この度、土木学会賞を二ついただけることになりました。大変光栄に思います。
1つは、土木学会田中賞(論文部門)です。
<令和4年度土木学会田中賞論文部門>
NUMERICAL SIMULATION OF RUPTURE AND PROTRUSION OF VERTICALLY TIGHTENED PC BARS IN PC GIRDERS WITH ASPHALT PAVEMENT USING APPLIED ELEMENT METHOD
[Journal of JSCE, Vol.10, pp.145-161, 2022]
Addisu Desalegne BONGER(横浜国立大学),細田 暁(横浜国立大学)、Hamed SALEM(カイロ大学)、深谷 卓央(首都高速道路(株))
(「土木学会 田中賞」は昭和41年度(1966年度)より、橋梁・構造工学に関する優秀な業績に対して授与されている学会賞です。「論文部門」は、土木学会刊行物に発表され、計画、設計、製作・施工、維持管理、利活用、考案、歴史・文化、普及・啓発などに関連して、橋梁工学の発展に大きく貢献したと認められる論文、報告等に対して授与されるものです。)
共同研究者のHamed先生とは、東日本大震災の後、橋梁の津波での流失について共同研究を始めました。元々、東大コンクリート研の3つ年上の先輩で、在学中に同じ時間を過ごしました。当時も仲は良かったですが、プロの研究者として一緒に仕事をしたのはこれが初めてでした。前川宏一先生の引き合わせで、津波による橋梁の被害調査・分析の土木学会の研究委員会の幹事長を務めた私と、応用要素法による研究を推進していたHamed先生をつないでくださいました。
津波による橋梁被害の研究でジャーナル論文も何本か公表しました。その後、レンガ構造の共同研究を始めて、その後、今回の田中賞の対象のPC橋梁の鉛直PC鋼棒の破断突出対策の研究を始めました。
首都高速道路の勉強会から始まったテーマであり、Hamed先生との国際共同研究でもあり、Addisuさんというエチオピアからの優秀な留学生(修士、博士とこのテーマで研究し、現在は三井住友建設に勤務)の活躍もあり、産学共同の実践的研究・国際共同研究・YNUの留学生教育、などの成果でもあり、そういう意味で今回の受賞はとてもありがたい、励みになるものとなりました。協働してきた様々な方々に感謝を表します。
もう一つは、土木学会技術開発賞、です。
<土木学会技術開発賞>
柳井 修司(鹿島建設(株))、渡邉 賢三(鹿島建設(株))、松本 修治(鹿島建設(株))、水野 浩平(鹿島建設(株))、細田 暁(横浜国立大学)
データを活用したPDCAの高速化によるコンクリート構造物の品質確保技術の開発(CONCRETE@i®)
(技術開発賞は、計画、設計、施工、または維持管理等において、創意工夫に富むと認められる技術(情報技術、マネージメント技術を含む)を開発、実用化し、土木技術の発展を通じて、社会に貢献したと認められる者に授与されるものです。)
こちらは、私も長年取り組んでいる新設コンクリート構造物の品質確保に関する技術開発で、鹿島の皆さんの技術開発に私も連名で加えていただき、受賞となりました。光栄に思いますし、私のライフワークの一つである品質確保に今後も努力を継続する決意をさらに固める契機ともなりました。
私自身が受賞することや、出世したり肩書が増えたりするようなことには、本質的な興味や欲望はないのですが、一緒に仕事をしてきた方々との取組みが社会から評価されることについては満足感や安心感を得ることができます。また、今後も、豊穣な社会研究センターや、所属する土木工学教室、土木学会などの学会活動などで、無数の方々と連携してチャレンジしていくわけですが、そのときの励みやエネルギーにもなります。
このような栄えある土木学会賞をいただきまして、心より感謝いたします。土木のエンジニア、研究者として、社会に貢献できるよう、精進を重ねます。