「大災害から得る教訓を活かすことの重要性」 中村 亮介
2011年3月11日、日本周辺における観測史上最大の地震である東北地方太平洋沖地震が発生した。この地震によって、東北地方と関東地方の太平洋沿岸部に大津波が押し寄せ、壊滅的な被害が発生した。また、巨大津波以外にも、地震の揺れによって、液状化現象、地盤沈下、ダムの決壊などが発生し各種インフラが破壊された。神奈川を含む首都圏では地震によって鉄道などの公共交通が麻痺し、多くの帰宅困難者が発生するなど、大きな混乱が起きた。この地震による被害の名称である東日本大震災による直接的な被害額は16~25兆円と試算されており、これは被害が大きかった岩手・宮城・福島の3県の県内総生産の合計に匹敵する。このように東日本大震災は甚大な被害を及ぼしただけでなく、日本経済にも大きな影響を与えていることが分かる。しかしながら、私はこの地震による被害は前例から学んでいなければもっと大きな被害が発生していたと考えている。
その前例が1995年に発生した阪神・淡路大震災である。1995年に発生したこの地震では、建物の倒壊や火災によって大きな被害が出たが、この震災を教訓に耐震基準の見直しが行われ、建物への耐震性を上げる取り組みが行われていた。実際、2つの大地震による死因を見てみると、阪神・淡路大震災は圧死・損壊死等が死因全体の83.3%を占めている一方で、東日本大震災では圧死・損壊死等は4.2%であった。もちろん、地震の性質や被害地域の大きさも異なり、津波の発生の有無もあるので、一概に比較することは出来ないが、建物等の倒壊の割合が減少しているのは確実と言える。このことは、阪神・淡路大震災の教訓が見事に活かされた事例と言える。
よって、私たちが次に行わなければならないのは次に東日本大震災級の大地震と大津波が発生した場合に東日本大震災の教訓をどのように活かすかということである。東日本大震災では道路・空港・鉄道などの交通インフラが大きな被害を受けた。インフラの復旧について、道路網は東北地方整備局が沿岸部への都市への救援のためくしの葉作戦を行ったことは有名であり、また復興支援のため従来あった東北自動車道に加え、より太平洋寄りを走る三陸沿岸道路を初めとした復興道路が新たに建設された。鉄道においては、常磐線や仙石線などが線路を従来走行していた場所より内陸に移設したり、駅を高架駅にするなど様々な津波対策を施して復旧している。
震災から11年が経ち、東北地方の地震・津波対策はかなり整備されてきたと言える。次に起こるであろう大地震である首都直下や南海トラフ地震への備えが果たしてどれほど行われているのか分からないが、少なくとも今挙げた2つの地震は日本経済の大動脈である太平洋ベルトに大きな被害をもたらすのは確実であり、東日本大震災よりも経済被害は大きくなることは容易に想像出来る。被害を少なくするための東日本大震災から得ることの出来た教訓の一つは内陸にインフラ網を新たに整備することではないかと私は考える。例えば、新東名高速道路は東名高速道路に比べて内陸に建設されており、通常時は東名高速の交通を肩代わりする存在として、地震などの有事の際には、被害が少ないと推定される新東名高速道路が代替手段として機能するように整備されている。まだ全通はしていないが、いずれ起こる大地震に備えて代替手段を一つでも多く整備しておくことは、東日本大震災から得ることの出来た教訓の一つなのではないか。加えて、日本は地震の他にも台風や豪雨など自然災害が世界的にも多い国である。この国で生活をしている人々は自然災害への知識や備えについて他国に比べて関心を持つ必要があると考えており、土木を学んでいる者としてそれらを周知していく必要があると今回の講義を受けて改めて思った。
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