遊工房・雑感

日頃のあれこれを綴る日記です

田山花袋「田舎教師」

2010-07-29 12:51:55 | 日本の本

このあいだ

古河の文学館で田山花袋の「田舎教師」の中の一文を目にして

読んでみようと読み始めた

描写を重んじた作家かもしれないとも思い

でも

その描写するものがなんか臭いかもしれないと思って

敬遠してた

もしかすると

「蒲団」の中の抜粋を参考書とかで見て

偏見を抱いたかもしれない

 

この「田舎教師」は田舎に移り住んだ私には琴線に触れる部分が

けっこうある

 

わが町の近くに「黒子」という駅があり

わが子らはお姑さんを「黒子おばあちゃん」と呼んでいた

 

おばさんの昔話には

黒子がかつては栄えた町で

映画館や芸者屋があって歓楽街であったかのように話すが

ピンとこない

???

あそこが歌舞伎町みたいだったの?

 

この「田舎教師」の主人公は

足利から熊谷へ 熊谷から行田へは家族の夜逃げとともに移り

そこから羽生の三田が村の小学校に勤めるため移動する

 

その話の中で

熊谷はたいそう繁華な町として描かれている

家並みがそろっていて

乗合馬車が客を待ち受けたりラッパを響かせてガラガラ行ったり

汽車が停車場にとまったり

そういう町から

落魄の道程とともに景色が描写されているので

だんだん

私もおばさんたちの昔話が理解できる感じがする

 

若い頃

うきうき浮かれポンチだった若いむすめ(今じゃあおばあさんだけれど)が

おしゃれをするのにおばさんのたんすの中のきものを

貸せといってせがんだ話

・・・

だんだんイメージできてきた

 

田山花袋の「田舎教師」の文章は絵でたとえると

何もかもが丁寧に描写しすぎるほどしてある

勿論客観的であるけれど

上に書いた落魄の魂みたいなものの反映は勿論あって

 

味わい深いので

じっくり味わいながら呼んでいる

コメント
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