「今年最初の関西旅行記 #3-2」のつづきです。
「瓢鮎図」の上部には、時の将軍・足利義持から出された「瓢箪でナマズを押さえることができるか」という公案に対する京都五山の高僧31人による答え(賛)が、太岳周崇による序文と四言古詩「用活手段 瓢捺鮎留 更欲得妙 重著滑油」を先頭に、ビシッと、それも漢字だけが並んでいます。
一部を拡大してみますと、
こりゃ各僧の自筆ですな
でも、何が書かれているのか、読めないし理解できません
こちらのサイトで、すべての賛を現代語訳してくれていますから、ご興味がありましたらどうぞ。
ちなみに、上に載せた太岳周崇の四言古詩の訳はこんな感じになっています。
活き活きとした手段によって、瓢箪でナマズを抑えとめようとする。
さらに絶妙の手を使うとすれば、そこにヌルヌルの油を塗といい。
冒頭から投げやりな回答です
他の僧の回答にも、まともに答えていないようなのが結構あって、なんとなく「征夷大将軍なんてなんぼのもんじゃい この若造が
」という雰囲気が感じられます
なお、この頃、足利義持は30歳前後だったと思われます。
ところで、私が不思議に思っていることがあります。
それは、この義持が身近に置いていた衝立に張られていたという「瓢鮎図」が、どんな経緯で妙心寺 退蔵院の所蔵になっているのかということです。
瓢箪と鯰を巡る義持と高僧たちとの禅問答(?)では、妙心寺は完全に蚊帳の外だったはず、というか、妙心寺は足利義持の父・義満によって存在しない状態にされていたのに です。
答えをネットでいろいろ探したのですが、見つかりません
仕方ありませんので、退蔵院の方丈の他の部分を見物です。
この付書院、シンプルでイイ
本宅の出窓に置いているPCをここに持ち込んだら、ブログ書きがはかどりそうです
南面の庭も見えますし
でも、私の足はすぐに痺れるからダメか…
室内には電灯が入っていますが、これがなかなか
でした。
なんとなく、日本間にテーブルや椅子を持ち込んで洋風に使い始めた明治維新期のイメージです。
説明板によると、
室内には51面の襖絵、杉戸絵10面があり、いずれも狩野了慶の筆である。
杉戸絵10面は、川面稜一氏により模写復元されたものである。
だそうです。
狩野(渡辺)了慶は出羽国(おぉ同郷)の出身で狩野元信の弟子だそうですから、方丈は、庭を師匠が、襖絵・杉戸絵を弟子がと、師弟共演なんですな
襖絵の写真は一枚も撮りませんでしたが、色鮮やかな杉戸絵はパシャリ
ソテツとヤギとか。(どうしてヤギ?)
画題としてはよくある鶴とか、
まぁこんなところで方丈の参観を終えまして、退蔵院のもう一つの庭・余香苑に移動しました。
方丈の庭は狩野元信による作庭といいますから、「室町時代の庭」なのに対して、余香苑は、造園家・中根金作さんが設計し、足掛け3年を要して1965年に完成した「昭和の庭」です。
この記事を書いていて知ったのですが、中根金作さんは、かの名園、足立美術館の庭園を手がけられて方でした
このブログで足立美術館に行ったときの旅行記を探したんですけれど、ダイジェストしかありませんでした
そこで、2008年4月に撮った足立美術館の写真を…
さてさて、余香苑にもどります。
余香苑の門をくぐると目に飛び込んで来たのは広く枝を張った木
これは紅しだれ桜だそうで、これだけ枝を広げていれば、満開になったらさぞや凄かろう
退蔵院のHPによると、
余香苑完成当時に植えられた樹齢50年ほどの紅しだれ桜。平安神宮にある紅しだれ桜の孫桜で、瓢箪・なまずが彫られた門をくぐるとすぐに皆様の眼前に現れます。2013年春の「そうだ、京都いこう」キャンペーンに使用され、大変注目を集めました。
だそうです。
が、キャプションにある「瓢箪・なまずが彫られた門」って、ぜんぜん気づきませんでした
撮ってきた写真を見ても良く判りません
この門を入ると、前記のとおり正面で紅しだれ桜が出迎えてくれるのですが、その手前の左右には石庭がありました。
門から見て左手の石庭はいたって普通です。
一方、右手の石庭はといいますと、、、
おっと、黒い
こんな石庭を観たのは初めてです
白い庭は「陽の庭」、黒い庭は「陰の庭」だそうで、リーフレットによると、
敷砂の色が異なる2つの庭は、物事や人の心の二面性を伝えています。陰の庭に8つ、陽の庭に7つ、合計15の石が配されております。
だそうで、きのう、白馬(白毛)のソダシが出産した黒馬(青鹿毛)のイクイノックスとの仔馬は、陽と陰を併せもつ競走馬になるかもしれません。←関係ない
表示された経路にしたがって進んで行くと、水音が聞こえてきました。
そして、先に進むに連れて水音は大きくなり、どうやら滝があるらしいことが判ってきました。
進行方向左側に滝があるようなのですが、さっきまで気配さえなかったというのに、なんか凄い
作庭した中根さんは、きっと、こんな音響効果も狙って、石や樹木の配置を考えたのでしょう。
この滝は意外にも小さくて、岩の間から水路(川)に流れ落ちていました。その岩が遮音効果を発揮しているみたいです。
ほんの十数m歩くだけで、山の中をトレッキングをしているような眺め
・音
の変化を楽しめました。
もしかして、「元信の庭」の川の流れ(砂)が、余香苑エリアに入ると、本当の水の流れに姿を変えた、という趣向なのかもしれません。
ただ、曇天と季節柄、色調の変化に乏しかったのは、ちょっと残念。
リーフレットには「桜、蓮、楓など、一年を通して華やぐ庭園」とありましたが、私が訪れた時期は、ちょうど「端境期」だったということなのでしょう。いっそのこと、雪景色になれば一興だったかもしれません。
でも、だからこそ観光客が少なく(余香苑では私の他に欧米人のシニアカップルのみ)、静けさの中で庭園を楽しめたという側面もあります。
う~んんん、退蔵院、良かったぁ~
心を洗濯できた気がします
つづき:2025/02/14 今年最初の関西旅行記 #3-4
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます