芦屋教室 「ブログde秀歌鑑賞」 №
2011年10月(松村正直選)
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こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり
山崎方代(やまざき・ほうだい) 『右左口』(うばぐち)
湯呑茶碗を両手に包み込むようにして、その温かさを感じている作者の姿が目に浮かびます。
「しどろもどろ」という言葉は、ふつう誰かに問い詰めらたりして受け答えに窮する時などに
使いますが、この歌はむしろ作者ひとりの場面のように思います。
湯呑茶碗の温かさが不意に心にじんと来たのでしょう。
孤独感とそれゆえの人なつっこさを感じさせる歌です。
生涯定職につくことなく暮らし、放浪の歌人とも呼ばれた山崎方代(1914~1985)の作品です。
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旗は紅き小林(おばやし)なして移れども帰りてをゆかな病むものの辺(へ)に
岡井 隆(おかい・たかし) 『土地よ、痛みを負え』(とちよ、いたみをおえ)
六〇年安保闘争の頃の歌です。
赤い旗を掲げて労働組合や政治団体などのデモが続いているのを横目に、
作者は一人の医師として患者たちのもとへ戻って行こうと詠んでいます。
「帰りてを」の「を」は文法的には強調を意味する間投助詞。
集団とは距離を置いて個人の信念に従って行動しようとする決意が述べられていて、
時代を越えて印象に残る歌となっています。
前衛短歌運動を経て現在に至るまで、常に時代の最先端で活躍を続けている岡井隆(1928~)の一首です。
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フィラメントのごとく後肢を光らせてあしなが蜂がひぐれに飛べり
吉川宏志(よしかわ・ひろし) 『青蝉』(あおせみ)
日暮れ時に足長蜂が飛んでいる様子を詠んだ歌です。
初句から二句目にかけての「フィラメントのごとく」という比喩がとても新鮮です。
電球に使われているフィラメントの震えるような細さが似ているだけでなく、
夕日を受けてかすかに光っているところまで共通しています。
巧みな言葉の扱いによって、繊細な感覚が十二分に表現された作品と言えるでしょう。
写実的な短歌に新たな風を吹き込んだ吉川宏志(1969~)の第一歌集に収められている歌です。
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松村正直先生の「短歌」講座はこちら!
【芦屋教室】
■「短歌実作」講座(第3金曜、A午前/B午後)
奇数月のご担当は池本一郎先生、
偶数月のご担当は松村正直先生
随時、お入りいただけます。
★「私の好きな歌-家族と読み解く河野裕子」
2011年11月30日(水)14時~16時
講師:永田淳、永田紅、松村正直(司会)
吉川宏志先生の「短歌」講座はこちら!
【京都教室】
■「短歌A/B」講座(第1土曜、A/B)
奇数月のご担当は吉川宏志先生、
偶数月のご担当は永田淳先生
【梅田教室】
■「吉川宏志短歌教室」(第1土曜)
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こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり
山崎方代(やまざき・ほうだい) 『右左口』(うばぐち)
湯呑茶碗を両手に包み込むようにして、その温かさを感じている作者の姿が目に浮かびます。
「しどろもどろ」という言葉は、ふつう誰かに問い詰めらたりして受け答えに窮する時などに
使いますが、この歌はむしろ作者ひとりの場面のように思います。
湯呑茶碗の温かさが不意に心にじんと来たのでしょう。
孤独感とそれゆえの人なつっこさを感じさせる歌です。
生涯定職につくことなく暮らし、放浪の歌人とも呼ばれた山崎方代(1914~1985)の作品です。
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旗は紅き小林(おばやし)なして移れども帰りてをゆかな病むものの辺(へ)に
岡井 隆(おかい・たかし) 『土地よ、痛みを負え』(とちよ、いたみをおえ)
六〇年安保闘争の頃の歌です。
赤い旗を掲げて労働組合や政治団体などのデモが続いているのを横目に、
作者は一人の医師として患者たちのもとへ戻って行こうと詠んでいます。
「帰りてを」の「を」は文法的には強調を意味する間投助詞。
集団とは距離を置いて個人の信念に従って行動しようとする決意が述べられていて、
時代を越えて印象に残る歌となっています。
前衛短歌運動を経て現在に至るまで、常に時代の最先端で活躍を続けている岡井隆(1928~)の一首です。
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フィラメントのごとく後肢を光らせてあしなが蜂がひぐれに飛べり
吉川宏志(よしかわ・ひろし) 『青蝉』(あおせみ)
日暮れ時に足長蜂が飛んでいる様子を詠んだ歌です。
初句から二句目にかけての「フィラメントのごとく」という比喩がとても新鮮です。
電球に使われているフィラメントの震えるような細さが似ているだけでなく、
夕日を受けてかすかに光っているところまで共通しています。
巧みな言葉の扱いによって、繊細な感覚が十二分に表現された作品と言えるでしょう。
写実的な短歌に新たな風を吹き込んだ吉川宏志(1969~)の第一歌集に収められている歌です。
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【芦屋教室】
■「短歌実作」講座(第3金曜、A午前/B午後)
奇数月のご担当は池本一郎先生、
偶数月のご担当は松村正直先生
随時、お入りいただけます。
★「私の好きな歌-家族と読み解く河野裕子」
2011年11月30日(水)14時~16時
講師:永田淳、永田紅、松村正直(司会)
吉川宏志先生の「短歌」講座はこちら!
【京都教室】
■「短歌A/B」講座(第1土曜、A/B)
奇数月のご担当は吉川宏志先生、
偶数月のご担当は永田淳先生
【梅田教室】
■「吉川宏志短歌教室」(第1土曜)