さて、もう何年続けているのか分かりませんが、学部3年生の秋学期に各教員が提供する少人数ゼミで、私は「人間学とリーダーシップについて考える」というタイトルで開講しています。昨年度は6名受講、と多かったのですが、今年は2名受講でした。ディスカッションがメインなので、研究室の学生にも声をかけて、修士2年の竹田大樹君が参加してくれ、議論はとても面白いものでした。
公開を前提に、2名の受講生からレポートを提出してもらったので、以下、ご紹介します。
+++++++++++++++++++++++
国際基盤演習 細田少人数ゼミ課題
2022年1月6日
都市科学部 都市基盤学科
青柳 勇希
「完訳 7つの習慣」から読み取る原則と、それに基づくメンヘラとの付き合い方
人間がサルから進化し、群れを作り、繫栄してきた中で、私たちの中には一つのルールが刻まれた。それは社会が個人主義になっても変わらないルールである。これは高次元の話ではなくむしろ動物的な低次元なものである。そしてどれだけ力を持った一個人でも決して変えることのできない、超不変的なものである。「完訳 7つの習慣」ではそれを原則と呼んだ。本の中では行動は個人が持つパラダイム(価値観)によって選択されると言われた。しかしそれはあくまで選択に限られる。私たちが社会に干渉する際、同時に私たちも社会に干渉される。そこで原則に従うことが出来なければ私たちは進化の道から外れ、淘汰されることとなる。社会に干渉せず一人で生きることを望む人もいるだろう。しかし私たちは群れで進化してきた。協力することなく得られるものは限られ、そこに発展は無く、豊かさも生まれないだろう。この原則は多くの人が見落としているものである。無意識のうちに行っている原則もあれば、守ることのないまま死ぬこともあるだろう。しかし意識的に原則に沿った生き方が出来るのなら、この社会において人間的豊かさを得ることは可能である。今回はそんな原則によってもたらされる生き方と、社会の中でもある特定の性質を持った人々との付き合い方を考えていく。
「7つの習慣」では原則に沿って我々の内面の考え方、外部との接し方についてのススメが示されている。
第一の習慣 主体的である
第二の習慣 終わりを思い描くことから始める
第三の習慣 最優先事項を優先する
第四の習慣 Win-Winを考える
第五の習慣 まず理解に徹し、そして理解される
第六の習慣 シナジーを作りだす
第七の習慣 刃を研ぐ
要約すると、自分の中に一つ生き方を定めること、それに沿って生きること、そうすることで外部に影響されず自らの影響を広げられること、それにより周りに信頼関係が築かれ更なる豊かさを得られる、ということである。これについて詳しく知りたい方はぜひこの本を読んでみてほしい。
ではこの生き方はある特定の人種に対しても効果を発揮するのだろうか。その人種とはメンヘラである。「セキララ★ゼクシィ メンヘラとは?」によると、「メンヘラ」とは、2010年頃からネットを中心に広まりだした言葉で、「メンタルヘルス」という言葉に由来している。かつては心の健康に悩んでいる人たちが、スラングとして「メンヘラ」を使っていたそうだが、現在はもっと広い範囲で使われており、精神的に不安定な人や心に闇を抱えた人、自傷行為をする人なども含まれる言葉になってきている。メンヘラになる理由には、幼少期の環境と親からの愛情不足、ストレス耐性・自己肯定感の低さ、被害者意識の強さなどがある。メンヘラになると常にネガティブ思考だったり感情が不安定だったり依存しやすいといった兆候が見られ、関わる人もそれに影響され両社にとって不利益が生まれる。私がメンヘラの人と関わっていた時もこのような現象は見られた。彼女は母親からの精神的束縛を受け、自分の行動や進路も自覚がないまま親の意思で決定されていた。彼女は他人を信用することがなくなり、自傷行為によって精神の安定を図っていた。私は彼女と長い友人であり彼女のことを理解した気になっていた。しかし私が彼女に対して粗相をした際、彼女は私に心配されることをひどく嫌った。私は彼女の深い友人になっただけで、まったくもって彼女の気持ちを理解できていなかったのだ。私はこの本を読み返し、第五の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」を行えるようにした。自分と他者との関係にはWin-Win、Win-Lose、Lose-Win、Lose-Lose、Win、Win-Win or No Dealの6つがあり、私が今まで最善と思ってしていたことは平和主義者気取りの、なんの見通しも持たずに相手をなだめることしかできないLose-Winの関係だったのだ。Lose-Winの関係は思考を放棄した降参であり、互いに満足させるWin-Winとは程遠いものである。それに気が付いた私はまず彼女の立場になって、彼女のことについて書きならべた。そして彼女と話し合い、私の認識と合致するところ、異なるところを確認しあった。案の定、私の考えていた彼女と実際の彼女には異なるものが多かった。しかし私は初めて彼女の気持ちに共感することができ、彼女の話を共感しながら傾聴することが出来た。そして彼女がいかに他人に対して迷惑をかけることを恐れ、他人を拒絶しているのかを理解することが出来た。私は彼女に「彼女のことを心配せず、ただ気遣いながら今ここですべきこと、したいことのみ行う」と約束した。すると彼女は私を受け入れてくれ、良好な関係に戻ることが出来た。
今回私が行ったことは
① 原則に沿った自分の中のミッションステートメントを定め、それを目標として生活することで、自分の中に外部から影響されない芯(核)を作ること。
② 彼女の気持ちに共感し、話を聞き、理解すること。
③ 理解した上で互いに満足できる基準を定め約束すること。
である。他人と関わる際、自分は他人の影響を大きく受ける。メンヘラは特に顕著であり、彼らと深くかかわるには何事にも影響されない、自分を自分たらしめる芯を事前に作っておく必要がある。また、Win-Winの関係は自分の人格が十分満たされていなければならない。人格が満たされるとは、誠実であること(自分に価値を持つこと)、成熟していること(勇気と思いやりをバランスよく備えること)、豊かさマインド(内面の奥深くにある自尊心と心の安定から流れ出る、この世には全てのものが全員にいきわたってもなお余りあるほどたっぷりとある、というマインド)を持つこと、の3つが備わっていることである。さらにWin-Winの関係に相手の理解は必要不可欠である。この理解は世間一般で出回っている個人主義のうわっぺらのテクニックでは得ることが出来ない。人は人の話を聞くとき(に限らずすべて物事を)自分のパラダイム(価値観)のフィルターに通し、自分のそれまでの経験、いわば自叙伝を相手の経験に重ね合わせて理解した気になっている。本当に必要なものは共感であり、相手の立場になることが真の理解のカギとなる。そして互いに合意できる約束をし、そして守ることで確かな信頼が得られる。こうした満たされた人格による行動は他人から影響を受けることと同じように、相手にも影響を与えることが出来る。それによって両者の関係はさらに向上したものとなるだろう。
以上が、私が考える「7つの習慣」から読み取ったメンヘラとの付き合い方である。この文章が誰かの興味を引き、自分の人生に少しでもこの考えと照らし合わせていただければ幸いである。
参考資料
「完訳 7つの習慣」 スティーブン・R・コヴィー
https://zexy.net/contents/lovenews/article.php?d=20210120#:~:text=%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%98%E3%83%A9%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AF%E3%80%81%E3%80%8C%E7%94%9F%E3%81%8D,%E3%81%A6%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%86%E4%BA%BA%E3%82%82%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82 「メンヘラとは?」 セキララ★ゼクシィ
+++++++++++++++++++++++
人間学とリーダーシップゼミまとめ
田中 智章
進め方の方針
「完訳 7つの習慣」を課題図書として各々の意見を交換していく。
第1回
パラダイム(物の見方)は変える必要があるのかどうかについて議論を行う
この中でパラダイムとは変化するだけでなく広がる、狭まるといった変化もあるのではないかという意見が出てくる。話の着地点として自分と他人が理解することが大切ということに、そのために自分のことを言語化することが大切だという意見も出てきた。また、他人と向き合うことで自分がわかりやすくなる(比較対象となる)という意見も存在した。
第2回
7つの習慣に出てくる原則とはなにか?本には原則に従うことが幸せになれるものとして書かれていたか本当にそうかというものを議論。
議論でまとめられたこと
原則とは…普遍的でいつの時代にも存在したもの。どの人間も持っている。長続きする幸福を得るためのもの
原則を守る人間は聖人のようであるという意見が出てくる
原則を無視しても幸せになれる人はいることも議論で確認した。
第3回
7つの習慣が進める「ミッションステートメントをもつ」ことを各々で実行し、それぞれの意見交換を行うことになる。
7つの習慣では自分がどのような死に方をするか、どんな人たちに囲まれて死ぬかを考えることで自身の根幹を認識することができると書いてあり、このことから各々自身の最後を考えて自分自身を見つめなおしてみることになった。
第4回
第3回であげた自分自身のミッションステートメントのブラッシュアップ、より自分自身の望むことは何かというものを深く認識できるための作業を行った。
学んだこと・感想
こういった自分自身の生き方を真剣に語るといった場はあまり存在せず。また自身の内面をさらけ出すことは非常に勇気がいることであるので、今回自分の心の中を言葉にして出し、また他人に話すことは非常に心の中に残る大きな経験となりました。自分の心を表に出した経験を得たことで、自分の心と行動が乖離しないように行動できるようになっていけると感じました。また自分の生き方について議論をした事で、自身の人生の終着点をがある程度明確になり、その目標に向かって一日一日を無駄にせず生きようという気持ちがわいてきました。