「東京一極集中の原因と解決方法」 横山 大翔
土木史でたびたび話題になる東京一極集中。地方から東京に多くの人口が流れ、地方の過疎化が深刻な問題になっているというのは有名な話だ。地方が過疎化すると、地方に住む人々の行政サービスの質が低下する。また商業施設が撤退しさらに不便になり人口が減るいう悪循環に見舞われる。一方過密が進んだ東京では災害などに脆弱になり、東京で大地震が起こったとき、それが日本の致命傷になりうる可能性がある。一極集中によって業務効率化などのメリットもあるが、やはり日本全体で見たとき、国土を非効率に使ってしまっているという印象を受けてしまうというのが感想だ。
ではなぜ東京一極集中が進むのか。直接的原因としては企業が東京に集まるからに他ならない。日本企業は、特に大企業において、東京に本社を置く傾向が強すぎる。もともと地方に本社があった企業も成長するにつれて東京に本社を移すパターンが多い。例えばブリヂストン。もともとは福岡県の久留米市に本社があったが、企業の成長とともに国際競争力確保のため本社を東京に移した。もし、今も久留米市に本社があれば、それだけ久留米市に雇用が生まれ、ブリヂストンは世界でもトップクラスのゴム製造会社であることから、優秀な人材も多く久留米市近郊に住むことになっただろう。最近の例だとパナソニック。経営不振から国際競争力アップや新たな風を取り入れるためということで、2022年4月に本社機能を大阪府門真市から東京に移転。登記上本社は門真市に残ったものの、実質上は東京に移ったと言って良いだろう。この流れがある限り東京一極集中が止まることはない。
東京一極集中を地方分散型のドイツと比較してみよう。世界の企業トップ500に入った日本企業57社のうち、三大都市圏以外に本社がある起業は浜松のスズキと広島のマツダだけである。一方ドイツの28社のうちベルリンに本社があるのは1社、一番本社が多い第三の都市ミュンヘンでも4社であり、各地方に国際競争力のある企業が幅広く分布している。ドイツは歴史的にも連邦国家であり、地方分散型になりやすいという歴史的要因や、国土が概ね四角形で使いやすいとう地理的要因もあるが、一番の要因は政治であると考えられる。ドイツは地方行政の力日本よりも大きく、それゆえに各州でいい意味での競争がある。地方政府が積極的に、自発的に企業に工場や本社機能移転を誘致する。企業の進出が決まったら具体的な計画などを地方政府が率先してサポートをする。各地方政府は経済振興公社をもっており、それが主体となって企業のコンサルをするようだ。単に税制優遇をして企業が来るのを諦観しているだけのような印象を受ける日本の地方行政とは一線を画している。また、若者の人材流出が根本的な原因ということで、地元企業のインターンシップ制度が充実している。州の教育制度の一環としてもインターンシップがあり、中小企業も含め若いうちから様々なインターンシップで地元の優秀な若者を囲い込む。グローバル化が促進する傾向がある日本の教育だが、逆にだからこそ、地方の優秀な若者を外に取られてはいけないというような意識を地方は持つべきではないだろうか。人口流出を嘆く地方の人々はまず自分の地域の行政が機能しているかを確認すべきだろう。兵庫県明石市など、ある程度都市圏から離れたところでも人口増加がみられる例もあり、まだまだ方策はあるはずだ。
コロナ禍で在宅勤務の増加もあり、ここ最近では本社機能を地方に移転する例も増えてきた。NTTが本社機能の一部を高崎に移したというのは有名だ。新幹線を使えれば東京近郊に住んでいる人でも十分通勤は可能であり、また将来的には高崎周辺の人口が増える結果になるだろう。群馬には大学もあり、この流れが続けばそれらの学生が東京に流れることを抑えることができる。新幹線や高速道路があるところであれば、企業や労働者に大きな負担をかけずに地方移転が可能である。まずはこのようなインフラが十分整備されているところから地方移転を始めていければ、結果としてこの東京一極集中をある程度食い止めることは可能だ。
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