今日八日は薬師如来の縁日です。
江戸川区の一之江というところに妙音寺という真言宗のお寺があり、薬師堂があると知ったので、行こうかと考えていましたが、早朝、ちょっぴり風邪気味だったのをあなどって散歩に出たのが祟りました。南風が吹いて暖かかったことも災いしました。
早足を心掛けて歩いているうちに、かなりの汗をかいていました。汗をかくなんざァ、いってェいつ以来のことやら、などと思いながら帰ってきて、久しぶりに火照った身体を冷ましているうちに、ひどい風邪をキャッチしてしまったようなのです。
畳んだばかりの布団を布いて横になりました。
さっきまで暑い暑いといっていたのが嘘のような寒気を覚えました。しばらくワナワナと唇を震わせ、ガタガタと身体を震わせたあと、なんとか暖まってきた、と思うころ、いつしか眠っていて、目が覚めたら午後一時でした。空はいつの間にか曇っていて、ときおりゴウゴウと鳴る風の音も聞こえます。
起き上がると、身体は朝よりは楽になっていました。
が、東京まで出かけるという無理はやめて、目的地を地元の慶林寺に変更することにしました。
北小金駅北口近くにあって、我が庵から徒歩十二分ぐらいです。本尊は大福薬師瑠璃光如来。すなわち薬師如来です。
今日四月八日はお釈迦様の降誕会(ごうたんえ)でもあります。いわゆる花まつりです。
毎月八日の薬師如来の縁日は、これまで三か寺に行って、いずれも何も催しはない、ということで納得していますから、何もなくともよいのですが、仏教寺院であるからには、今日だけはお堂の扉ぐらい開けていて、念願の薬師如来が拝めるのでは……と、密かな期待を胸に行ったのでありましたが……ときどき閉まっていることのある門扉が開いていたほかは、いつもとまったく変わりがありません。参拝する人影もありません。
勤めに出なくなって以来、曜日の感覚をなくしかけているので、もしかしたら、今日は四月八日ではないのか……と我が頬をつねってみたり。
本堂裏手の墓所。一番近いところに歴住の墓所がありました。
新しく建てられた中央の「當寺開山歴住塔」を除くと、刻まれた文字が判読できたのは右側にあった一基だけ。
實宗積山上座という名と宝暦四年(1754年)という年号が読み取れました。このお寺が創られたのは戦国時代の永禄八年(1565年)とされていますから、随分後代の人です。他の墓石は摩耗してしまっていて、文字が刻まれた跡すら見分けがつかないほどでした。
もう一度本堂前に戻りました。柵の脇をすり抜けて階段を上がって行けないこともないのですが、柵を立ててあるということは、やはり上るな、ということでありましょう。扉の向こうにおわすであろう薬師如来に手を合わせて下山することにしました。
風邪の具合が悪くなるようなら、すぐに帰ろうと考えていましたが、昨夜と合わせれば十二時間も眠ったおかげか、さほどのこともありません。長養寺と華厳寺へ足を延ばすことにしました。
長養寺は慶林寺から歩いて二十四分。我が庵からなら十五分ぐらいですが、足を向ける機会がありませんでした。去年四月四日に参詣して以来、一年ぶりです。
曹洞宗・長養寺。本尊はお釈迦様です。
広いとはいえない境内ですが、本堂左には坐禅堂があって、毎日曜日には朝五時から参禅会が開かれています。
間違いなく今日は四月八日でしたが、花まつりという札が提げられているのに、「まつり」が開かれているような雰囲気がありません。
右下に「四月八日 参拝御自由」と記されていますが、たまたまかどうか、参拝に訪れていたのは私一人でした。
長養寺には風鐸(ふうたく)がなかったので、花頭窓(かとうまど)を撮しました。
このお寺の墓所は道路を挟んだ別の場所にあります。歴住の墓所を捜してお参りするのが第一の目的で訪ねましたが、見当たりませんでした。ないはずはないので、どこか別の場所にあると思われますが、すでに境内をあとにしていたので、またの機会に……。
長養寺からわずか三分。真言宗豊山派・華厳寺。本尊は高さ2・8メートル、寄せ木造りの地蔵菩薩で、鎌倉時代の作だと伝えられています。
小ぶりな風鐸です。この画像でははっきりしませんが、釣り鐘についている乳(ちち、にゅう、とも)と呼ばれる粒々があるので大和型です。
今日は7~8メートルという強い風が吹いていたのに、不思議なもので、鳴るどころか揺れる気配もありませんでした。
華厳寺の花頭窓。
歴住墓所にお参りしました。
中央は権大僧都法印暁深という名と延宝八年(1680年)という年号が読めますが、他の墓石は判読不能でした。
華厳寺近くの空き地でこんな色の風信子(ヒヤシンス)を見かけました。
いつごろから空き地となっているのか定かではありませんが、以前は家が建っていた痕跡があります。何かの都合で売らねばならなかったのか、と思いを巡らせたところで詮無きことを考えました。
水をやったり雑草を抜いたりしている(なぜか)初老の婦人の幻を見るような気がしました。恐らく丹精込めて育てていたのであろうに……。
以下は今朝六時過ぎ、風邪気味だったのを押して出た散歩で撮った画像です。三日間、前ヶ崎の香取神社に足を向けていなかったので、行ってみたのです。
今朝六時台の我が地方の気温は15度。南南西の風7メートル。さすがに冬のコートは脱ぎましたが、こういう気温でも手袋だけは欠かせない。
三日間足を向けていなかったので、猫の小春にはちょうど三日、うさ伎(うさぎ)に到っては先月の二十七日以来、十日以上も見かけていません。代わりに梨の花が咲いているのを見ました。
三日前まではほとんど咲いていなかった香取神社の桜も一気に開花していました。
いろは紅葉の花です。この樹は風媒花なので、今日のように強い風の吹く日はきっと喜んでいることでしょう。
満開の赤花三椏(アカバナミツマタ)。無患子(ムクロジ)のある家で。
今朝六時半ごろの富士川上空です。午後には曇ってしまいました。