OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

ゲンロン戦記-「知の観客」をつくる (東 浩紀)

2021-04-30 13:35:46 | 本と雑誌

 ネットでも話題になっている本なので、手に取ってみました。

 著者の東浩紀さんは、哲学を専門とする批評家として有名ですが、本書はそういったジャンルの著作ではなく、一見、彼が立ち上げたビジネスにまつわる奮闘記のように見えます。

 ただ、ビジネスに関するあれこれのエピソードにはあまり興味は抱きませんでした。
 失礼な物言いになりますが、発生したトラブルは、社員の使い込み・放漫経営・思い付きレベルのビジネスプラン・懲りない同じ失敗・・・、正直なところあまりにも無邪気なレベルでのドタバタですね。ちょっと前に、西和彦さん「反省記」を読んだのですが、ビジネスストーリーだとすると密度も深度もあまりにも差があります。

 やはり、東さんの著作ですから、「ビジネスやマネジメント」にかかる“気づき”といった内容を期待するべきではないのでしょう。

 ということで、改めて、本書を読んで東さんの哲学の“リアル”を感じたところをひとつふたつ書き留めておきます。

 まずは、東さんのいう「観光」というコンセプトについて。

(p164より引用) ぼくたちの社会では、SNSが普及したこともあり、「言葉だけで決着をつけることができる」と思い込んでいるひとがじつに多くなっています。でもほんとうはそうじゃない。言葉と現実はつねにズレている。報道で想像して悲惨なイメージをもって被災地に行ったり被害者に会ったりしたら、全然ちがう印象を受けた。あるいはその逆だったということはよくあるわけです。そういう経験がなく言葉だけで正しさを決めようとしても意味はない。むしろ大事なのは、言葉と現実のズレに敏感であり続けることです。ほくのいう「観光」は、そのためのトレーニングです。

 この「観光」というコンセプトの説明はストンと腹に落ちますね。

 もうひとつ、昨今の「新型コロナ禍」における価値観の変化について。

(p234より引用) オンラインの情報発信を「オフラインへの入り口」として使うことで、オンラインが消してしまいがちな「誤配」を仕掛ける、というのがゲンロンの哲学でした。

 この東さんの哲学の実現のために「ゲンロン」の営みが存在していたのですが、新型コロナ禍で、従来の「ゲンロン」の主たる活動が実行できなくなりました。

(p235より引用) 感染症への恐怖に駆動されて、多くのひとが、「オンラインで可能な清潔な情報交換だけがコミュニケーションの本体であり、感染症リスクの高い身体的な接触はノイズである」と考えるようになってしまいました。
 コロナ禍が長期的な負の影響を残すとしたら、まさにこの価値観こそがそれだと思います。

 こういった状況への対応については、まだ模索中とのことですが、私も、東さんが「ゲンロン」で目指した“誤配の場”すなわち“リアルな体験(オフライン)”の重要性を感じている一人です。

 こういった“ストレスフル”な状況下、新たな“誤配の場”を求めて「ゲンロン」がどういった具体的アクションにトライしていくのか、そしてそれがどの程度の影響力を拡げていくか、これは結構楽しみですし、大いに期待したいですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕天地明察

2021-04-29 18:46:21 | 映画

 
 かなり前に冲方丁さんの原作も読んでいますが、映画化された作品も結構楽しめますね。
 
 プロットはかなり珍しいものですが、“青春もの時代劇” といったテイストです。
 登場人物も多彩かつ誰でも知っているような有名人が多く、そのあたりも親近感を抱く要因でしょうし、キャスティング面でも、岡田准一さん、宮崎あおいさん、佐藤隆太さん、中井貴一さんといった“爽やか系” の俳優さんが名を連ねていて、正解だったと思います。
 
  岡田准一さんは、シリアスな役よりもこういった軽めのキャラの方が活き活きとしている印象ですね。そして、 宮崎あおいさん、彼女のほのぼのとした独特の持ち味も上手く発揮されていました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕誰もがそれを知っている

2021-04-28 11:23:12 | 映画

 
 ペネロペ・クルスとハビエル・バルデムが共演しています。
 
 作品としての出来は“まずまず”といったところでしょうか。
 最後の犯人が判明するあたりは、かなり唐突感があって、持って行き方も“雑”な印象ですが、そこに至るまでの流れはそれぞれの関係者の感情や背景をうまく描いていたように思います。 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕検察側の罪人

2021-04-27 07:48:47 | 映画

 
 木村拓哉さん、二宮和也さん主演ということだったので、ある程度予感がありましたが、そのとおり “今サン” の出来でした。原作を読んでいないので無責任な言い様になりますが、演出やキャスティング以前の問題でしょう。
 
 検察の予見捜査は、いくつもの実例があるように現実的に存在しているわけですが、この映画で描かれているような極めて個人的な怨恨がその根っこにあるプロットは、どうにもリアリティがありません。
 
 また、木村さん演じる地検検事の日常はあまりに現実離れしていて異次元過ぎるのも、その犯罪に至る動機の薄弱さと併せてストーリーに違和感を抱く大きな要因ですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ターミネーター:新起動/ジェニシス

2021-04-26 11:52:53 | 映画

 
 アーノルド・シュワルツェネッガーがターミネーター役で復活です。
 
 ストーリーは、タイムマシンものでもあるので当然のごとく荒唐無稽ですが、それは織り込み済みでしょう。
 批評家の評価は酷かったようですが、私としては素直に楽しめました。私の世代は、1作目、2作目あたりまで実際リアルタイムで観ていたので、液体金属のターミネーターのインパクトはかなりしっかりと残っているんですね。

 やはり、アーノルド・シュワルツェネッガーといえば、この “ターミネーター” です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン (リリー・フランキー)

2021-04-25 09:59:55 | 本と雑誌

 先日、いつか観たいと思っていた映画の方を先に観て、素晴らしい作品だと感動したので、今さらですが「原作」に立ち戻ってみました。

 小説なのでストーリーには触れませんが、こちらも良かったですね。

 内容は、リリー・フランキーさんの自叙伝ともいうべき小説で、たとえば、こんな自虐的?なフレーズにも(甚だ失礼ながら)納得感があります。

(p232より引用) 東京には、街を歩いていると何度も踏みつけてしまうくらいに、自由が落ちている。
 落ち葉のように、空き缶みたいに、どこにでも転がっている。
 故郷を煩わしく思い、親の監視の眼を逃れて、その自由という素晴らしいはずのものを求めてやってくるけれど、あまりにも簡単に見つかる自由のひとつひとつに拍子抜けして、それを弄ぶようになる。
 自らを戒めることのできない者の持つ、程度の低い自由は、思考と感情を麻痺させて、その者を身体ごと道路脇のドブに導く。
 ぬるく濁って、ゆっくりと流され、少しずつ沈殿してゆきながら、確実に下水処理場へと近づいてゆく。

 確かに東京はそういうところですね。特に地方から来たものにとっては。

 ともかく、この小説、リリーさんの素直な心情を吐露したものなので、エピソードに雑味がまったくありません。登場するリリーさん所縁の人たちも“類は友を呼ぶ”の典型でとても魅力的です。
 もちろん、その中でも“オカン”は別格。リリーさんがどう感じられたのかは分かりませんが、映画で樹木希林さんの演じた“オカン”の姿は、小説で描かれた“オカン”を見事に眼前に映し出してくれた気がします。

 映画を先に観てから小説を読んでも、改めて全く違和感なく“オカンとボク”の世界に入っていくことができますね。
 どちらも、100%、全編 “オカンへの愛情物語” です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

2021-04-24 22:20:02 | 映画

 
 最近観た洋画は今ひとつのものばかりだったので、ちょっと期待してみた作品です。
 
 主人公が ウィンストン・チャーチルで、舞台もヒトラーのヨーロッパ侵攻真っただ中の第二次世界大戦なので、ほぼ予想どおりのテイストでした。
 つくりは、“起承転結” がはっきりしている極めてオーソドックスなものですが、「国王の訪問」や「地下鉄での市民との交流」のように“コテコテの作り込み” のシーンもあってエンターテインメント色にも満ちています。
 
 プロットとしても、タイピストの秘書を置いたのは秀逸でしたね。タイプライター→原稿→演説 と、チャーチルの言葉の力を発揮させるキャラクタにうまくつなげていました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像

2021-04-23 07:44:37 | 映画

 
 「チーム・バチスタシリーズ」の最終作ということですが、今まで観てきた竹内結子さん・阿部寛さんコンビのものとは別物です。
 
 映画というより「2時間ドラマ」といったテイストですが、今回の作品はかなり捻りまくったストーリーですね。
 私としては、筋はシンプルで背景が奥深いタイプが好みなのですが、その点ではちょっと食傷気味です。特に、最後の数分のシーンは、ワザとらしいプロットで正直無駄だと思いました。かえって興覚めです。
 
 あと、このシリーズが今ひとつ合わないのは「白鳥圭輔」のキャラクタに全く魅力を感じないせいですね。役者の方が変わっても印象が同じだというのは、まさに原作での性格付けが原因だということでしょう。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕それでもボクはやってない

2021-04-22 10:31:13 | 映画

 
 評判のよい作品なので期待して観てみました。
 
 ただ、私のメンタリティには合いませんでした。
 (物語の基本線として、“世の中、捨てたもんじゃないぞ” というのか、“世の中、そう甘くないぞ” というのか・・・、私は、Happy end派なのです)
 
 こういった「冤罪」事件をテーマにして、警察・検察・裁判所の実態を切り出し不当判決が生まれる現実を描くという意味自体はとても重要なことだと思うので、その点では佳作なのでしょう。あくまでも、“私が楽しめる「映画」”としてどう感じたかということです。
 
 人による判断は、その人が拠って立つ「価値観」がどうであるかに根源的に規定されてしまいます。“疑わしきは被告人の利益に” という考えが、真に基本理念として現実世界で尊重されているか、その真偽は如何というテーゼです

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

紛争地の看護師 (白川 優子)

2021-04-21 07:56:37 | 本と雑誌

 いつも通勤途上で聴いているpodcastの番組に著者の白川優子さんが出演していました。
 その番組で紹介された紛争地域での白川さんの支援活動の姿を綴った本です。

 白川さんは「国境なき医師団」の看護師。シリア、イラク、イエメン、パレスチナ、南スーダン・・・、砲弾が飛び交う中、空爆に晒されながらの彼女とその仲間たちのチーム「国境なき医師団」の医療活動の実態は、あまりにも壮絶で私の想像を遥かに凌駕していました。

 それでも白川さんを戦地に駆り立てる内なる想いは、「はじめに」で綴られた言葉に尽きます。

(p6より引用) 「何もあなたが行くことはない」
「日本でだって救える命はある」
では、誰が彼らの命を救うのだろう。

 尊い心です。

 本書での紹介されている戦場の様子は、それこそすべて文字に書き留め、心に刻み込まなくてはならないような内容ばかりですが、それらの中から特にこのフレーズはと思ったものをいくつか書き出してみます。

 まずは、シリアの内戦時のシータ病院

(p106より引用) この日、私は、安心して勉強ができるような日常を取り戻すために、銃で戦わなければならない世界が存在することを知った。

 次に、国境を越えての救急搬送を断られて。

(p122より引用) やはりこの子の死も、紛争地医療の限界の中で受け入れなくてはならないのか。現実を受け入れるには私たちは、どの程度人間としての心を麻揮させなくてはならないのだろう。

 そして、南スーダン。命の危険にも晒された戦闘地域真っただ中から、やっと巡ってきた脱出のチャンスに・・・。

(p164より引用) NGOスタッフの一人が声を出した。
「国連の輸送機が飛んで来たぞ!」
みんな一斉に自分たちのテントをたたみ、空港に向かう準備を始める。
 ところが、せっかくの脱出のチャンスにカルロスは飛びつかなかった。 
「われわれはここに残って患者対応をするぞ」
 他のNGOたちと共にジュバに脱出できると思い込んでいた私の心は一気にしぼんでしまった。私は目先のシャワーやきちんとした食事などを夢見ていた。
 今にして思えばカルロスの判断は人道援助団体としては、本当に正しかった。
 ここでいったん退避しても責められるものではない。ただ、すべてのNGOが去ってしまったら、助けを求める市民たちが取り残されてしまう。もしも市民たちの惨状に背を向けて去ってしまっていたら、私は後悔で心が引き裂かれてしまっただろう。

 普通の人びとの普通の生活が否応もなく破壊し尽くされる戦争。誰のための戦争なのか、何を求めての戦争なのか。その中で、自らの命を懸けて苦しんでいる人のためだけに尽くしている人もいること。
 一度は手に取ってみて欲しい本です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ブルー・ダイヤモンド

2021-04-20 08:26:19 | 映画

 
 サスペンスものかと思って観たのですが、主人公はその世界の「素人」でした。どうやら「ラブストーリー」だったようです。
 
 といった感じなので、結局どっちつかずの中途半端な作品になってしまった印象です。観終わってからサイトをチェックしてみると、評価も案の定低かったですね。
 
 このところ、なかなかしっかりと楽しめる洋画に当たりません。残念です。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ベスト・バディ

2021-04-19 10:34:56 | 映画

 
 予想していたとおりの “駄作?” でしたね。
 
 コメディなので、プロットやストーリーがしっかりしていないと単なる「おふざけのお遊戯」になってしまいます。
 
 モーガン・フリーマン、トミー・リー・ジョーンズ、レネ・ルッソといったビッグネームが共演する作品ですから、期待外れになると、それこそその反動は大きなものになるでしょう。
 そして、この作品は、まさにそういった結末に終わったようです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕追憶

2021-04-18 13:50:15 | 映画

 
 「サスペンスもの」かと思っていたのですが、違いましたね。犯人の謎解きは拍子抜けするほどあっさりしていました。
 
 この作品、テーマは何だったんでしょうねぇ、“家族の何か” なのでしょうか。今ひとつ私にははっきりと感じとることができませんでした。盛り込み過ぎのプロットが禍いしてか、伝えたいメッセージにうまくフォーカスし切れなかったように思います。
 
 登場した役者のみなさんも、絡んだエピソードがどれも尻切れトンボのようで、それぞれの持ち味を十分に発揮できなかったのではないでしょうか

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

曇り、ときどき輝く (鎌田 實)

2021-04-17 10:01:27 | 本と雑誌

 いつも聞いているpodcastの番組に著者の鎌田實さんが登場したとき紹介された本なので、気になって手に取ってみました。

 鎌田さんが全国各地で出会った“輝いている人”たち、登場している方々は、どなたも素晴らしい生き様です。書き留めておきたいエピソードばかりですが、その中から「特に」というくだりをひとつだけ。

 北海道芽室町の「九神ファームめむろ」。知的障がいや発達障がいの方がいきいきと働いている会社です。

(p233より引用) 発達障がいで六年間引きこもりだったというSくんの言葉もカッコよかった。
「働き始めて自由な時間は減ったけど、自由に決められることが増えた」

 本書に登場しているみなさんは、「苦労」「逆境」といったありきたりの言葉では表しえないほどの絶望的な状況に置かれながらも、そこから見事に立ち上がった方々です。そして、それに止まらず、我が事を差し置いてでも、周りの人びとのことを思い、助け、勇気づけているのです。

 私は、本書を読んで、ただ単に、その姿を“素晴らしい”と感じているだけです。それでいいはずがありません。私にもできることを何か。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕U-571

2021-04-16 08:33:27 | 映画

 
 “潜水艦モノ” ですが、暗号機を奪取するというプロットはちょっと変わっていますね。
 
 ただ、ストーリーは一本調子で映像自体も潜水艦船内がほとんどなので、あまりメリハリはありません。
 献身的な犠牲に対する思いやりもほとんど感じられず、正直なところ主人公への感情移入はまったくありませんでした。
 
 こういった「目的のためなら手段を択ばず」的な一種単純なタイプのヒーローが好みであれば “はまる”のでしょうが、私には合いませんでしたね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする