OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

〔映画〕君は月夜に光り輝く

2021-10-31 09:21:32 | 映画

 
 プロットからストーリーの流れはほとんど想像できてしまいます。
 
 なので、そうなるとキャスティングとか演出とかが作品の印象の決め手になりますね。
 その意味では、永野芽郁さんと北村匠海さんのコンビは素直にとてもよかったと思います。
 
 北村さんのあのルックスでの朴訥とした立ち振る舞いは、かえってリアリティを感じましたし、永野さんの天真爛漫な素直さは、過剰ななドラマティックさを強いらない演出を見事に活かしていました。とても貴重な個性ですね。

 

 

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〔映画〕エデンの東

2021-10-30 11:31:43 | 映画

 

 このところ原作が有名な文学作品である映画が続いています。

 この作品は、ノーベル文学賞作家ジョン・スタインベックの同名小説が原作です。

 ご存じのとおりジェームズ・ディーンの代表作ですが、恥ずかしながら私は彼の出演作を初めてみました。

 勝手に想像していたよりも “幼い” というのが第一印象ですが、主人公のキャラクタには確かにマッチしていました。うまく役作りができていたということでしょうね。

 映画としては、兄弟であるアーロンの位置づけが少々極端な感じで、リアリティが今ひとつのように思いましたが、こうやって“対比” を際立たせた方が確かに正解かもしれません。

 

 

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日当りの椅子 (佐藤 愛子)

2021-10-29 08:34:29 | 本と雑誌

 このところ図書館で予約している本の受取タイミングがうまくいかず、また読む本が切れてしまいました。

 ということで、納戸の本棚を探って、妻の古い蔵書の中から気軽に読めるエッセイを借りてきました。
 作者は佐藤愛子さん北海道浦河に建てた別荘での暮らしを材料に、その地の人びととの暖かな交流の様子を書き綴っています。発行は1987年ですから今から35年ほど前、佐藤さんが60歳を少し超えたぐらいの作品です。当時はこういったテイストが「エッセイの王道」のひとつだったのでしょうね。

 まずは、何といっても大事なのが“題材”、何をエッセイのネタにするかです。この作品集の場合、それは「シロイト」の住人たちなのですが、もうこの段階で“オチ”まで付いたエピソードが「はい、どうぞ」と差し出されているようなものでした。

(p147より引用) 以上がアベさんが書けばいいといった、「あのこと」である。
 「そうだわ、ありがとう、思い出した。あのこと書くわ」
 「うん、それがいいよ」
 「でも、タカノさん、怒らないかな」
 「だいじょぶだろ。シロイトの人はもう、センセエに書かれることみんな覚悟してるからね」
 アベさんはそういって励ましてくれたのであった。

 そして、こういった豊富な素材を楽しい一編の読み物に料理するのが、佐藤さんの筆力。文章に込められたユーモアと温かみが“佐藤さんならではの味付け”ということでしょう。

 

 

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〔映画〕愛と哀しみの果て

2021-10-28 10:50:35 | 映画

 
 原題は「Out of Africa」ですから、タイトルの付け方によってかなり印象は変わりますね。
 
 アフリカを舞台にしたゆったりとした骨太の物語です。作者本人の実経験に基づいているだけに、原作がしっかりしているんですね。
 
 映画としては、まずはキャスティング。
 やはり主役を務めたメリル・ストリープ、ロバート・レッドフォードのふたりが流石の存在感を示していましたし、助演のクラウス・マリア・ブランダウアーもよかったです。
 
 あと、もうひとつは、映像。
 アフリカの雄大なサバンナと逞しい野生の動物たち、そして現地の人びと。この映画の素晴らしさの礎ですね。

 

 

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〔映画〕老人と海

2021-10-27 11:35:21 | 映画

 
 ノーベル賞作家アーネスト・ヘミングウェイの原作は、はるか昔に読んだことがあります。
 
 映画の方も、監督ジョン・スタージェス、主演スペンサー・トレイシーという重量級の布陣です。ストーリーは原作に忠実で、落ち着いたトーンで粛々と流れていきます。

 映像的には、サメのシーンのように実写で迫力のあるところもありましたが、「海」のシーンでは “空” の不自然さが気になりましたね。制作された時期を考えると致し方ないのでしょうが、やはり残念です。

 

 

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ルワンダでタイ料理屋をひらく (唐渡 千紗)

2021-10-26 17:36:12 | 本と雑誌

 いつもの図書館の新着書リストの中で目に留まりました。
 ちょっと前に服部正也さんの「ルワンダ中央銀行総裁日記」を読んだところだったので、“ルワンダ”という文字に反応して手に取った本です。

 内容は強烈です。似たようなテイストの旅行記ならそこそこありますが、これは、シングルマザーである唐渡さんが、旅行で一度行ったことがあるだけのルワンダで「タイ料理屋」を開くという大奮戦記です。

 当然起こる想像を絶するエピソードからいくつか紹介します。

 まずは、定番の現地のノリとのギャップ。

(p67より引用) ルワンダ人と働き始めてまず痛感するのは、一歩先を見通す、段取りを考える、ということが極端に苦手な人が多いということだ。そもそも「段取り」という概念があまりない。そんなのその時になってから考えようよ!というスタイルだ。ここでは、今日のアポも結局あるのかないのか、当日になって決める文化だ。祝日がその前夜に決まってラジオを通して国民に知らされる、なんてこともある。

 “時間の進み方”が違うというのは、日本でも、以前の沖縄がそれに近い感じですが、それをも遥かに超越した“おおらかさ?”ですね。

 そして、「買い物をお願いして、渡したお金の残りを自分のものを買うのに使ってしまう」とか、「店に自分の家の洗濯物を持ってきて洗う」とか、「店の装飾品を客の求めに応じて勝手に売る」とか、「外出制限時間に遅れそうになり配達を諦め、自分でその料理を食べてしまう」とか・・・、さらには、雇っていたドライバーから脅迫されたこともありました。

(p139より引用) 「助けてあげよう」と意気込んでルワンダに来た外国人が、繰り返されるスタッフの嘘や不正、裏切りに失望し、さじを投げる場面を何度か見てきた。私もここに来るまでは、一事が万事、小さなことでも、いけないことはいけないと断罪してきたと思う。でも。どうなんだろう。
 盗まなくても、嘘をつかなくても、脅さなくても、裏切らなくても生きていけるなら、それは必ずしも、心が清いってことじゃない。そういう場所に生まれたっていうことなんだ。

 彼らの行動は、私たちでは到底思い至らないような背景や厳しい現実の反映でもあるのでしょう。

 さて、本書を読み通しての感想です。

 今までも様々国々への旅行記のようなものは何冊か読んでいるのですが、本書のような「外国に移住して店を開く」といった経験を綴った体験記はあまりありませんでした。(山口絵理子さんの「裸でも生きる―25歳女性起業家の号泣戦記」が似たようなテーマですね)
 旅行ですら思いもよらない経験をするのですから、住んで働いてとなるとその驚きの程度は桁外れなんですね。そして、その紹介されているエピソードが、単なる習慣の違いというレベルにとどまらず、人種的背景・歴史的経緯等をバックボーンとして生起していることは、とても衝撃的ですし、さらに、そういったショッキングなトピックを現地の人々が平然と語る姿にも深く考えさせられました。

(p253より引用) ここで出会った、自分の人生を丸ごと受け入れ、前だけを見つめ、歩みを止めない人たち。時として、吹き荒れる嵐の中の、ろうそくのともし火のような命を、懸命に燃やして今日という日を生きている。

 今もコロナ禍真っ只中のルワンダで、現地のスタッフと一緒に、一心不乱に苦労をともにしている唐渡さんは、本書の「おわりに」の章でこう語っています。

(p257より引用) そして始めてからも、くじけそうになることは訪れる。結果が出るまでには、時差があるから。結果というアウトプットは、日々の努力というインプットが溢れることでしか生まれない。圧倒的な量を、溢れるまでインプットし続けるしかないのだ。地味な作業だ。

 さらに、

(p259より引用) 選択肢があること。それを自分で選び取れること。それは、世界の一部の人にだけ許されていることなのだと、ルワンダが教えてくれた。持って生まれた特権を、あなたはどう使うのか?誰のために使うのか?いつもルワンダが私に問うていた問いを、これからは自分で自分に問い続けるだろう。

 心に沁み入るメッセージですね。

 

 

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〔映画〕くちびるに歌を

2021-10-25 09:33:34 | 映画

 
 「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」をモチーフにした小説が原作とのことです。
 
 予想どおり “予定調和”的なストーリーですが、それでいいんですね。私には、こういった素直な作りの邦画が合っているような気がします。
 舞台となった五島列島(福江島)の穏やかな景色もとても作品のトーンにマッチしていました。
 
 あと、極めつけはキャスティングです。
 新垣結衣さんと木村文乃さんとの性格づけのコントラストも適度でしたし、木村多江さんの存在感も好ましかったですね。もちろん、恒松祐里さんや葵わかなさんたち中学生役のみなさんもとても自然な演技で言うことなしでした。

 

 

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〔映画〕ザ・イースト

2021-10-24 09:23:29 | 映画

 
 非合法活動組織に潜入した捜査員を主人公にしたサスペンス映画です。
 
 ただ、どうにも消化不良的なストーリーで、観終わっても、中途半端な気分の中を漂っているような感覚です。
 
 ラストが完全に尻切れトンボで、構成としてはエンドロールの中でその後の出来事も描かれているのですが、そういった手法が効果的だったとは思えません。確かに「本編」の中に取り込むと、締まりのない結末を描かざるを得なくなります。
 ただ、だとするとストーリーの出来自体に問題があるということなんですね。

 

 

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岸惠子自伝 (岸 惠子)

2021-10-23 20:00:29 | 本と雑誌

 

 著者の岸恵子さん。日本を代表する女優のおひとりですが、エッセイストとしても何冊も著作を世に出しています。

 私としては、岸さんが出演された映画は「悪魔の手毬唄」「女王蜂」「たそがれ清兵衛」ぐらいしか観てはいませんが、それでも流石の存在感でした。

 本書は、ご本人による自伝。岸さんの様々な面を垣間見ることができるとても興味深いエピソードが満載です。

 まずは、岸さんが12歳のとき。当時住んでいた横浜の街が大空襲に襲われました。母親と別れて逃げ惑う岸さん。

(p29より引用) わたしが逃げ出した急ごしらえの横穴防空壕にいた人たちは、土砂崩れと爆風でほとんどが死んだ。大人の言うことを聴かずに飛び出したわたしは生き残った。
 「もう大人の言うことは聴かない。十二歳、今日で子供をやめよう」と決めた。

 その後、「君の名は」の大ブームを筆頭に女優として華々しい活躍を遂げた岸さんは、海外の巨匠といわれる監督から出演のオファーを受けました。

(p103より引用) そんなとき舞い込んだ『風は知らない』 撮影の延期に、わたしは呆然とショックを受けた。・・・
 衝撃で打ちひしがれていたわたしに『亡命記』を観たという、フランスのイヴ・シャンピ監督から、松竹を通じて『長崎の台風』(邦題『忘れえぬ慕情』)への出演依頼の電報が届いた。彼の『悪の決算』(原題『英雄は疲れた』)は二度も観て感激していたので、急遽フランス語習得のため、パリに移った。
 大船撮影所からロンドンへ、ロンドンからパリへ、英語からフランス語へ・・・・目まぐるしい変化にわたしの好奇心は燃えた。

 こういったチャレンジングな前向きさが岸さんの生き方の根底にあるのでしょう。

 その後、岸さんはジャーナリスティックな仕事へと軸足を移していきます。アフリカ、イラン、パレスチナ・・・、危険な紛争地帯にも自ら足を運び、現地の模様に自分自身の考えも込めたレポートを試みました。

 本書は、自伝というより“岸さんの言明の著”ですね。岸さんがその人生で貫いて来た信念がストレートに伝わってきます。

 

 

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〔映画〕ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2021-10-22 10:12:20 | 映画

 
 本格的なミステリー小説が原作なのかと思ったのですが、この映画のために創作されたオリジナルストーリーなんですね。
 なかなかよく出来ていたと思います。面白かったです。
 
 主人公の「嘘」をついたときのリアクションが奇抜でしたが、途中途中で関係者の動機となりうるエピソードの開示シーンがあるのと併せて、適度にストーリーの展開を整えてくれました。
 
 アナ・デ・アルマスをはじめとしてキャスティングもよかったですね。
 ただ、私立探偵役のダニエル・クレイグにはちょっと違和感がありました。彼はやはり「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」でしょう。

 

 

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〔映画〕スタートレックⅡ カーンの逆襲

2021-10-21 10:42:36 | 映画

 
 ちょっと前に最近のスタートレックシリーズの作品を観たのですが、こちらは初期のシリーズです。
 
 私の年代は「テレビシリーズ」で育っているので、当時の配役が登場しての映像はとても懐かしく、それだけでもかなりの程度満足してしまいますね。
 Mr.スポック、Dr.マッコイは言うに及ばず、スールーの渋いキャラクタは最高です。
 
 そう言えば、数日前に、カーク船長役のウィリアム・シャトナーさんが90歳で宇宙空間を飛んだことで話題になりました。

 

 

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墨子よみがえる (半藤 一利)

2021-10-20 10:16:23 | 本と雑誌

 著者の半藤一利さんの著作は、今までも「聯合艦隊司令長官山本五十六」「昭和・戦争・失敗の本質」「ぶらり日本史散策」「幕末史」「日本史はこんなに面白い」等々を読んでみていますが、今回の著作は、それらとはちょっと毛色が異なったテーマを扱っていたので気になって手に取ってみました。

 ご存じのとおり「墨子」は、古代中国戦国時代、諸子百家の墨家の開祖平和主義・博愛主義を説いたと言われています。

 まずは、墨子のいう“愛(兼愛)”について説明しているくだりです。

(p43より引用) 「人を憎み人を害しようとするのは、兼愛の立場にあるのか、それとも別愛の立場にあるのかと問えば、必ずそれは別愛の立場からであると答えよう。相互に差別する "別”の立場こそ、天下の大害を生みだす根本なのではないか」(「兼愛」篇〔下〕)

 墨子の“愛(兼愛)”は、いわゆる“愛情”とは異なり、キリスト教の「汝の敵を愛せよ」というニュアンスに近いようです。

 続いての覚えは、この墨子の説く「愛」と神風特別攻撃隊、回天特別攻撃隊などに向かった覚悟とを対置させての、半藤さんの“非戦”への強い想いが吐露されたくだりです。

(p53より引用) この人間の誠実さと強い意志を、無謀な十死零生の作戦ではなく、尊い理想の実現に向かわせれば、つまり墨子のいう兼愛の思想による非戦の徹底で、人類に永遠の平和をもたらす、それは決してできないことではない。夢ではない、われわれの希望でなければならない。わたくしはそれを心から祈っている。

 さらに、半藤さんは、墨子が“非戦”論の根本を説いた「非攻」篇〔上〕の一節を紹介しています。

(p193より引用) 「一人を殺さばこれを不義と謂ひ、必ず一の死罪有らん。若しこの説を以て往かば、十人を殺さば不義を十重し、必ず十の死罪有らん。百人を殺さば不義を百重し、必ず百の死罪有らん。かくのごときは、天下の君子みな知りてこれを非とし、これを不義と謂ふ。いま大に不義をなし国を攻むるに至りては、即ち非とするを知らず、従ってこれを誉め、これを義と謂ふ。情にその不義を知らざるなり。故にその言を書して以て後世に遺す。若しその不義を知らば、それ奚の説ありてかその不義を書して以て後世に遺さんや」

 “One murder makes a villain; millions a hero.”チャップリンの「殺人狂時代」での有名な台詞です。墨子は侵略目的の戦争のみならず「戦争そのもの」を心底嫌ったと半藤氏は語っています。

 そして、この墨子の「非戦」の想いと同じ熱さをもって、半藤さんも「非戦への弛まぬ努力」を誓っているのです。

(p226より引用) 戦争は、ある日突然に天から降ってくるものではない。長い長いわれわれの「知らん顔」の道程の果てに起こるものなんである。漱石『吾輩は猫である』八章でいうように、「すべての大事件の前には必ず小事件が起るものだ。大事の件のみを述べて、小事件を逸するのは古来から歴史家の常に陥る弊竇である」、つまりでっかい事件にのみ目をくれているのはみずからが落し穴に落っこちるみたいなもの、日常座臥においておさおさ注意を怠ってはならないのである。そのつどプチンプチンとやらねばならない。わが父やサン=テグジュペリのいうように、いくら非戦をとなえようが、それはムダと思ってはいけないのである。そうした「あきらめ」が戦争を招き寄せるものなんである。心の中に難攻不落の平和の砦を築かねばならない。読者よ、戦争をなくするために奮闘努力せざるべけんや、なんである。

 半藤さん亡き後、この非戦の想いは、すべての人々が引き継いで求め続けなくてはならないものだと強く思います。

 最後に蛇足ですが、本書で紹介された墨子と同じく「非戦」を信念とした人物について書き留めておきます。

 日本を代表する映画監督黒澤明氏の言葉です。

(p202より引用) 「自分の大切な人が殺されそうになったら反撃しないのかって、よく反論されるんだ。そういうことじゃないんだ。戦争というものが始まってしまうと、虫も殺せなかった人間が人を殺し、心優しい人間も身内を守るために鬼の形相になる。戦渦の中では自分が生きていくことだけで精一杯、人間が人間でなくなるから怖い。だから、戦争を始めてはいけないんだ

 もうおひとり、半藤さんが“現代の墨子”と名付けた中村哲さん。2012年、半藤さんとの対話の中での言葉です。

(p254より引用) 私が居続けたのは結局、去ってしまうと後悔するんじゃないかと思って。自分が解決できる問題があるのに、それをほったらかして逃げるのはどうも……。今の若い人にはわからないかもしれませんが、日本人として男がすたるといった、シンプルな感覚ですよ。

 墨子の“兼愛”を体現した素晴らしい方ですね。志半ばでの現地での悲劇、本当に心が痛みます。

 

 

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〔映画〕スターリンの葬送狂騒曲

2021-10-19 10:21:13 | 映画

 
 観て「楽しい」映画ではないですね。
 
 この作品のように、対立する思想をコメディタッチに扱うことにどういった意図を見出し、どういった反応を想定するのか、立場によって捉え方は大きく異なりますし、それによって作品の評価も様々になります。
 
 私の場合、映画に期待するのは “単純なエンターテインメント” なんですね。
 メッセージ性のあるものも拒みはしませんが、その場合はそもそも観る目的自体が異なるので、それなりに “構え” てしまいます。

 

 

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〔映画〕閉鎖病棟 ―それぞれの朝―

2021-10-18 09:27:22 | 映画

 
 鶴瓶さんのラジオ番組で話題になったので観てみました。
 
 扱いがセンシティブなプロットで、なかなか難しいですね。実際も精神科医である作家帚木蓬生さんの山本周五郎賞受賞作が原作です。 
 
 ストーリーも良かったですが、何よりキャスティングが大正解でしょう。
 
 鶴瓶さん、綾野剛さん、小松菜奈さん、小林聡美さん、言うまでもなく芸達者な方々ですが、それぞれに抑揚を抑えた演技でとてもよかったですね。
 特に小松菜奈さん、いい女優さんになってきました。

 

 

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北斎のデザイン 冨嶽三十六景から北斎漫画までデザイン視点で読み解く北斎の至宝 (戸田 吉彦)

2021-10-17 11:17:26 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着書の棚で目についた本です。

 「北斎のデザイン」というタイトルがまずは私の興味を惹いたのですが、さらに「カラー図版」がたくさん掲載されているので見やすいかと思い借りてきました。

 著者の「デザイン」という視点からの専門的な解説は、美的鑑賞力のない私にとっては、なるほどと思えるものばかりでした。
 「第1章 構図」「第2章 色彩」「第3章 意匠」「第4章 カメラ・アイ」「第5章 季節と人間」「第6章 幾何学的形態」「第7章 線の魅力」と章立てされていますが、まず第1章において、「欧米での北斎の浮世絵の評価」の背景について著者はこう語っています。

(p15より引用) そもそも浮世絵は、江戸時代に美人画役者絵で大衆を喜ばせて発展し、後に旅行ブームから名所絵が登場した商品です。当時の客は興味ある名所ゆえに絵を求め、近代の西洋と比べて絵の鑑賞意識が違います。その中で、自らの画想を追求して描かれた「山下白雨」はじめ「凱風快晴」や「神奈川沖浪裏」の存在自体に驚きますが、さらにそれが西洋に登場すると同時に賞賛され、今も高い評価を受けることは北斎の代表作にふさわしく、ここから日本の近代的風景画が始まったと言えます。

 本書は、「デザイン」という切り口から北斎作品の魅力を読み解いたものですが、併せて、北斎にまつわる数々のエピソードの記載も豊富です。
 「第2章 色彩」の章では、贅沢を禁ずる幕府の政策を受け、使える「色彩」を制限されたなかでの北斎の画家としての矜持が紹介されています。

(p91より引用) この苦労を生涯続け享年90歳まで絵を描き続けた北斎は、多くの絵の手引書を描き残し、亡くなる前年に刊行した最後の本は、色についての指南書 『画本彩色通』 (1848年) でした。

 さて、本書を読んでの感想です。

 数多くの北斎の作品を、興味深い観点からの解説付きでまとめて鑑賞できるのはとてもありがたかったですね。
 紹介されていた多彩な作品の中でも、私が気に入ったのは「北斎漫画」の数々と「富嶽三十六景 御厩川岸より両國橋夕陽見」。特に「富嶽三十六景 御厩川岸より両國橋夕陽見」は、ダイナミックな構図と細かな工夫の描き込みがとても印象に残りました。ちょっとコミカルな味を残しているのが粋ですね。

 本来なら、美術館でホンモノとじっくり対面したいのですが・・・。北斎の作品は海外の美術館所蔵のものが多いようで、それもなかなか難しそうです。
 本書に掲載された作品を参考に、また「北斎の作品集」でも探して眺めてみたいものです。

 

 

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