一昨日の最高気温19度近いという莫迦陽気から、昨日は一転して8・4度という寒さ。
さすがに氷点下を記録するという日はなくなりましたが、一度暖かさを経験してしまったあとは、真冬ならきっとありがたいと感じるであろう気温でも、身体のほうは寒い寒いと独り言を呟きます。
昨年十二月なかば、急に寒くなってから朝の散歩を取りやめにしていました。
今朝も七時台の気温は6度と決して暖かくはありませんでしたが、気持ちは春を感じているせいか、それとも昨日は終日曇っていたのが晴れたせいか、久しぶりに朝の散歩に出るか、というモードになりました。
日の出もすっかり早くなって、今朝は五時二十三分。しかし、日の出時はまだ曇っていたので(今朝は四時過ぎに目覚めて、明るくなるまでは布団にもぐり込んだまま、NHKラジオの「ラジオ深夜便」を聴いていました)、外に出るのは自重。七時近くになって庵を出ました。
朝の散歩に出るのは実に四か月ぶりです。
このところの散歩は猫のうさ伎(うさぎ)と小春に会うためもあって、富士川へ下るということがほとんどでしたが、本土寺の仁王門前では桜が咲いているはず、と思ったので、反対の方角に足を向けました。
去年はまだ近くの住人ではなかったこともあり、チラリと観ただけ。このときは本土寺の桜を観ようと散歩に出たのではなく、偶然通りかかって観たのでした。
辛夷(コブシ)は満開期を過ぎて散り始めです。
まてばしい通りの交差点から仁王門まで450メートルほどある参道のうち、仁王門前の100メートル少々だけが桜並木になっています。まだ一分咲き、というところでした。
去年観たのは四月四日。あんず通りへ杏(アンズ)の花を観に行き、帰りにこの参道前に出て桜の花を眺めたのでしたが、ちょうど満開でした。それに較べると、今年はかなり遅い。
桜の樹の下には一面の雪柳。
「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」と芭蕉は詠みましたが、この雪柳は100メートルあまりの参道の両側を埋め尽くしているので、結構壮観で、よくよく見なくても気がつくはず。
しかし、去年は桜に気をとられてしまったせいか、気がつきませんでした。念のため、そのときの写真を捜し出してみたら、ちゃんと写っていました。
本土寺五重塔遠望。右端に写っているのも桜ですが、こちらはさらに遅いようです。
一軒の民家の庭先で、変わった花を見かけました。幹に「ヒメコブシ」と書かれた木札が下げられていました。
すっかり開いた花は色褪せたように見えますが、開花したばかりと思える蕾は木蓮のようです。
木蓮よりは花の色が薄く、花弁も細過ぎるようなので、やはり辛夷の仲間で、漢字では姫辛夷とでも書くのだろうか、と思いながら写真だけ撮って、あとで調べたら、正しくは四手辛夷(シデコブシ)、別名が姫辛夷という樹でした。
愛知県と岐阜県、三重県の伊勢湾周辺という限定された場所だけに自生する樹で、小川のほとりなど湿地を好む性質があるそうです。
準絶滅危惧種の一つで、渥美半島の田原市伊川津町椛(なぐさ)というところには、「椛のシデコブシ」と呼ばれる二百株もの群落があって、国の天然記念物に指定されています。
この家では、道路に面した場所に植えられ、ほかの木々にはないのに、この樹だけに木札が下げてあったところを見ると、いかに貴重な樹木であるか、家の主(あるじ)が道行く人々に知らしめんと下げたのだろうと想像されます。
朝から陽光はたっぷりで、日中は暖かくなるかもしれないと思わせましたが、風が冷たいのです。四月になったというのに、私は依然スヌードと手袋が手放せず、写真を撮り終わってカメラをコートのポケットに戻すと、かじかんだ手を揉みほぐしています。
初猫?
寒かったので、散歩を早々に切り上げて戻ってくると、こんなんが私の行く手を素早く横切って、民家の庭先に姿を隠すのが見えました。私が近づくと、完全に逃げ去ってはおらず、ごみ箱の陰に坐って私を見ていました。
さもありなんと思っているので、私はちゃんとミオを持っています。
たまさか強い風が私から猫殿のほうに吹いていました。タッパーウェアの蓋を開けると、鼻を伸ばして、漂ってくる芳香を嗅ぎ取ろうとしています。その瞬間を狙ってシャッターを押したつもりだったのですが……。
ちょうど十日前の夕方、我が庵のすぐそばで初めての猫殿を見かけています。その後、会う機会もあるかと思っていましたが、機会は訪れませんでした。私は耳にしていないが、♀猫殿のラブコールを聞きつけてやってきた通りすがりの♂猫殿だったのかもしれぬと考えていた矢先です。
夕暮れだったので毛色ははっきりしませんでしたが、オイチかと思ったぐらいですから、顔のあたりはもっと白っぽく、身体は薄茶色だったような印象がありますが、果たしていかに?