アダム・スミスを読むように池田尚治先生からご教示いただいたの数年前。何冊か読んでいますが,まだ原典を読んでいない怠け者です。
もうすぐ読み終わろうとしているのが,「いまこそアダム・スミスの話をしよう」という本で,アダム・スミスの哲学を分かりやすく体得するための良書と思います。
我が国の状況を理解し,何とかするための処方箋のためのヒントも多く散りばめられていると思いますが,「分業」について。
分業は,生産性を高めるために必須の考え方ですが,スミスは,分業が人間の知力や体力を奪う,としています。自分のことだけやっていればシステムが回るため,自分のこと以外に興味を持つ必要がなくなるためです。スミスの時代は,需要が著しく多いのに,物不足の時代でした。何とかして供給を増やす必要があった時代です。分業は必須なのですが,分業が社会システムとして進むと,子どもたちも労働力として借り出され,子どもたちの教育がおろそかになることを非常に憂えていたようです。
現代はどうでしょうか。さらに分業が進み,縦割り,細分化がとめどなく進み,まさにスミスの憂えたような,知力,体力,好奇心に劣った人間が大量生産されてしまっています。分業は仕方ないにしても,個人が自分の枠を勝手に決めずに大いなる好奇心を持つようにしないと,人間が劣化していくでしょう。
人間は,いくつもの「役割」を持っています。父親が父親だけであってはならない。私は,教員であり,研究者であり,父親であり,夫であり,子どもであり,友人であり,教え子であり,私自身である。
いろんな役割をきちんと演じること。他者に興味を持つこと。「協働」にもつながるでしょうか。
教えるのが下手な人は,教えられる生徒の気持ちを分からないから,です。先生が生徒よりもよく知っているのは当たり前。それだけ多く経験しているのだから。生徒は,先生がよく勉強しているかどうか,先生がまだまだ伸びているかどうか,をシビアに見ていますよ。自分自身を成長させられない人に,生徒を成長させることなどできません。
いろんな役割を演じることで,気分も変わり,それぞれの役割を全力で演じることができ,充実した一日となり,気分良く寝れる。気分良く寝れるから,一日に経験したことが心身に定着する。一つのことだけ頑張っちゃう人は,結局効率も悪いし,展開もないし,寝る時間まで削っちゃうので身にも付かない。
一日が充実しない人は,一年も充実せず,一生も同じ。ステップアップしていく人生を過ごしたければ,毎日を充実させるしかない。分業しつつ,想像力を働かせ,創造的に協働しましょう。
やはり古典が大事ですね。
昨夜のNHKスペシャルのインフラ危機の伝え方も,日本人らしい。すぐに目の前の危機に対応すべく,ワイワイ騒ぎ出す。生活道路を市民が自分たちの力で維持管理することなど,とっくの昔に古代ローマ人たちがやっています。身の丈に合ったインフラ,とか言い出したとたんに,将来の発展の無い,Shrinkしていくだけの世の中になります。Reviewという概念が無い日本人は,現代のインフラ危機にも同じことを繰り返すでしょうか。せめて,生活道路と国家の基幹を成すインフラとの議論を分けて行うくらいの,冷静な議論を望みたいものです。NHKスペシャルで前半部に市民の怒りの声が多く寄せられていましたが,人任せ,他人の批判をしていてどうなるものでも無いのも当たり前。政治だって行政だって,皆さん国民の生き写しです。人の批判をする時間があれば,"Man in the mirror"を変えましょう。