北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

原子力防災訓練 ~本当に逃げ切れるのか~

2013-11-12 | 志賀原発
 今週土曜日(11月16日)におこなわれる石川県原子力防災計画の詳細がようやくわかってきた。
 主な訓練会場を地図で示すと以下のようになる。



 避難について少し書いてみたい。

 今回の訓練では、半島先端方向の避難先でもっとも原発から遠いのは緑丘中学校。約60キロ。
 南方向では鶴来高校で、こちらも60キロ程度となる。

 30キロ圏821町会すべてについて、それぞれの避難場所が決められている。
 たとえば志賀町赤住は松任高校、七尾市中島町横田は小木中学校、穴水町大甲はみさき小学校といった具合である(詳しくはこちら)。

 PAZ(予防的防護措置を準備する区域)と呼ばれる5キロ圏内には2800人が暮らす。
 UPZ(緊急時防護措置を準備する区域)と呼ばれる30キロ圏内まで広げると821町会、151,730人となる(2013年1月1日現在)。

 30キロ圏という線引きで大丈夫かといえば、福島の例を見れば明らかなように決して十分ではないが、ここでは置いておく。

 原発から拡散する放射能に対して、被ばくによるリスクを減らすにはまずはできるだけ早く、できるだけ遠くへ逃げること。逃げる方向は風向きに対し直角方向が基本だが、能登半島では避難ルートの選択肢は限られる。風向きが変わることももちろんある。だとすればやはりできるだけ早く遠くへと逃げなければならない。
 これだけの人が万が一の事故のとき、果たして避難できるのかが問われる。
 最悪30キロ圏すべてに避難指示がでたら、40人乗りのバスだと3800台必要となる。もちろんそんな台数を手配することは不可能だ。そこで県はこれまでは否定してきた自家用車による避難を今回の防災計画の改定で認めた。
 仮にバスが100台来たところで乗れる人は約4000人。さらにマイクロバスなどを総動員しても140,000万人以上の人が自家用車による避難を強いられる。一台に4人乗っても35,000台の車が一気に移動することになる。渋滞必至である。

 今回の訓練では漁船や保安庁の船舶による避難もおこなうが、昨年の訓練のようにちょっと海が荒れただけで使用できない。仮に使用できてもこのような数字を前にすれば、ほとんど意味のないパフォーマンスであることは一目瞭然だ。
 今年の10月3日、七尾港に豪華客船飛鳥Ⅱが入港し話題となったがそれでも最大客数940人とのこと。もちろん、いつもいるわけではないし、輪島港には大きすぎて接岸できない。当然福浦港もアウトだ。

 海路はあくまでプラスα、陸路の避難を基本としなければならない。

 事故はいつ何時起こるかわからない。
 様々な条件で、実際に全住民参加の避難訓練を行うのがベストだが、現実的には困難。せめて5キロ圏だけでもとの申し入れに対しても県はやる必要がないという。
 ただしシミュレーションはおこなうと表明した。
 シミュレーションならば5キロ圏だけでなく30キロ圏に拡大することも可能だ。
 地図を見ていただければわかるように和倉温泉や千里浜海岸、総持寺などの観光地も30キロ圏に含まれる。観光シーズンではどうなるのか。
 帰省ラッシュ時も渋滞だ。
 能登有料道路が今年3月31日で「のと里山海道」となり無料化され、多くの人が渋滞、あるいはノロノロの車両の後ろを走ることを体験している。
 あるいは今日もみぞれが降るが、冬季の凍結、あるいは大雪の夜間などではどうなるのか。

 ぜひ様々な想定の下、避難にどの程度の時間がかかるのか試算すべきだし、もちろん公表しなければならない。
 はたして能登半島の首根っこにある志賀原発の過酷事故に対して原子力防災は成り立つのか。
 (注:これは命、健康が守られるのかという意味で、家、田畑、山林などの財産、経済活動による利益などはあきらめてもらうしかない。あとは賠償を巡って北陸電力や国とたたかうしかない)
 一部の住民しか参加しない今回の防災訓練だけでなく、この避難シミュレーションにも注目しなければならない。
 

 


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