超人日記・俳句

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

田園に死すを見る

2019-03-15 16:00:26 | 無題
 久しぶりにDVDで「田園に死す」を見る。墓地でかくれんぼしている情景で始まる。かくれんぼの鬼は子どものままなのに、気づくと隠れていた子は大人になっている。恐山の風景。白い風車が寂しく回る。学生服の少年が主人公。テーマは、ずばり、母とのしがらみ。柱時計は家の象徴。腕時計は自立の象徴。恐山のイタコに降りた父親に遭いに行く。春になったら母ちゃん捨てて家出しようと思ってるんだ、とイタコに言う。近所の若い人妻(八千草薫)に横恋慕している。見世物の情景。犬神サーカス。空気を入れてもらって恍惚とする空気女がサーカスのテントにいる。家族の柱時計で時間を共有するのを止め、一人で一つ時計を持つことへの憧れ。喪服の老女の群れは村社会の象徴。舞踏の挿入が随所にある。人妻と汽車に乗って駆け落ちをする約束をする。先祖の遺影を磨く女たち。家や母から逃げて少年は駆け落ちする。場面代わって、それまでのシーンは映画のフィルムのなかの話だったことになる。70年代の監督兼作家の日常。「私の少年時代は、私の嘘だったのだ」また昔の田園風景。藁人形、恐山の地蔵。村社会の暗部。赤子の間引き。待ち合わせた人妻は来ない。人妻は原田芳雄と不倫している。少年時代の私と大人の私が会う。恐山で心中していた人妻と原田芳雄。河に赤子を流す間引きの場面。母を亡き者にせよと今の私が少年の私に言う。少年は未亡人にお寺でおかされる。母と再会する現在の私。母と二人でちゃぶ台で食事をしていると、壁が外れてそれは現代の新宿のど真ん中。完。家出のすすめと田園に死すを結ぶ、家からの自立の葛藤。短歌の世界を映像で幻想的に絵にしている。傑作である。

戻らない少年時代を書き替えて私の嘘が墓石になる

コメント
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