細田暁の日々の思い

土木工学の研究者・大学教員のブログです。

視界

2010-11-27 08:31:05 | 研究のこと
研究とは,未知を解明したいこと,過去の誰もなしとげていないことでやりたいことを,目標に設定してそこに到達することなので,その過程においては視界が不良になることも多々あるわけです。

私も研究者であり,いつまでも修行の身ではありますが,いくつもの研究を経験し,見てきて,研究ということがどういうことなのか,少しずつわかってきてはいます。

現在も多くの研究プロジェクトを併行で進めており,外部の研究者と連携しながら,また対象も実構造物や実物(電柱など)であるものも多く,エキサイティングな日々を送っています。

その中でも,博士課程の学生に対しては,困難なテーマを設定します。当然のことです。

私が初めて主査を務めた学生はソンさん(ベトナム)でした。ソンさんの研究テーマは高炉スラグに関するもの。日本人学生たちと取り組んできた研究を,ソンさんがAE法を駆使してかなりのレベルまで引き上げてくれました。博士論文は9月にまとまりましたが,その後も再び日本人学生たちと研究を進めています。この研究においても,何度か「視界」が開けたときがあり,そのたびに研究が大きく進展することを経験してきました。

次に主査を務める学生は博士2年のウスマンさん(パキスタン)です。彼は表層品質の検査システムを構築することが研究テーマです。中でも,表面吸水試験による実構造物の品質の検査方法を確立することをテーマに設定しました。彼も研究を進めていますが,現在は修士2年の吉田さんが中核となってどんどんと研究を進めてくれています。私だけでなく,林さんも実質的なプロジェクトリーダーとして研究を切り盛りしており,ある意味で総力戦です。この研究においては,各プレーヤーの努力により,「視界」が開けようとしています。私の中では突き進める状態に完全に入った感覚です。直観なので,ほぼ間違いないと思います。日本人学生たちが今年度,全力で進めてくれるであろう研究を受けて,ウスマンさんがソンさんのように高みにまで持っていってくれるでしょう。

私の研究室のマネジメントのパターンが以上の2例に表れているように思います。

以上の2人の学生の前には,林さんの研究がありました。主査は椿先生です。研究の立ち上げあたりから実質的には私と議論を重ねながら,林さんが日本人学生と一緒に地道に行ってきた研究を,椿先生のご指導を受けながら最後取りまとめました。苦労もしたでしょうが,徐々に視界を広げながら進んできた時間を懐かしく思います。

現在,私の初めての日本人の博士課程の学生である小松君が研究に取り組んでいます。収縮とひび割れ,がテーマの中心です。まだ博士課程の研究がスタートしたばかりなので,あまり小さくまとまらず,膨張や表層品質も見ながら,本質的なテーマ設定ができるとよいなと思っています。当面,苦労はするでしょうが,頑張るでしょうから,先輩達と同じように視界が開け,突き進む日が来るのを楽しみに,研鑽してもらえればと思います。