駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

言葉遣いは難しい

2019年09月19日 | 診療

                

 

 医業界では前医を批判しないのが鉄則だ。それは後医の方が診断上有利だからで、妥当な了解事項だと思うが、首を傾げることもある。排尿不快頻尿で昨晩急病センターを受診したおばさんが薬がもっと欲しいとやってきた。クラビット500mgが投与され、既に尿所見は改善している。

 あなたの膀胱炎は癖になっているから長めに薬を貰うように言われたとのこと。癖になっているって何を根拠にと不思議に思い、「あなた、膀胱炎は何回目ですか?。」

 「今までそうねえ、三回目です」。「五十歳で三回目、それは普通ではないでしょうか」と言うと、医者によって言うことが違うのねと言われてしまった。救急医に癖ってどういう意味と聞きたくなる。長期投与すれば癖にならない理由も教えてほしい。素人が飛びつきやすい表現の濫用ではないかと思った。

 一週間前に38Cの発熱があり翌日解熱したが咳痰が続き、一昨日から再度発熱し38.5C昨夜は39.5Cで急病センターを受診した32歳の女性。採血結果で大したことはない、風邪をこじらせましたねと解熱剤カロナールを投与されたが、まだ39Cの熱が下がらないと受診した。経過から、これはと思い聴診すると右背部で微かなラ音が聞こえる。写真で確認するとやはり下肺野に浸潤影があり肺炎だった。忙しい救急外来じっくり聴診する暇はないかもしれんが、風邪をこじらせたという表現はどうかなと思った。高熱が続くのをこじらせたとは言わないと思う。こじらせて肺炎になったとは言えるが。

 素人に分かり易いようにという言葉使いに終始すると、時に医師自身まで素人判断に陥いる危険があると申し上げたい。

コメント
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