タイトルから著者は「彼」だろうとすぐに推察できる人もいるだろう。
橋本健二君の新著である(彼については2年前にこちらで紹介している)。
居酒屋を通して現代社会を読み解いた前著「居酒屋ほろ酔い考現学」に続いて、今回は居酒屋を通して戦後70年の変遷を振り返っている。
この中で彼は格差社会の拡大による酒文化の衰退に警鐘を鳴らし、「酒を楽しむことは人権の一部」だと提案している。
呑兵衛が思わずニッコリするような提案だが、言うまでもなくそんな次元の提言ではない。
基本的な視点は前著でも提起されているが、戦後70年の居酒屋の変遷、酒の飲み方の変化を辿りながら、ある意味、文化史的な観点から現代社会の危機を明らかにしている。
新幹線金沢開業2年目を迎える石川県や金沢市など各市町は、あらためて文化立県の原点に立ち返り、文化振興に力を入れる流れにある。
いうまでもなく石川の文化は工芸や芸術、芸能だけではない。食文化も重要な位置を占めている。そして豊かな食文化と密接不可分の関係にあるのが酒文化である。
日本酒はもちろん、焼酎や地ビール、さらにワインも含め、石川の酒文化は近年、ますます厚みを増している。
新幹線で観光客が増えて、お酒の消費も増えて新年はほくほく顔の関係者も多いことと思うが、格差社会の拡大が石川の酒文化、ひいては石川の文化振興にどんな影響を及ぼすのか、そんな観点から本書を読んでみるのもおもしろいのではないか。
ps.そんな話とは別に、珠洲の同級生の皆さんにはお酒好きの「健ちゃん」ならではの新刊、ぜひ一読を薦めたい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます