桔梗おぢのブラブラJournal

突然やる気を起こしたり、なくしたり。桔梗の花をこよなく愛する「おぢ」の見たまま、聞いたまま、感じたままの徒然草です。

大出血

2009年12月06日 18時39分40秒 | つぶやき

 十一月二十一日、入院二日目です。
 無事二日目の朝を迎えてしまうと、いかにもオーバーな表現になってしまいますが、前夜はこのまま目覚めを迎えないかもしれないと考えました。
 私は「日録」と題して日記をつけています。パソコンでつけているのですが、毎月月が変わるころになると、翌月一か月分の日付と曜日、二十四節気、両親の祥月命日、月命日などを入力しておくことにしています。

 そういうことに関して、ときおりふとこんなことを考えます。
 それはある日を境に、残りの日付は埋められないままの日録が遺される、ということなのです。
 入院当夜、日付と曜日だけが記され、あとは何も記述のないパソコンの画面を見ている、という夢を見ました。

 朝九時、医師の巡回があって、「検査時系列報告書」というプリントを渡されました。二時間前に採血された血液検査の結果です。31の検査項目があって、基準値と私の値が記されています。

 医師の説明によると、私の場合、とくに問題なのは赤血球数と血色素(ヘモグロビン)数とヘマトクリットで、それぞれ2086・418・8
 これだけではなんのことかわかりません。もらった当人も最初はなんのこっちゃ? と思いましたが、男性の基準値はそれぞれ415~55013・5~17・539~51だと聞かされると、軽いショックに見舞われました。三項目とも基準値の半分以下しかないのですから……。
 ことに6・4という血色素数はあまりにも少な過ぎて、せめて9・0にならなければ、退院は覚束ないというのです。

 いつ9・0になるか ― 。
 それは神のみぞ知ることです。

 パソコンがないので、ノートにボールペンで備忘録をつけることにしました。
 二十年以上も前、ワープロを使うようになってこの方、手書きで文字を書くことはほとんどなくなりました。漢字が出てこないのではないかと思いましたが、意外にすらすらと書き進めることができました。

「非常に大きな潰瘍が見つかりましたが、手術の必要はないようです。ただ、出血がひどいので、輸血をしますが、血液型は何型ですか」
 入院当夜、胃カメラの結果が出たあと、医師に訊かれて私は躊躇することなく、「B型です」と答えました。 

 大学一年生のとき、入部したばかりのラグビー部で、いきなり献血に駆り出されたことがありました。四年生の母親の手術に輸血が必要になって、部員全員が協力したのです。そのとき、B型だと知らされました(と、いう思い込みがありました)。
 以来、献血をしたこともなく、輸血を受けることもなく今日まできました。検診で血糖値などを調べるために採血されたことはありますが、改めて血液型を知らされることはありませんでした。よって、今日まで自分はB型であると信じ込んでいたわけです。

 ところが、ところが……私の血液型はA型でした。
 またまた軽いショックを受けました。
 私は血液型や星座による性格判断とか運勢占いを信じるわけではありませんが、まったく気にしないというのでもありません。
 亥年に生まれ、星座は獅子座で、B型だと思えば、走り出してから考え、そのときにはおおむね間違った方向に走り出していて、後悔ばかりしてきた、という猪突猛進の人生が、いかにもB型らしいと、苦笑しながらも愛おしいと思ってきたのです。

 私の血液型と水分以外は「絶食」を示す札。血液型のほうは退院するまでベッドに掲げられていました。

 輸血承諾書です。
 入院当夜は口頭による説明(というより宣告)だけだったので、翌日サインしました。もう輸血も済んだあとです。
 500ミリリットルの輸血を受けました。私の体重から推計すると、およそ九分の一に当たる新しい血液が入ったことになります。気のせいか、人格も変わったような気になりました。
 が、あくまでも気のせいです。

 入院当日、普段なら歩いて四~五分で行けるはずの病院まで三十分もかかったのは、多量の出血による貧血のせいで、休み休み歩かねばならなかったからでした。
 担当医から「よく一人で歩いてこられましたね」と褒められたのかあきれられたのか。そのあと、「お歳なんですから無理は禁物です。こういうときは救急車を呼んでください」と釘を刺されました。

 そうか。いつの間にか私も「お歳」だったのです。
 そのためでもないでしょうが、三日目の朝までは歩行禁止でした。トイレに行くときは「ナースを呼んでください」といわれましたが、気が引けるので、溲瓶をもらいました。

 生まれて初めて経験する入院生活です。息苦しさや不便さを感じるより、なんとなく愉しいような気分です。

 五日目までは食事代わりのリンゲル液を毎日四本。一袋が空っぽになるまでの所要時間は大体三時間。

 私の両腕は一日交替で交互に針を差し込まれます。これに採血の注射針とヘモグロビンを増加させるための鉄剤注入の注射針が加わって、腕は穴だらけ。

※今日(十二月六日)の関東大学ラグビー戦。
 先日(十一月二十二日)の帝京大戦(0
対56)の完敗を考えると、メイジはよくやったといえるかもしれないが、善戦と見るのは、相撲でいうなら、平幕力士が横綱を苦しめたけれども、結局は勝てなかったという話。
 再建の先はまだまだ遠い。