北野進の活動日記

志賀原発の廃炉に向けた取り組みや珠洲の情報、ときにはうちの庭の様子も紹介。

石川県教育研究集会に参加

2017-10-29 | 教育
   

27日、28日と小松市内で開催された石川県教育研究集会(主催:石川県教組、高教組、私教労連)に参加。
一日目の全体集会、記念講演は名古屋大学大学院の内田良准教授。
演題は「学校の日常を『見える化』する -部活動改革から働き方改革まで-」。

内田さんは、「おかしいと思ったら立ち止まること。そしてみんなで考える。考えるときは思い込みを排して、エビデンス(科学的根拠)を基に考えることが大切。そして問題を『見える化』して広く訴えることが解決につながる」とわかりやすく働き方改革の要諦を説く。

こうして言葉にすると簡単そうだが、まず立ち止まることが難しい。みんなで考える余裕もない。思い込みも実に多い。「見える化」も、ブログやFB、ツイッターなども駆使して横のつながりを作り、権力やお金がない人でもやりやすくはなっているが、言うが易いが行うは難し。

内田さんが講演の冒頭に取り上げたのが柔道の事故。
学校の安全安心が重要課題として取り上げらて久しいが、学校内での死亡事故や重大事故はどんな時に起こるのか。
不審者対策などでは、刺又を常備したり、教室の廊下側のガラスをすりガラスから透明なガラスに代えるなど、対策が進んでおり、文科省は実態を詳細に把握し、対策を講じているとおそらく多くの方が信じていると思う。

ところが文科省には事故例の分析どころか、部活動中の事故、運動会での事故といった程度のデータしかなく、具体的な事故の統計すらなかったのだ。
内田さんが学生と一緒に、事故の報告を一件ごとにカードに整理していく中で、まったく同じケースの死亡事故が多くあることに気づく。
最初は元になる報告書を間違えて複数枚コピーしていたのかと思ったという。
日付だけ違うが、同じケースが次々と。
柔道の大外刈りである。

部活や体育の時間の柔道による死亡事故は平均するとなんと年4件。
そんな実態も知らずに柔道の必修化の議論が進められていたことに2度驚く。

柔道をやるなという話ではない。特に初心者の指導について、内田さんらが問題提起をし、指導方法が見直されて2012年から死亡は死亡事故はゼロに。
実態を『見える化』する力の典型例。
※20115、2016の死亡事故は各1件

運動会の組体操も深刻。
ピラミッドやタワーと言われる種目が各学校の判断で行われてきた(珠洲では子どもたちの人数が少ないのでやろうにもやれないが)。
事故は練習中も含め年間約8000件。
その中には死亡事故や後遺症が残る重大事故、骨折なども含まれる。

それでも運動会の花、成功したときの達成感、高揚感は大きく、教育効果も大きいとして多くの学校で行われてきた。
安全安心のスローガンはどこにいった?
冷静に考えれば異常でしかない。

組体操については憲法学者の木村草太さんも法的な側面から問題点を指摘しており、内田さんと木村さんの対談もある。
木村さんは、高さ7mの足もとが不安定な建設現場で、手すりなし、命綱もなしで作業することは完全な違法状態。
ところが学校現場では教育の名の下、建設現場の違法状態が堂々とまかり通ってる指摘してきた。
事故が起これば先生の安全配慮義務も当然問われるが、危険性や法的な問題を抜きにして、道徳の教科書でも美談として取り上げらえていることを厳しく批判している。

内田さんもネットなどを問題点を拡散し、見直しにつなげてきた。
内田さんの指摘に対して教育界からは「うるさい!」と非難轟轟だったとのこと。
組体操の中止ではなく、安全な組体操の指導を訴えるだけでも実は大変。
『見える化』の大切さと同時に、立ち止まる難しさの例でもある。

学校の常識は世間の非常識といった事例が多々ある。

先生の働き方がまさにその代表例だ。
わずかな残業代で、働かせ放題。
しかもそれは法律上は管理職の業務命令ではなく、先生が自主的に、好きでやってる仕事ということになっているので、万が一のことがあっても労災認定を得ることすら大変である。

休憩時間もほとんどなし。
世間的には完全な「ブラック」である。

部活動が抱える問題も大きい。
わずかな改革でも、現場から批判が沸き起こる。
内田さんが提唱する「ゆとりの部活動」。

   

この書の冒頭の問題提起がまたおもしろい。
休憩時間は「廊下を走ってはいけません」と厳しくいわれるのに、放課後の部活では廊下を使って走る風景が当たり前のようにある。
「なぜ廊下を走るの?」という中学生からの疑問を丁寧に受け止め、その原因や内包する問題点を大きく展開していく。

いまようやく学校現場の異常さに世間の目が向けられ始めている。
働き方改革の追い風である。
ところがなぜか学校現場は無風。
『見える化』のテーマは実はたくさんある。
内田さんは文科省、教育委員会、学校の動きの鈍さを厳しく指摘し、ここ数年で学校が変わらなければ世論は見放すのではないかとの危機感を参加者に訴えた。

2日目の昨日は分科会。
私は昨年に続き「「民主的な学校づくり、地域・保護者と結ぶ教育」の第20分科会の共同研究者として参加。
各学校での教育実践のレポートは、地域の特性や現場の創意工夫が反映されていてどれも興味深い。
多忙化の課題解決に向けた組合活動の実践レポートも生々しい現場の声が数多く報告された。

地域、保護者とつながった教育実践は大切な課題だが、やりようによっては多忙化の一因ともなる。
文科省が提起する業務改善の方向性でも、学校と地域、保護者の役割を明確にすることが記載されている。

そんな中、その解決のヒントとなる取り組みが能登・珠洲支部の実践レポートの中にあった。
全国教研での報告の機会があり、さらに議論が深まればいいなと思う。








4 コメント

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Unknown (かど)
2017-10-30 13:07:27
その能登珠洲支部のリポートが、全国教研、行くことになった。した。と、県本部から連絡がありました。
なんか、なかば恐縮です。もうひとつのリポートも力作であっただけに。
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悩ましいところですね (北野)
2017-10-30 21:54:43
県教研、お世話になりました。
どちらも全国教研で報告してもらいたいところですね。多忙化問題を学ぶ職場の取り組みも、全国学テ「トップ」県の職場の実態を知ってもらう大きな意義がありますからね。
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感動とは (AK)
2017-11-04 23:54:54
加賀からです。自分の住んでる地域の中学に、25年前在籍してた教員(その中学OBでずっと校下在住)が戻ってきたのだが・・・。25年前のノリで、まるでどこかのブラック企業か新興宗教のノリなのです・・・。とにかく「感動創造!」「熱い〇中に!!」とか学校集会、保護者会で叫びまくり。保護者はその教員にかつて習っていた人も多く(私も)、非常に好意的。でも私は密かに「ドン引き」。かつて女子バスケを郡市大会で連覇させた熱血教師。昭和の「熱血教師ドラマ」に憧れて教員になったという。ちょうど私が中学の時は田原俊彦の学校ものドラマが人気だったので、彼は自称「〇中のトシちゃん」でした。25年前は良かったが、今の時代にそれをやられても・・・、と。

その時代「私は寝ずに毎日学級日誌を書いている」と自慢していた暴力教員が同じ町の小学校にいて、保護者や町の人たちに「熱心な先生」とあがめられていました。気に入らない生徒を用具室に連れてって一時間暴行する教員を、です。さすがにこういう教師には「おかしい」と思うようになったと思いますが、昔ながらの「熱血」をありがたがる、好む体質は変わりません。定時に帰ろうものなら、田舎の我が地域、何を言われるか。発達障害気味の生徒を毎朝迎えに行って、一緒に総湯にも通った校長、が町で話題になりました。その校長は素晴らしいと思います。でもそこまでの献身を他の人、更にはPTAにも強いる雰囲気が・・・。
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ドン引きですよね (北野)
2017-11-06 09:25:17
コメントありがとうございます。
珠洲では先般、奥能登国際芸術祭が開催されました。50日間の感動創造のイベントです。関係した地元の住民は初体験の連続で、芸術祭ロスという言葉も生まれました。
その裏には3億円で業務委託を受けた企画会社があります。
狙い通りの「感動創造」でした。マスコミもうまく使って、自分も一緒に輪の中に入って感動しなきゃいけないのかなという雰囲気を醸成していきます。
同じ企画会社がおこなう瀬戸内国際芸術祭を昨年視察しました。多くの来場者で賑わう島で、生まれ育った島に40年ぶりにUターンしたというおじさんが「わしゃこんな島に帰ってきたかったんじゃない」とポツリと語った一言がとても印象的でした。
誰かが仕掛けた「感動創造」は、結果的に薄っぺらな感じがします。
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