荒川三歩

東京下町を自転車で散策しています。

本郷館の再生

2016年08月02日 | 散文
2012年の夏から翌年早春の話です。

木造3階建て共同住宅の本郷館が解体されて約1年が経過した頃、跡地に新築工事の看板が立ちました。

何かが建てられるらしい・・・。

基礎工事が始まりました。


共同住宅のようです。


急ピッチで工事が進んで行きます。
随分放ったらかっしだったクセに、日本のゼネコンは動き出したら早い。


何となく、旧本郷館の玄関と似ていると思います。


全体像が見えました。
3階建てです。

旧本郷館を意識した設計でしょうか?

以前のように坂の下から見上げてみます。


言問い通り側からも見上げてみます。


完成した2月中旬の姿です。


そして、玄関脇の塀に懐かしい名前が再現されました。
「本郷館」の復活です。
静かに入居者を待っています。
旧本郷館のように、これから100年、色々な人生を見ていくのでしょう。

でも、私はもうここに来ることはないと思います。

旧本郷館を忍びながら・・・。

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本郷館の消滅

2016年08月02日 | 散文
2011年の夏の話です。

文京区本郷に、明治38年に建てられた木造3階建てのアパートがありました。
多くの学生が暮らした建物で名前を「本郷館」といいます。

長い間街に風情を提供してきた本郷の顔役で、山の手ウォッチャーにも有名な建物です。何度も何度も取り壊しの話が起こり、何度も何度も反対運動が起こって、その都度話が沙汰止みになって108年間も生き延びてきました。

取り壊しの噂を耳にしながら、本郷に行く度に何度も何度も訪れて、坂の上下からその佇まいを味わってきました。
その本郷館がとうとう本当に取り壊される事に決まった、と新聞記事で知りました。

お別れに行かなければ・・・。

工事用のフェンスが張られ始めました。

これで見納めです。

私と同じように、お別れに訪れた人たちが居ました。


次の週、建物全体がシートに包まれていました。


言問通りから見た工事前の本郷館の裏側です。


いよいよ解体工事が始まりました。
私の横で、本郷館に住んだことのある人たちでしょうか、女性を含めた数人の集団が目を真っ赤に泣き腫らして「メリメリ!」と取り壊していくパワーショベルの動きを見ていました。
彼らの気持ちが心に沁みました。


次の日も見に行きました。
解体が進み、玄関部分だけが残っていました。

ポッカリ開けた空が悲しい・・・。

翌週、本郷館が消失していました。

そして街の姿が変わりました。

次の日、跡地が整地されていました。

青い空と白い雲が眩しくて悲しい・・・。

その翌週、すっかり工事が終わり、フェンスが張り巡らされていました。

心の中が喪失感でいっぱいです。

隣のアパートの2階に上がって覗いてみました。
ブルーシート上に整然と並んだ土嚢の姿が悲しいです。


もう杉山先生のペン画で偲ぶだけです。

昔、本郷館という素敵な木造3階建てのアパートがありました・・・。

コメント (2)
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