毎月第4火曜日は文学サロン「火曜の会」
作品は、井上靖作「あすなろ物語」より 3章「漲ろう水の面より」
鮎太は、高等学校を卒業し、九州の大学へと進みます。
ここで登場する女性は、佐分利信子。
鮎太の高等学校の仲間3人とともに、この若く美しい未亡人をめぐって、
それぞれの胸に秘めた思いが、匂い立つような青春期が巧みに描かれています。
この男子学生4人の胸の内を思いながら朗読しましたが、
青春期の一途な恋も話の中心になっているので、
「まあ、いいさ、人間惚れる時は惚れる。俺たちは若いんだからな」
「おめえも惚れているのか」
「莫迦、判らないのか、俺はあのひとが好きだった」
「俺は童貞を捨てて来た」
「ある一人の女の為に取っておいた童貞をつまらぬ女にくれてきた!」
こんな、やりとりがでてきます。
それぞれの若者のことばですが、やっぱり、ちょっと恥ずかしさもでることばです。
漲る若い血潮で語れたでしょうか、人物像を大事に語ったつもりです。
そして、この若者たちの抑えた感情が内側から、私の胸を打ち、
少し息苦しいようなやるせないような重い気持ちにもなり、
戦地で散った金子の最後の描写などは、心にずんとくるほど、とても悲しくなりました。
鮎太は、少しずつ、アウトローになっているのか。
「明日は、檜になるんだよ。鮎太は、翌檜(あすなろう)だろう」って言葉をかけてあげたい気持ちになります。
私の青春期も同じようなものだったかな。
「恋」を想うとき、それぞれの恋に、嬉しさと切なさがあったと思う。。
もう、いろいろには思いだせないけれど、
胸底に沈んだ真珠のような、かすかな重みがあるのをふと、感じる。
青春期の「恋」は、
やはり、ほろ苦いものです・・・ねっ