教授の指摘が登場します。
 今での記憶に残る、中世の経済活動において「海」が果たした役割、「百姓」の実態等々、初めて網野教授の著作を読んだときのインパクトは大きかったですね。今度は、久しぶりにそちらにも手を伸ばしてみましょうか。

 

 

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〔映画〕愛と青春の旅だち

2020-09-25 20:08:29 | 映画

 
 観るのは2回目です。
 
 リチャード・ギアの若いころは「優男」でどうも今一つでしたね。この作品の主役は、ヒロインと教官でしょう。
 士官学校の入学から卒業までが舞台ですからストーリーの軸は明確で、その軸に沿って訓練とプライベートでのエピソードが絡んでいく分かりやすい構成です。
 
 予定調和のラストシーンは、安易といえば安易な結末ではありますが、それでも素直に“よかった” と思えますね。

 

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〔映画〕スケアクロウ

2020-09-24 17:28:21 | 映画

 
 ジーン・ハックマン、アル・パチーノ主演のロードムービーです。
 アル・パチーノの若々しさに時代を感じますね。
 
 地味ですが、流石にしっかりした作りだと思います。ラストのアル・パチーノがデトロイトの妻を訪ねるシーン、男の子の表情がひときわ印象的でした。

 

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〔映画〕街の灯

2020-09-23 19:40:00 | 映画

 
 チャールズ・チャップリンの作品としては、たぶん観るのは2作目だと思います。
 
 いい映画ですね。コメディタッチではありますが。主人公に限らず登場人物の心の優しさが現れるシーンはとても印象深いものがあります。
 
 私が言うまでのありませんが、ラストの再会の場面も秀逸です。直前にお金持ちの紳士を登場させた直後に主人公との邂逅。手に触れた感触で思い出して、交わす会話。そして表情・・・。素晴らしいですね。

 

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〔映画〕探偵物語

2020-09-22 17:52:16 | 映画

 

 薬師丸ひろ子さん・松田優作さん主演の角川作品です。

 ただ、そのころの薬師丸さん主演の「セーラー服と機関銃」「Wの悲劇」に比べると、今ひとつです。
 松田優作さんもまだキャラクタが固まっていないころで中途半端な印象ですし、薬師丸ひろ子さんも「らしさ」が感じられませんでした。

 シナリオ自体も背景や経緯の説明なく話が進んでいって不親切、映像もかなり雑ですね。せいぜいキャスティングでの岸田今日子さん・秋川リサさんがしっかりしていたぐらいでしょう。

 

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〔映画〕ルーシー

2020-09-21 18:18:04 | 映画

 
 脚本・監督リュック・ベッソン、主演スカーレット・ヨハンソンというコンビですから、こういった設定であったり映像であったりするのに違和感は感じません。

 SFですから内容が荒唐無稽であってもどうこういうべきではないですし、むしろその奇抜さを評価するべきだと思います。

 もちろん「脳の100%覚醒」で、その人の体を越えてさまざまな物理的現象まで制御できるようになるというのは流石に無理がありますが、私としては結構楽しめましたよ。  

 

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理不尽に勝つ (平尾 誠二)

2020-09-20 18:47:49 | 本と雑誌

 平尾誠二さんの著作は今までも何冊か読んでいます。

 本書での平尾さんの主張は、“非合理的な「理不尽さ」”も時として必要というところが起点にあります。このあたり、昨今の思潮とは異なるものですね。理不尽なやり方は、時折「●●ハラスメント」と命名されて、ともかく避けるべきもの、否定されるべきものと位置づけられています。しかしながら、本書では「理不尽をどのように与えるか」という章すら立てられています。さらに「理不尽は、決してなくならない」との章もあります。

 平尾さんは、とてもスマートで合理的な考え方をされる方との印象があり、そのとおりだと思いますが、その考え方は「生の現実」を礎としているのです。それは、「スーパーエリート」だった平尾さん自身が、くぐり抜いてきた「現実の実態」をしっかりと理解しているからでしょう。
 どうせ理不尽さはなくならないなら、理不尽さに対峙したときには、それに“ポジティブ”に捉え「前進するためのエネルギー」にしてしまうこと、さらには、「理不尽さ」を肯定し、求めすらすること。表面的な“理想論”で、格差や不平等といった「理不尽」をなくすための処方を説くのではなく、理不尽さを認めたうえで、なお「それでどうするのか」を追求し立ち向かうという姿勢です。この方が、理想論を振りかざすよりも数段厳しい道程なのだと思います。
 本書の平尾さんの主張は、ご自身の実体験とご自身の頭で整理された内容なので、第一印象として100%の納得感がないものであっても、一本筋の通ったひとつの大切な考え方として心に響きますね。

 さて、その他、「理不尽」について以外で、私が同感だと感じた平尾さんの考え方を紹介しているくだりも書き留めておきましょう。

 まずは、「勤勉」「この道一筋」について。
 平尾さんは、その価値は認めつつも、「ただ同じことを長く続けていることが目的化している」のだとすると、それは無意味だと考えています。「変わる」のが当たり前なのです。

(p114より引用) その人が言うには、三十年飽きることなくずっと同じことを言っている人間が多いのに、私の場合、昨日言ったことと今日言っていることが違っても、「だって、考えが変わったんだ」と平気で言う。「そこがすごいし、おまえのいいところ」なのだそうだ。
 たしかに、私はそういうことがしょっちゅうあるし、それは当然のことだとも思っている。なぜなら、時間が経過して、状況が変わったり、自分自身が物事の見方を変えてみたりするのだから、昨日と今日で言うことが違ってあたりまえ。それはより考えが深まったということだから、一種の進歩といえる。昨日と今日で言うことが違うと、「信用できない」となるけれど、私にいわせれば、むしろ同じことを言っているほうがおかしい。

 もうひとつ、「シミュレーションの功罪」について。

(p123より引用) シミュレーションとは、真っすぐ、最短距離で目的地を目指すようなものだ。けれども、道が工事中だったり、塀ができていたりして、横道にそれたり、回り道をしながら目的地に向かうしかないこともある。ところが、シミュレーションし過ぎると、アクシデントに出くわした時、いわば「次善の策」を選択できなくなってしまうのではないか・・・。

(p125より引用) データとは過去の経験値、経験則であるから、それに従っているだけでは新しいものが生まれるわけがないのだ。

 そして、最後に、もう一度、平尾さんが言う「理不尽」について。
 平尾さんは「理不尽」はこの世からなくならないことを前提に、「理不尽は、それに打ち勝つ努力をすることで、人を成長させる」と考えています。

(p221より引用) ただ、その時指導者が絶対に忘れてはいけないのは、いくら理不尽が人を鍛えるからといって、理不尽を与えること自体が目的になってはいけないということだ。
 理不尽を与える目的は、あくまでも「その人間を鍛え、成長させること」にある。鍛え、成長させるための手段のひとつが理不尽を経験させることなのだ。
 だから、手段と目的を取り違えてはいけない。取り違えてしまうと、「理不尽を与えるために」理不尽を強制することになってしまう。

 「理不尽」は“成長のための手段”として意味があるとの信念です。

 ちなみに、本書を読んだのは2度目です。読み終わっても気づきませんでした。
 最初に読んだ時の感想は、こちらです。
 →  https://blog.goo.ne.jp/sasada/e/f8c298646efe36b7c3bc2cfd44f21a01

 

 

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〔映画〕どら平太

2020-09-19 19:29:43 | 映画
 市川崑監督作品です。
 
 随所に市川監督らしいカットが見られる「娯楽時代劇」ですが、黒澤明さん・木下恵介さんたちも脚本に加わっているということでちょっと驚きました。
 ストーリー自体はリアリティも何もない「漫画」で、単純に楽しむしかありません。
 
 先の脚本陣に加え、出演しているみなさんは「脇役」としては一流の方々ばかり。かなり豪華な布陣で、今観る方が “希少価値” がぐっと高まっているでしょうね。

 

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〔映画〕セントラル・インテリジェンス

2020-09-18 21:54:09 | 映画

 
 アクション・コメディというジャンルになるのでしょうが、どうもこの手の映画は中途半端です。
 
 結局は「コメディ」なので、それにアクション俳優がどれだけマッチするかがポイントです。その点、ドウェイン・ジョンソンは頑張っている方だと思いますが、それでもやっぱり “無理筋” 感は否めません。
 
 特に、ラストの「同窓会」のシーンは悪趣味のひと言に尽きます。最初の体育館のシーンが伏線なのですが、そこからして頂けないですね。

 

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〔映画〕 恋人たちの予感

2020-09-17 21:27:32 | 映画

 
 久しぶりに観たラブ・コメです。
 
 メグ・ライアンにとって比較的初期の作品ですが、ストーリーに華やかさがなくて今一つの印象でした。ひとつの原因は、相手役のビリー・クリスタルだと思います。この手の映画のキャストとしてはかなり地味なタイプです。
 
 とはいえ、「残る一生を誰かと過ごしたいと思ったら、早く始めるほうがいいだろう」、さすがにラストの台詞は “テッパンのラブコメ” ですね。舞台もニューヨークですから “王道の作品” です。

 

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〔映画〕 ハリーの災難

2020-09-16 17:54:31 | 映画

 
 アルフレッド・ヒッチコック監督の作品はほんの少ししか観たことがありません。
 
 こういったコメディタッチの作品もあるんですね。時代が時代なので「歴史的遺産」のような気分で観てみました。
 
 これだけこじんまりとしたつくりになると、シナリオやキャスティングの巧拙がより際立つのでしょうね。それぞれの登場人物のキャラクタがはっきりしてお互いの絡みも面白く、ラストに近づいてテンポアップする演出も心地よかったです。

 

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