北野進の活動日記

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民主党、もはや存在意義なし -山口二郎氏参院選後を語る

2013-08-08 | 雑感
 1998年の第二次民主党スタート以来、自民党に対抗する勢力を模索し続け、2009年の民主党の政権奪取に理論的な影響を及ぼした山口二郎氏(北海道大学教授・政治学)が、「世界」9月号で参院選後の政治課題について「頓挫した民主党というプロジェクト」というテーマで寄稿している。

 昨年の衆議院選敗北後も、民主党改革創生プロジェクトに協力するなど、民主党の再生を期待し続けてきた山口氏だが、ついに引導を渡したか、という印象である。

 山口氏はその理由について以下のように述べる。
 「安倍自民党に対決することは極めて単純、明快な課題である。憲法の基本原理である民主主義、平和主義、基本的人権を守るという姿勢をはっきりと打ち出す。強者優先のアベノミクスを批判し続ける。段階的脱原発の路線の下、核燃料サイクルなど原発政策にまつわる欺瞞を徹底的に批判する・・・」
 「政権を失った後の半年間で、安倍自民党というわかりやすい敵がいても、自民党政治をどのような意味で批判するか明らかにできなかった政党は、存在意義がない」

 政権を担った3年間に統治能力のなさを露呈し、さらに野党になって半年経っても自民党に対する対決構図を鮮明にできない民主党に呆れ果てたという感じだ。

 山口氏自身は、民主党が言いだしっぺの消費税引き上げについては賛成の立場だし、同じく言いだしっぺのTPP参加問題については今回の論文では全く触れない。そういう意味では、「対決構図」もイマイチ迫力不足は否めないが、いずれにしれも民主党が上記のような主張を展開したなら、結果的に安倍自民党が勝っていても、次につながる戦いにはなっていただろう。

 「中途半端に参院選を戦ったために、再生への意欲、これを支える人材、さらには今まで民主党に期待してきた市民の間における反発やあきらめの広がりという悪条件が、さらに広まってしまった」と山口氏は失望する。
 
 もともと選挙互助会的性格を根っこに持つ民主党だが、 東京選挙の対応を見れば「政党としての体をなしていないと言わざるを得ない」と切り捨てる。

 今後の野党再生の道筋として、政策的には昨年の衆議院選挙で民主党が掲げた「チルドレンファーストの理念による社会保障改革」「分厚い中間層復活のための持続的な新しい経済成長」「原発ゼロを目指したエネルギー革命」を出発点とする。
 いま読めば、政権政党がここまで踏み込んだ意義は大きかったと認めるが、あの時点では、野田首相がこれらを語り、ほとんどの有権者は聞く耳を持たなかった。ただの作文で終わったのである。

 これらを柱とした政策理念の下、新たな対抗勢力の結集について、政党の離合集散ではなく、まして民主党の再生という枠組みではなく、幅広く、まともな野党政治家のネットワークの構築を図るべきと提案する。
 さらにその基盤について、民主党は自民党的利益政治の否定を徹底する組織をつくろうとしたためか議員中心の政党で、その活動の中で市民の影は薄かったが、山口氏は新たな勢力について、市民社会と往復関係をもつ政党を提案する。

 細部については異論や疑問もないわけではないが、、市民が求める野党勢力の結集、あるいは連携について、民主党をどうするかという立場で考えていて展望が開けるとは思えない。山口氏は国会議員だけでなく、地方議員、市民活動家を含めた議論の広場を提案している。
 社民党が市民と積み重ねてきた実績、あるいは緑の党が目指している方向とも共有できるものがあるのではないか。

 民主党関係者にとってはおもしろくない提案だろうが、参院選後の危機的状況の中、展望がみえず苦悩している市民にとって、一つの大きな方向性として検討に値する提案ではないだろうか。

 


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