これが何のスパゲッティかわかる人はまず居まい。初めて食べたがこれが旨いんだ。この店Dは雛には稀な廉価で特別旨いイタリアンで、三年前開店数か月で見つけ贔屓にして来たのだが、この一年は三回ほどしか訪れていない。と言うのは旨くて廉価が知れ渡り女性客が引きも切らず、いつ行っても五人も六人は待っており、女房が拒否反応を起こすからだ。
今回はお目当ての店、ここは三十席あるからまず空き席がある、が臨時休業だったので、あそこも近いということでDの行列に並ぶことにした。幸い先に待っていた人は三名で待合席に座れた。すぐ二人来たが席がなく立って待つことになった。ここはフロア一人でサーブしやすいようにコの字型にテーブルを並べ十二席しかない。シェフは一人だが手際が良く料理はさほど待たせない。横並びでおしゃべりではなく食事用の配置になっているのだが、待たされる半分は女のおしゃべりのせいなのだ。デザートも済んでコーヒー紅茶も飲み終われば、さっさと席を立つのが礼儀というか常識と思うのだが、アラサーだかアラフォーだか知らないが、おしゃべりを続けて中々席を立たない連中が居る。女の神経はどういう構造になっているのだろう。座って待っている人たちと三メートルも離れていないので、待っている人が目に入らないわけがないと思うのだが。なんだか女性をあげつらってしまったが、中に黒一点昼間からワインを飲んで出来上がった爺さんが隣の女性客に話しかけてうるさい。女は三人子供を産まなくちゃあだめだ・・・。話しかけられた女性は大人で適当にあしらっていたが、東京大阪当たりなら何この爺さんという目線が突き刺さっていただろう。
まあこうして、まるで芝居のように先客を見るともなく聞くともなく眺めていれば二十分なんてすぐ過ぎてしまい。季節メニューにありつくことができた。