超人日記・作文

俳句を中心に、短歌や随筆も登場します。

#俳句・川柳ブログ 

さらば箱舟を見る

2019-03-20 12:08:02 | 無題
映画「さらば箱舟」を見る。ひび割れた大地で柱時計を台車で運ぶ男と娘。いくつもいくつも時計を穴に埋める。「これで時間は本家だけのものになる。」いとこ同士の禁断の愛が中心テーマ。スエ(小川真由美)と捨吉(山崎努)の情愛。スエには本家の呪いで鉄の貞操帯が縛りついていて、取れない。舞台は沖縄の架空の村。鍛冶屋にも貞操帯は外せない。本家を恨む二人。狐憑きを落とす儀式。本家から貰ったコメを捨てるスエ。自由奔放な本家の大作(原田芳雄)と女。酒場で歌って踊る若衆と捨吉がけんかをする。石橋蓮司が畳の下から金を盗んで逃げる。闘鶏で盛り上がる村人。本家の大作にからかわれて大作を殺した捨吉。本家の人間を殺した以上居場所はなく、家財道具を台車に載せて夜逃げする捨吉とスエ。二人は空き家をみつける。死んだはずの大作の亡霊が気軽に姿を見せる。大作と捨吉の奇妙な友情。冥途宛ての手紙を配達する郵便配達夫。死人への手紙を読む。笛の音に誘い出される若い娘チグサ(高橋ひとみ)を催眠術で眠らせる。チグサに触れると男はみな死ぬ。村外れには、一つ一つの物の名前を忘れ始めた捨吉。紙に鍋とか箸とか書いて貼る。枕と書いた紙の上で俺と書いた捨吉が眠る。家には俺の家とのぼりが立っている。物の用途も忘れ始める。妻に、スエ、俺の妻と書いて手を取り合う捨吉夫妻。狂ってくる捨吉。屋台の時計屋が来て、自分の家の時計を手に入れる。村にはあの世の穴がある。村に複数時計があると混乱すると村人が騒ぎ出す。捨吉の時計を村人が壊す。乱闘で捨吉が死ぬ。棺桶に死体と記憶用の紙を納棺する妻。スエが起きると貞操帯が外れている。一夜にして隣に都会の町ができる。村にも電灯がつく。本家の時計は一斉に止まる。外車に乗って村に帰ってくる石橋蓮司。夫の遺影を前に化粧をするスエ。花の降る中あの世の穴へスエは消える。スエと捨吉のありえたはずの幸せな家庭が映る。近代的な町並み。死んだ人はみな生き返っている。全員集まって記念撮影。完。寺山が最後に夢を託した魔術的リアリズムの世界。ガルシア=マルケスの「百年の孤独」という小説の翻案である。のちの沖縄のシュールな映画「ウンタマギルー」につながる作品。寺山的世界とガルシア=マルケス的世界が見事に一体化している。今見ると傑作。

人間は一生かけて完全な死体になると言って世を去る

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