「今年最初の関西旅行記 #3-3」のつづきです。
退蔵院を退出した私は、狭義の妙心寺の参観を再開しました。
中心軸をなす三門・仏殿・法堂の東側、浴室のちょっと北にあるのが経蔵です。
その名のとおり、お経の保管庫ですが、江戸時代の建立と、ちょっと新しめで、
「一切経(大蔵経)」が、中央に八角の輪蔵に納められています。正面には輪蔵の考案者である傳大士(ふだいし)の像が祀られています。
だとか。
「回転式書架」とも言える「輪蔵」は、けっこうあちこちの寺院にあるもので、私は仁和寺(訪問記)で三井寺(訪問記)で現物を拝見したことがあります。
高野山(訪問記)に至っては、書架が回転するのではなく、建物ごと回せる経蔵がありましたっけ
この高野山の六角経蔵は、
経蔵の下部が回転式になっており1回転すると一切経を1度読んだご利益があると伝わっています。
だそうで、実際に回している人が何人もいたけれど、ここに納められていた紺紙金泥一切経は霊宝館に収蔵されているとかで、それでもご利益はあるのだろうか?
この「お経を読んだことにする」といえば、お経の一部を唱えながら、じゃばら折りの経本をスプリング状のおもちゃ「スリンキー」のようににバラバラっとやることで全部読んだことにする「転読」なんてものもあって、仏教界もなかなかやるものです
さて、妙心寺の核心部の拝観です。
仏殿は、禅寺で御本尊を祀る建物で、禅宗以外では金堂・本堂と呼ばれることが多いようです。
が、しかし、妙心寺の仏殿は内部非公開でした
それでも閉じられた格子戸の隙間から内部を拝見すると、御本尊の釈迦三尊像をチラ見できました
この仏殿と渡り廊下で繋がっているのが法堂(はっとう)です。
こちらは南側の戸のすべてががっしりと閉じられていて、内部拝観はできないのかな? と思ったら、北側から内部に入れました
貼りつけられた木札によると、
法堂 重要文化財
明暦2年(1656)の建造
内部正面に須弥壇を有し、重要なる法要儀式を行うところである
天井の雲竜は狩野探幽の傑作である
とのこと。
例の狩野探幽による雲龍図は法堂の天井画だとなれば、こりゃ公開しないわけには行きませんよね。
ちなみに仏殿は文化10年(1813)の建造だそうですから、法堂よりかなり新しい。
で、法堂の内部を拝観しようとしたところ、拝観券が必要なのだけれど、どこで入手できるのだ? 南総門を入ったところには、「拝観料はそれぞれの施設で納めろ」といったことが書かれていたけれど…。
法堂の拝観券は、大方丈の隣り寝堂の玄関にある案内所(券売所)で入手できました。
大庫裏が工事のため拝観できないとのことで、拝観料はちょっとお安く500円
でした。
法堂の内部には、意外なことに仏像がありません
仏像は安置されず、重要な儀式や住持による法座(≒説教)・坐禅が行われます。
だそうで、いわば妙心寺のイベントホールなのですな
さて、法堂に入堂すると、おお大きな空間
(天井まで13m)
そして、天井画のデカいことデカいこと…
四角い天井の四方に雲が描かれ、中心部の直径12mの円の中に三爪の龍が壮大に睨みをきかせています
天井の隅に書かれている、
探幽 法眼守信筆
だって3mはありそうです。
これが探幽の自筆(署名)かどうかは定かでありません。
探幽は8年の歳月をかけてこの天井画を完成させたとされていますが、8年間この仕事に専念していたわけではなく、この間にも他の仕事を精力的にこなしていたようです
法堂の内部では、録音された説明がスピーカーから流れていました。
仏像が並んでいるお堂だと、正直、音声ガイドは邪魔な存在でしょうが、幸か不幸か、ここには仏像はありませんので、ありがたく拝聴しました。
とりわけ、「これはこれは…」と思ったのが、妙心寺が誇る国宝
のひとつ、日本最古(698年
)の梵鐘
の音でした。
「妙心寺梵鐘」は、経年劣化で「これ以上撞き続けると破損する恐れがある」ということで1974年に現役を引退し、今は法堂の片隅で、ひっそりと展示されています。
この梵鐘とは、15年前の「妙心寺」展@九博以来の再会でした。
私がお目にかかった翌週、九博では「妙心寺梵鐘」と、兄弟鐘と考えられている太宰府・観世音寺の梵鐘
との「撞き比べ」が行われたそうで、ライヴで聴けた人をうらやましく思っていました。
それが、CD(-R?)音源とはいえ、鐘の音を聴くことができてうれしかった
ちょっと小ぶりな鐘だけあって、音程は高め(Aらしい)。そして、長ぁ~~く響いていました。
ふと、YouTubeに無いかな? と探したらありました
15年前の九博での「『妙心寺鐘・観世音寺鐘』鳴鐘会(めいしょうえ)」の動画です
聴き比べると、兄弟鐘とはいっても、音色が違うのが判ります。
奥の妙心寺の梵鐘の方が音程が高い。
妙心寺(狭義)には、鐘楼が3つ、浴室のちょい北にある「浴鐘楼」、仏殿を挟んだ反対側にある「洪鐘楼」、そして法堂の北西に国宝の鐘が活躍していた鐘楼があります。
写真は「洪鐘楼」で、メインの鐘楼の写真を撮っていない
いろいろネットを彷徨っていたところ、現在の「二代目梵鐘」の音を見つけました
[こちら]
NHKのラジオ番組「音の風景」(私、この番組をけっこう聴いています。「MISIA星空のラジオ~Sunday Sunset~」待機で…)で2015年に放送されたものです。
二代目は、先代の音に近づけるため、銅や錫の配合を調整して製作されたのですと
まさか国宝の鐘を削ってサンプルを採るわけにいかなかったでしょうから、比重とか色とかで成分を推察し、その後は試行錯誤で音色を近づけていったんでしょうねぇ
こうして、法堂では、仏像は一体もないけれど、目と耳
で存分に楽しめました
つづき:2025/02/15 今年最初の関西旅行記 #3-5
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